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【シナリオ】めっちゃ夢叶う短冊の話。

『八月の七夕』

なずな…中学3年生。ミュージカルスタジオに通っている。純粋で天然。黒髪ポニーテールがトレードマーク。
香織瑠…中学3年生。ミュージカルスタジオに通っている。黒髪ショートで、空気を読み会話をするのが得意な美人。
美和…中学3年生。ミュージカルスタジオに通っている。話が上手な盛り上げ役。髪型は丸みを帯びたボブ。

ーー

人気の無い寂れたショッピングセンター内。
3人の前には、短冊の飾られた大きな笹の葉が飾ってある。

美和「七夕っすね。」
香織瑠「…ん?今日何日だっけ。」 
なずな「7月9日だね。」
香織瑠「七夕って何日だっけ。」
美和「7日っすね。」
香織瑠「…過ぎてるな。」
なずな「過ぎてるね。」
美和「過ぎてるっすねー。」
香織瑠「なのに何故笹が。しかも短冊つき。」
美和「…‪”‬また‪”‬しまい忘れっすね。」
香織瑠「また?」
なずな「前にもあったの?」
美和「割と。このショッピングセンターの笹は毎年七夕すぎても置いてあるっすね。」
なずな「毎年!?」
美和「しかも1ヶ月くらい。」
香織瑠「長いね。しまい忘れで済むレベルじゃなくない?」
美和「そうなんす。それが、いつの間にか名物になっちゃったんっすよ。」
なずな「名物?どういうこと?」
香織瑠「普通、七夕の夜に笹を燃やして、浄化させて、夢を叶えるんじゃないの?」
美和「そうっす。それが、普通っす。でもここは違うっす。」
なずな「1ヶ月後ってことは、8月7日。」
香織瑠「その日に燃やすってこと?」
美和「おそらくそうっすね。8月8日にはないので。」
香織瑠「…あ、でも聞いたことある。一部の地域では8月に七夕やる、みたいな。」
なずな「そうなの?」
美和「まぁ、そうっすね。8月に「七夕祭り」というお祭りを開催する地域はかなりあるっす。」
香織瑠「あ、じゃあそういうことだね。」
なずな「解決〜☆」
美和「でも、よく考えてみて欲しいっす。」
なず・香織「「ん?」」
美和「ここの駅の改札にあった笹、そして近くにあったコンビニの笹は全部昨日には無くなってたっす。駅前の七夕飾りも全部。それなのに、このショッピングセンターの笹だけ1ヶ月放置、おかしいと思わないっすか?」

なずな「(少し震えながら)た、多分何年か前に片付け忘れちゃってから、それが癖になっちゃってるんじゃないかな?」
美和「きっかけは、そうだったかもしれないっすね…。」
香織瑠「…美和、もしかしてそれ、怖い話?」
美和「えーー?どうでしょうーーー(ニヤリ)」
なずな「やだ!!!帰ろ香織瑠!!私こういうの無理かも!!!なんかゾワゾワしてきた!!!霊感あるんだよねわたし!!!なんかわかんないけど、ゾワゾワする!!!」
香織瑠「多分今冷房の温度下がったんだろ。」
なずな「そんなわけないよーーー!!」
美和「まぁまぁ、落ち着いてくださいっす、そんな悪い話じゃないっす。」
なずな「そうなの、、?」
美和「はいっす。確かに、1ヶ月遅れちゃった最初のきっかけは、さっきなずなが言ってくれたものが正解っす。」
香織瑠「片付け忘れちゃったってやつ?」
美和「そうっす。従業員がそれに気づいたのは次の日だったんっすけど、店長が「だったら1ヶ月後まで飾っておいて、そういう仕様だったってことにしておけばいいんじゃね?」って提案したそうっす。」
なずな「なるほど、だから8月7日に。」
香織瑠「それ、何年前の話?」
美和「何年も前の話っす。ウチたちが産まれるうんと前、ウチのお母さんが子供の頃って言ってたっす。」
なずな「そんなに前!?」
香織瑠「じゃあ一ヶ月後に片付けるのが伝統化しちゃったって事?」
美和「そうなんっす。元々はその年だけ1ヶ月遅れで片付けようってなってたんっすけど、色々あって。」
なずな「色々って…?」
美和「ここだけの話…」

美和「めっっちゃ、叶うんっすよ。ここで短冊書くと。」

なずな「え?」
香織「ほんとに?」
美和「はい。驚くほどに。魔法かってくらい。事実ウチはここで何個も夢を叶えたっす。」
なずな「すごい!!!例えば例えば??」
美和「欲しかった文房具手に入れたり、テストで100点も取れたっす。」
なずな「ほんとに!?」
美和「はいっす。」
なずな「…(少し考えて)え、も、もしかして。」
美和「なずな、あれが思い浮かんでるっすね、ウチがオーディションで主役とったこと…。」
なずな「ぎくり。」
美和「それもここの短冊のおかげっす。」
なずな「え!?」
香織瑠「いや、それも、さっきのテストもだけど、それは美和が頑張っただけだって。」
美和「もちろん、努力しなかったわけじゃないっす。でも、ウチの力だけじゃ成し遂げられなかったことっすね。『髪の毛伸ばして』って書いた日には、1週間でボブからおしりまで伸びたっす。」
なずな「1週間で!?す、すごい!!え、私も書こうかな!」
美和「うん、みんなで書くっす!」
なずな「わーい!何にしようかな〜。欲しいものもやりたいこともいっぱいあるな〜」 
香織瑠「ちょっとなずな」
なずな「香織瑠も書こうよー!んーそうだなー。…あ、あれにしよ!…(書く)よし。見て!」
香織瑠「『香織瑠みたいな素敵な女優になれますように』…私!?。」 
なずな「うん!私香織瑠の演技大好きだから。香織瑠みたいになれたらいいなーって!」
香織瑠「なんか、照れるな…。」
なずな「えへへー。」
美和「…あ、でも気をつけた方がいいっすよ。」
なずな「なにが?」
美和「本当に効力があるので、書く言葉には気をつけた方がいいっす。」

