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「自分の未来に期待する」撮影体験をしてほしい──小池まゆみさんフォトセッションツアー2022春夏を終えて

「ツアーはね、とにかく楽しかった!」

8月某日。
はつらつとした笑顔で、そう言ったのはカメラマンの小池まゆみさん。
通称、「こいまゆ」さんだ。

こいまゆフォトセッションツアー2022を掲げて、1年間の撮影を「ツアー」と銘打ち、全国7都市での撮影会を行った。7月に春夏の部を無事終了し、今はすこしの休憩をしている最中だという。

そんな忙しい日々を送る中、ツアー前半戦や撮影に対する想いについてお話を伺った。

ツアーは楽しかった。
スタートするまでは、集客できるのか、体力が持つのか、天候が悪かったらどうするのか、いろんな不安がついて回ったが、蓋を開けてみるとそんな心配は吹き飛んだ。

不安が吹き飛ぶほど忙しく走り回っていたとも言えるし、なにより、不安がっても仕方ないことは不安にならなくてもいいと気付いたそうだ。

実際、大阪と仙台で悪天候のためにお二人のお客様を延期したが、なぜかタイミングよくふたりとも東京で同時に撮影できた。
(両人とも、たまたま提案した日に東京に来る予定があったのだそうだ)

逆に天気予報は雨なのに「この日は多分大丈夫な気がする」と自分の直感を信じていると本当に晴れて来たり。

ツアーそのものについても、「とにかく撮影を楽しもう!」なんて、なんて軽いテーマだろう。みんなみたいに格好付けられないって思っていたけれど、それすらも「まあいっか!」って思えるようになった。

