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ブログ企画【繋】第68回「私の故郷(ふるさと)」
毎月1日に全国各地のメンバーがひとつのテーマで文章を書くブログ企画【繋】。
今回は、ありぱんださんからこちらのテーマをいただきました。
『4月のテーマ担当は私ということで…
今回のお題は「私の故郷(ふるさと)」でお願いします。
故郷の自慢、愛着、良いところ 悪いところ、自身の故郷への思い等々…
何でも良いので思うところを書いてください』
テーマ発案者:ありぱんださんより
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東京に生まれ、東京で育ったわたしの故郷は、東京にある。
何をあたりまえのことを言っているんだ、と思っただろうか。
でも、その「東京」にはビルもコンビニもない、電車も走っていない。
そのかわり、海と山と、満天の星空がある「東京」だ。
都心から南へ約180キロ。
伊豆諸島の真ん中あたりに浮かぶ小さな島。
わたしの故郷、東京都の「神津島(こうづしま)」だ。
ポスター:神津島村役場オフィシャルサイトより
透明度の高い美しい海と白い砂浜、飛び込みやシュノーケリングを楽しめる赤崎遊歩道、山頂からの眺めは新東京百景にも選ばれている天上山など、ここが「東京」であるということを忘れてしまうほどの大自然を満喫できる。
でも、今回のこの記事では、いわゆるガイドブック的な語り口で神津島を紹介することを目的としてはいない。
そういうPRは、上に載せた役場のサイトや、東京にある島々を紹介するサイトにおまかせ(丸投げともいう)して、ここからは至極個人的な「神津島」を書いていきたい。
私の故郷(ふるさと)というテーマだが、正確には、神津島は母の故郷(ふるさと)である。
けれど、わたしは生後2ヶ月で初めて飛行機に乗り神津島を訪れて以来、毎年お盆休みになると、母が生まれ育った実家に家族で帰省する。
神津島は、わたしにとっては第二の故郷(ふるさと)のような場所だ。
でも、そこでなにか特別なことをするわけでもない。
毎年親戚の叔父や叔母に「大きくなったね〜」と出迎えられ
日焼け止めを塗りたくっていつもの海岸で海水浴
母の実家の和菓子屋の手伝いをしながら出来立てのあんこをひとくち
肌触りのいいタオルケットに包まりながら昼寝して
島に住む母の姉ふたりと母の神津島の方言交じりの会話を聞き流しながらぬるいスイカをかじる
日が落ちたら蚊除けスプレーをシューして母の両親のお墓参り
夜は砂浜で父が張り切って買った特大パックの花火して
帰りに海岸の前のアイス屋でチョコミントのアイスを食べる
そして悩んだ挙句毎年同じようなお土産を買い込んで
少し日焼けした肌で東京へ帰る
でも、神津島のことを、ほんとうはこういう場所で多くを語りたくはないんだ。
なぜって、わたしにとって神津島は、この世界から一時的にわたしをかくまってくれるシェルターのような場所だからだ。
「今日から1週間、島に帰省するの。連絡とりづらくなっちゃうかもしれない、ごめんね」
で外部との電波を介したやりとりを最小限にできる。
外をふらふら出歩いても、そのへんでばったり学校の友だちに会ったりしない。
家族と親戚以外に、知ってる顔がほとんどいない。
こちらに何があろうと、神津島の夏は毎年変わらずに出迎えてくれる。
そんな神津島で過ごす夏に、わたしはこれまで何度救われてきただろう。
誰になのか何になのかわからないし、誰に何に追われているんだって感じかもしれないけれど、わたしはときどき、自分を見つけないでほしいときがある。
「旅に出ます。探さないでください」
とだけ書き残して、ぷつりと消息を絶ちたくなるような。
そのまま誰の記憶の中からも、スパッと消えてしまいたくなるような。
いっそのことわたしという人間が存在したことすら、なかったことにしてほしくなるような。
でも深刻に死を考えるとかではまったくないから、気が済んだらまた何事もなかったかのようにしれっと現世に戻ってくるからさ。
神津島は、そんな逃避願望を安全に解き放てる場所なのかもしれない。
もうひとつの「東京」をこころの拠りどころにしながら、わたしは夏を待ちわびている。
東京に生まれ、東京で育ったわたしの故郷は、東京にある。
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ブログ企画【繋】メンバー
ありぱんだの徒然日記←テーマ発案者
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