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編集部への怒りと、ずっと口を噤んできた自分への怒り。

先ず、NTTソルマーレ編集部で過去に連載していた、「まじめメガネくんの本性は野獣」という作品について。

この作品は何の告知も説明もないまま、
2019年1月、既に発売が決まっていた単行本2巻が発売中止となり、
連載は無期限休止となりました。

その後2021年から出版社をNTTソルマーレからぶんか社に移籍したのは、担当編集者とのトラブルが原因です。

NTTソルマーレ編集部は全面的に非を認め、契約・配信終了となりました。

トラブルと書きましたがキッカケは、担当編集者の一方的なミスです。
「業務遂行において必要不可欠な情報を作家に伝えなかった」。

具体的には、単行本2巻のカバーイラストの〆切を私に伝え漏れた状態で、
〆切の3日前に平然と「カバーは出来てますか?」と、私に連絡をしてきたことがキッカケでした。

ただ、ミスは誰だって、どんなに気をつけていても起こるもの。

その後の対応においても信頼を回復出来なかったため、このような結果になりました。

当時単行本の発売及び連載を楽しみにして下さっていた読者の皆様には、
長らく何の事情説明もせず、誠に申し訳ございませんでした。

私が未だにNTTソルマーレ編集部に対してじわじわと怒りを感じるのは、

編集部の一方的なミスだったことを全面的に認め、
私のみならず、単行本の続刊発売や連載を楽しみにして下さっていた読者を結果的に裏切ってしまったというのに、
なぜ編集部はなんの説明も当時しなかったのか。未だにしていないのか。

という点です。

契約により作品名は私の口からは申し上げられませんが、これより以前、
同じ内容のトラブルが聖ゆうか名義の他の作品でも起こったことがあります。

聖ゆうかをデビュー当時から知っている読者様は、
どの作品のことが思い当たることと思います。

事の始まりと流れは、NTTソルマーレ編集部の時と同じです。

重大なミスを起こした担当編集者が、私の追求に応えられず、やりとりそのものが不可能になる。

その後は、編集長かそれ以上の役職の方、もしくは代理人の弁護士と私が進退を話し合う。

当時のことを思い出すと、私は未だにやるせない気持ちでいっぱいになります。

それでもまだ、まじメガは幸せな作品です。
続きを描くことも、こうして事情を語ることも出来ているのですから。

もう一つの作品に関しては、作者である私にも、もう手の出しようがありません。
当時の私は、著作権どころか正当な主張をする権利までも漫画家から奪う恐ろしい出版契約書がまかり通っているのがこの業界だということに、本当に無知でした。

また、更に過去に遡ると、スターツ出版でも同様(担当編集者の一方的なミスにより、著しく業務が困難な状態になる)のトラブルがありました。

その件については責任者の方から説明と謝罪があり、和解したのですが、その後。

電子書籍出版の契約書を結び、表紙となるカラーイラストを納品したにも関わらず、該当の電子書籍は配信されませんでした。

編集部そのものが解体となった事情もあるのでしょうが、その件について、スターツ出版からは現在まで何の連絡もありません。

もう一つ重ねて言うと、スターツ出版に送ったという読者様からのお手紙は、私の手元に届いたことがありません。
本当に申し訳ない、悲しい気持ちでいっぱいです。

私は、スターツ出版には送らないで下さいと、
スターツ出版から配信された作品の読者に言うしかありません。

こう何度も同じようなことを繰り返していると、
「もはや自分の方が漫画家として問題があるのか、自分の対応が悪いのか」と何度も疑いました。
ですが、どのケースもキッカケとなるミスをしたのは先方で、私は常に、
「どこでどのようにしてそのミスが起こってしまったのか、今後起こらないようにするにはどうすればいいのか、起こったことについてはどう対応するのか、責任の所在をハッキリさせて話し合いましょう」と、追求しているだけです。
それ以上のこともそれ以下のことも出来なかったどころか、
今同じことが起こっても、私はそうするしかないと思います。

どうして、相手(編集部)は全面的に非を認めているのに、私(漫画家)のダメージの方が甚大なんだろうか。

どうして私(漫画家)はたった一人で、疲弊して、読者にひたすら申し訳なくて、それでも作品を届けようと必死なのか。
商業で作品を発表することに何の意味があるのか。
出版社がこんなにもいい加減なのに、漫画家だけ必死になったってどうしようもないと、虚しい気持ちでいっぱいになりました。

でも、私は今日まで口を噤んできました。
当然ですが、出版業界は決して、そんないい加減な人達ばかりではないからです。
編集者という同じ立場の他社担当者様に良くして頂き、コンスタントに執筆活動が出来て、良識的な読者にも恵まれ。
私は、結局は幸せな漫画家だと、自分で思うからです。
だから、これくらいのことはわざわざ表立って言うべきではない。
そもそも、このような裏事情は読者には関係ない。
作品だけを純粋に楽しんで欲しいと思ってきました。

ですが私が口を閉ざすことで、
「斯様にいい加減なことをしていても許される」前例をこの業界で作るということは、結果的に読者にはもちろん、後進の漫画家にもよくない。
私はずっと、この業界のあらゆる暗黙の了解や、慣習を呪ってきました。
なのにふと気づくと、もう新人とは言えないキャリアを積んでいて、
いつの間にか呪わしい慣習を作っている立場になってしまっていたのです。

過去のことも勿論、過ぎたことだからと言って許すことはありませんが、
私は「編集部に感じて当然の不信感と怒りの感情を、漫画家として発信しない自分」にもずっと怒っていたということに、ここまでこの文章を書いて、初めて気がつきました。

これだけ一方的なミスを押し付けられているのに、黙って一人、頑張って描き続けてしまったから。
こんなおかしなことが、結果的に何度もまかり通ってしまっているのです。
ここに書いたことは、氷山の一角でしかありません。
書けなかったこともたくさんあります。

なんの影響力もないとしても、私は「看過してはいけない」という姿勢でいたいと思います。


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