半年間走り続けてきたからこそ、おかげさまのありがたさを実感したという。

「こんなふうに感謝の気持ちが自分の中から湧き出てくる事が、けっこう意外だったんだよね」

と笑うこいまゆさん。
もちろんいつも感謝の気持ちはある。

だが、それとはまた違うところで思うところがあるようだ。

そもそも、《能動的》なのが好き。
つまり、自分から積極的に動くのが好きだというこいまゆさん。

白馬の王子様なんか待っているぐらいなら自分で連れてこいと、お客さまにもたびたびハッパをかけている。

「だって、どれだけ背中を押されても、やりなよーって強要されても、それでも最初の一歩を蹴り出すのは、絶対『自分』でしょ?」

用意された道であろうと、自分が選んだ道なき道であろうと、自分自身がその一歩を踏み出すからこそ、結果はついてくる。

それが彼女の信念だ。

だから、「こいまゆさんのおかげです」と言われるのは嬉しいけれどそれは違うと、前職だったアロマ講師の仕事でもいつも生徒さんに伝えていたそうだ。

資格取得のためだけのマークシートを埋めるための講座はしたくない。
ご家庭や日常に、アロマの知識を活かして自分なりに活用してほしい。

もちろん資格取得に向けてサポートもする。
でも、サポートを受けられる環境でも、それを選ばない人もいる。

だから、教えたのは自分だし、サポートしたのも自分だけれど、資格試験に合格したり、家庭に活かせるようになったりした一番の理由は『あなた』が本気で頑張ったからだ。

こいまゆさん自身もいつもがむしゃらに頑張ってきた。
だから、「スタートしたのは自分」とどこかで必ず思っていた。

しかし、今回は彼女ひとりの力では動かせないような、不思議な縁が本当にたくさんあったのだという。

特に印象的だったお客さまがいる。

仕事も違う。年齢も違う。
住んでる地域も違う。

たまたま、共通の知り合いのセミナーに行き、講座を同期に受講しなければ。

同じ組でワークをしなければ。
そのあと休憩で雑談しなければ。
すれ違うだけで終わっていた。

しかも彼女は、大人になってひとりでプロに写真を撮られるなんて考えたこともなかったそうだ。
それでも「チャレンジしよう」と申し込んでくれた。

縁というのはある。
人のおかげで、繋がった人がいる。

「おかげさま。ありがたい」

その言葉がじわりと染みていった。

彼女には、さらに印象的なエピソードがある。

撮影が終わってデータを納品したあとのことだ。

「次に撮るときは、もっとメイクもいろいろやってみたい」

と感想をくれたのだ。

撮影することそのものがチャレンジで、それ以前にはカメラに向かう事がありえなかった。

もしかしたら、メイクや着飾ることは、人生のどこかで諦めていたことだったのかもしれない。

それが、次はもっとこうしたいと、またカメラに向かう想いを語ってくれた。

自分の未来に期待してくれた。
そのことに心が震えた。

こいまゆさんは、たぶん、諦めるのが嫌いな人なのだと思う。

諦めずに、最初の一歩を踏み出すのは自分だと、その一歩をチャレンジし続けている。

それはなぜだろうと問うてみると、彼女は少し逡巡してから自分の「諦めざるを得なかった」経験を語ってくれた。


「これからしばらく、車の運転は控えてください」

2015年3月。
春の盛りももうすぐというある日、彼女に異変が起きた。
当時働いていた職場で脳梗塞を起こしたのだ。

発症直後は、手のふるえや呂律がまわらなくなったことから、死ぬかもしれないという恐怖があった。

職場のスタッフによってすぐに救急車が呼ばれたが、幸いなことに軽症で済んだ。

救急車が到着したときには、めまいや呂律の異常は半ば引いていた。

異常が引けば、恐怖はちょっとしたアクシデントだったのかと安心に変わった。

「だから、当事者なのに一番へらへらしてたと思う。ちょっと調子悪くなったけど、検査したらすぐ帰れるだろうって」

ところが、そうはいかなかった。
検査をしてみると、たしかに当該箇所が小さかったため血流の詰まりは最小限だった。

しかし、血管は細くなっていていつまた再発するかは予断を許さない。そのまま入院を言い渡された。

それでもまだ現実味はなかった。
なにより、自分がいなくなったら仕事の穴を誰が補うのか。
そちらの方に意識が向いていた。

「仕事がある」
「もう治ってるから、帰りたい」

毎日の体調チェックのたびに看護師に言い続け、無理を通して通常2週間のところを10日で退院することにした。

ところが、退院前最後の検査を終えて、医師に言われた言葉に愕然とした。

「薬で抑えてもこれから暫くは再発の可能性がある。車の運転は控えてください」

車を運転してはいけない。
その事実はひどく堪えた。

彼女にとって、車は欠かせない存在だった。
毎日の通勤も、どこかに行くのにも、車に乗っていくのが当たり前。

それを禁止された。
つまり車を運転するのは危険な人物になってしまった。

「『普通』の人ではなくなってしまった…」

そうレッテルを張られたようで、はじめて脳に持病を持つことの現実に打ちのめされた。

退院前日の夜は泣き通した。

人生は思いがけないタイミングで、今まで当たり前だったことを諦めなくてはいけない時が来る。

車の運転のように、いつまた出来ることが縮まるかわからない。

その時に後悔しても遅い。
ならば、気になっているのにやらないでいたことを全部やろうと思った。

退院後、一番に彼女が購入したのは一眼レフカメラだった。

それが今や、彼女のライフワークになっている。
車の運転も通院を続けるうちに解禁された。

諦める人生は辛い。
それを身をもって知っている。

「自分に希望を持ってほしい。自分の未来に期待してほしい」

その想いが《能動的が好き》というひとことに詰め込まれているのだ。


撮影ツアーのテーマは“   ”

《能動的が好き》は、彼女のツアーのタイトルにも象徴的に表れている。
「こいまゆフォトセッションツアー2022 “   ”」

“  ”の中を、あえて空白にした。

こちらから指定するテーマに合わせた写真ではなくて、自分の撮影テーマは自由に決めてほしいという想いからだ。

「撮影時間のいちばん初めに聞くので、どんな撮影にしたいか教えてくださいね」

そう伝えている。

周りからは「それってこいまゆさんが大変なのでは…?」と心配の声が上がったが、ツアーが始まってみると「わぁ、こんなの来ちゃったか!!」というような、ぎょっとする要望やテーマを出してきた人はいなかったそうだ。