美和「何人か人、死んでるので。」

なずな「…へ?」
香織瑠「…。」
なずな「…えっ、」
美和「(小声)これは、内緒っすよ。」
なずな「どういう、こと?」
美和「この短冊と笹は、この願いごとを叶えるためには手段を選ばないっす。誰かを犠牲にすることもあるっす。だから。」
なずな「だ、だから…」
美和「なずなの願いを叶えるために、香織瑠が死ぬ可能性があるかもしれないってことっすね。」
なずな「…(顔が青ざめる)」
香織瑠「…?」
美和「だってそうでしょ?『香織瑠みたいな素敵な女優』になるってことは、なずなは香織瑠になりたいってこと。香織瑠はこの世に2人も存在しないっすから。」
なずな「えっ…あっ……ど、どうしよう。わ、私そんなつもりじゃなくって。」
美和「神は正直っすから。書いたことが真実だと思いますから。」
なずな「ど、どうしよう、、あ、これ書き直せば!」
美和「無理っすよ、消しても見えるっす。相手は神っす。」
なずな「短冊破いたらいける!?」
美和「言ったでしょ、短冊と笹が、手段を選ばないって。だから無理っす。一度書いたものは取り消せないっす。」
なずな「…(膝から崩れ落ちる)…どうしよう…どしよう香織瑠…。」
香織瑠「なずな。」
なずな「ごめん…ごめんなさい…。」

香織瑠「…(大きなため息)。美和。」
美和「はい?」
香織瑠「嘘だろ?」
美和「嘘っす!」
なずな「…え?」
美和「香織瑠よく分かったっすねー。」
香織瑠「もー、美和はほんとに純粋な人騙すの好きだよねー。」
美和「いやぁ、たまらんっす!」
香織瑠「なずな、嘘だって。死なないって、そんな事ないって。」
なずな「えっ、あっ、え…!?嘘??」
美和「ドッキリ大成功ー☆」
なずな「…うぅ、ううう…(涙が溢れてきて)美和ちゃん!!!!!(美和の肩を勢いよく掴む)」
美和「痛っ!ご、ごめんっすなずな。」
なずな「香織瑠も気づいてたの??!」
香織瑠「まぁ。」
なずな「じゃあ言ってよ!!!」
香織瑠「いや、だって、あまりにもなずな信じてるから。」
美和「ごめんっすー。面白すぎて」
なずな「え、どこからが嘘だったの!!」
美和「え、そんなの全部っすよ。」
なずな「全部?」
美和「はい。毎年8月7日に笹を燃やしてるところから。あ、違うか。別に毎年かたすの遅れてないっす。今年だけっす。」
香織瑠「あ、そっからだったんだ。」
なずな「え、じゃあなんで今年遅れてるんだろう。」
美和「ま、ほんとに忘れてるんじゃないっすか?もしかしたら今年から8月7日に燃やすことになったりしてー!」
なずな「美和ちゃんが預言者になるってこと?!」
美和「かもしれないっすね。ほら(なずなに短冊を渡す)大丈夫だから飾るっす。」
なずな「(短冊を受け取る)…え、ほんとに誰かなくなったりしないよね?」
美和「うちの嘘やから。これは勝手にも叶えてくれないし。なずなが努力すれば叶うことっす。」
なずな「そうだよね…あーもうほんと、怖くなっちゃった。七夕でこんな思いをしたのは初めてだよ。」

なずな、笹に短冊をつける。

なずな「(手を2回叩いて拝む)私、努力するので、香織瑠みたいな演技がとっても上手な
、素敵な女優にならせてください!」
美和「叶うといいっすね。」
なずな「うん!!」
美和「さ、暗くならないうちに帰るっす。」
なずな「はーい。」

美和、なずな、ショッピングモールを後にする。

美和「(なずなを見て)香織瑠、今日は家寄ってくっすか?」
なずな「…?」
美和「ん?」
なずな「え、私香織瑠じゃないよ?(笑)」
美和「はぁ?何言ってるっすか。」
なずな「何って、私はなずなだよ、香織瑠は後ろに…」

なずな、美和、後ろを振り向くが香織瑠の姿はない。

なずな「…え?」
美和「何言ってるっすか香織瑠。てか、なずなって誰っすか。」
なずな「え、いや、…美和ちゃん、鏡持ってる?」
美和「ん?持ってるっすけど…(カバンを漁り鏡を取りだしなずなに渡す)はい。」

なずなは美和から鏡を受け取り、恐る恐る自分の顔を見た。

…何で、香織瑠がうつってるの?









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