【一輪劇場】面接(三枚)
登場人物
佐鯉馨一瀧 雑貨屋すずらんの店長
博多千 高校生
○雑貨屋裏の空き部屋
椅子が二つ、机を挟んで向かい合っている。
右側に店長、左側に高校生。
店長の手元には湯呑み。湯気が立っている。
佐鯉 雑貨屋すずらん店長の佐鯉です
千 (緊張気味に)はい。よろしくお願いします
間。
千 え?
佐鯉 雑貨屋すずらんの……
千 そ、そうじゃなくて
間。
千 え? 志望動機とか、話したほうがいいで、しょうか
佐鯉 ああ。あるの?
千 えーっと、面接ってそういう感じですよね
佐鯉 そうなんだ
千 はい……多分。……面接受けたことないんですか
佐鯉 高校生の時、面接会場に行ったら、顔パスで受かった
千 なぜです!
佐鯉 ボディガードの面接
千 なるほど。確かに、体格が……何かされてたんですか
佐鯉 野球を一五年ほど。怪我する前まで
千 あー、そーなんですね……。って、なんで私が質問をしてるんだろう
佐鯉 志望理由は?
千 あ、そうですね! ちゃんと考えてきたんですよ
佐鯉 考えて?
千 ああ、そうじゃなくて、えーっと
佐鯉 何?
千 その、だから、あーーオンシャのぉ、そのぉ、ケイエイぇ
しばしの間。
千 友達こなさそうなんで! こんな古臭い店!!
間。
千 あ
間。
千 これは違うんです趣深いということで最近の若者は
佐鯉 確かに
千 受け入れられた!
佐鯉 俺も知り合いはあまり来ないで欲しい
千 そうなんだ!
店長、手元のメモに書きながら、
佐鯉 バイト先で友達に会いたくないから
千 書かなくていいですよ!
佐鯉 そっか。どうして友達に会いたくないの?
千 いやー、そのー、店長さんはどうしてなんですか
佐鯉 うちの制服、あんまり俺に似合ってないからな……
千 あ、制服が可愛いからって、のも、あります!
店長、手元のメモに書きながら、
佐鯉 制服が可愛いから
千 書かなくていいです!
佐鯉 そっか。……それじゃあ、シフト、どうしようかな
千 え?
佐鯉 だって、面接希望、滅多に来ないし
千 ……悲しい
佐鯉 うん
千 あ、よろしくお願いします!
佐鯉 よろしく
〈了〉
* * *
最近気づいたのですが、ソフトウェアトーク劇場って声劇とは違いますね。合成音声は、自然な読みをすることはできても、やはり肉声の表現力には劣る部分があります。そうなると、自然と話し言葉よりも書き言葉的にセリフがならざるを得ないところがある。ひょっとすると、ソフトウェアトーク劇場はラノベの系譜なのかもしれません。