ただ、好みとして「撮影を楽しんでほしい」という願いがある。

だから、何人かの人に、

「最初は仕事で使える写真をお願いしようと思っていたけど、ただただ今の自分を撮ってもらう方がいい気がした」

と、素直な今の自分を撮りたいと思ったと伝えられたのは、自分の想いが伝わっているようでうれしかった。

それ以外にも、

「いつもならこんな服着ないんですが…」
「ジャンプしてるところを撮りたい」
「子どものようにはしゃいでみたい」

はたまた、「あの時のこいまゆさんみたいなポーズで撮られてみたい」なんていう要望もあった。

いつもの選択と少しだけ違う。
そんな自分を写真に残そうとしてくれる人が多かった。

もちろん全部大歓迎だ。

必要ならばポージングのレクチャーもするし、どう見えたらテーマに近づくかも、撮影を通して一緒に考える。

せっかくならば、やりたいと思っていることを実現して欲しい。

そして、その「やりたい」は、伝えてくれないと分からない。

どうせ言っても無駄だと思わずに、どんどん“   ”の中を埋めていってほしい。


撮影は、「ポテンシャルを知るツール」

カメラマンによる写真撮影というものを、あえてこいまゆ流に定義するとすれば、『ポテンシャルを知るツールのうちの一つ』だ。

自分を知るツールは心理学やコーチング、占いなどいろいろあるが、撮影もそのうちの一つだという。

その人が持っているものを写せる。
しかし、その人が《持っていない》ものはどうやっても写せない。

だから、写真に切り取られた姿は、どれだけ意外だとしても、その人の中にもともとあるものなのだ。

大人になって写真をはじめて撮られたとき、カメラマンから「一旦『かわいい』に振り切ればいい」と言われた。

そこから撮影を受け続けて数年。
色んな自分を切り取られてきた。

ただ、一つだけ
《自分にはない。欲しいけど求めてはいけない》
と半ばあきらめていた要素がある。

低身長で目が大きい。
小動物系といわれやすい。

だから『セクシー』や『女性の色気』というものは、自分には縁遠いものだった。

しかし、昨年撮られた写真のなかには、セクシーな姿の自分がいた。

そこで気付いたのだ。

「人生のどこかで失くしたものを取り戻す」という言葉があるが、そうではないのだと。

すべては自分の中にちゃんとある。
失くしてもいないし、誰かに奪われたわけでもない。
もともとあって、今も存在している。

ただ、隠れているだけなのだ。

そのことを確信したからこそ、

「私、かっこいい要素がなくて…」

そういうお客様がいると、

「いやいや!あるから!」

と思わず突っ込みを入れてしまう。

かわいげも、色っぽさも、かっこよさも、子どもっぽさも、みんな持っている。

使わないでいたから隠れているだけなのだ。

撮ったあとにモニターで写真を見せて、

「まるで私じゃないみたい」

と言われると、やっぱり笑って突っ込む。

「あなた以外の誰を撮ったと思ってるの」

勝手になかったことにしているだけで、諦めるのはもったいない。

春夏ツアーでのご感想には、

「こんな自分もいいよねと、自分にOKが出た」
「次はもっとこうなりたい」
「やりたいと思ってたことをやろうと決めた」

そんな熱い想いをいただくことが多かった。

撮影の最初に「彼氏に愛される自分になりたい」と相談してくれた女性がいる。

彼との関係性や悩みを一通り語ってくれた彼女に、こいまゆさんは「それなら、振りでもいいからカメラの前で『彼氏に愛される自分』を全力でやってみましょうよ!」と提案し、撮影に臨んだという。

その彼女からの感想には、

納品した写真に勇気をもらって、何度も写真を見返した。
今までは受け身で、行きたい場所に彼を誘うなんてできなかったけれど、こいまゆさんに撮られた「愛されている」自分の姿に背中を押され、勇気を出して誘ってみるとデートができたと、喜びの言葉が書かれていた。

人はつい「きっとこうなるに違いない」と自分で望んだ未来をなかったことにしてしまう。

しかしなかったことにするのを止めてみると、案外、未来は自分で変えていける。

自分の望んでいた姿を写真に収めることで、自分のポテンシャルに気付ける。

そして、自分の未来に期待して、自分の未来をいい方に変えていける。
それが、撮影であり、フォトセッションの良いところだ。


フォトセッションツアー2022秋冬にむけて

こいまゆフォトセッションツアー2022。
まもなく後半の秋冬撮影が始まる。

冬になると、寒さや景色の関係で撮影は少し難しくなる。
だから、春夏に比べると予定日数は少なめで、特に地方開催の枠は春よりもかなり限定されてしまう。

気になる人は事前に問い合わせを…とSNSで伝えたら、既に「大阪にはいつ来るの?」など、春に撮られてくれた人たちや、地方からのラブレターが舞い込んでいるそうだ。

こいまゆさんの撮影は、撮影が初めての人や、二回目という人が多い。

だからこそ、楽しんでほしいという。

「最初の印象ってすごく大事じゃない?美味しい!楽しい!って思えないと、次も同じ体験をしたいと思わない」

小さい頃に食べたウニがまさにそうだったんだけどさ、とコロコロと笑う。

小樽で食べた北海道の新鮮なウニに、いたく感動したらしい。
幼少期に地元で食べたウニの薬臭さに辟易して、食わず嫌いになったことを後悔したそうだ。

だからこそ、撮られるっていいな。
撮られ続けるっていいな。
そう思ってほしい。

「撮られるって楽しいよ!」と満面の笑みで彼女が伝え続けているのは、撮られ続けることで、いろんな自分がもともとあるのだと分かったように、自分は自分のままでいいんだと思えたように。

撮られ続ける体験を通して、あなたはあなたでいいと気づいてほしいという願いがある。

はじめての人こそ、撮られることを楽しんでもらいたい。


おわりに

先日、ある先生から開運について話を聞いたそうだ。

曰く、開運ポイントというのは自分が怖いと思うところにしかないのだという。

自分が持っていても、自覚せずに使わないでいる才能のような、そういうポイントを人は怖いと思うらしい。

自分のポテンシャルを知るということは、自分の持っている要素を全部知るということだ。

それが分かって、それを自在に全部使うことができたら、開運しないはずがないのでは。

もし天から与えられたお役目があるのだとすれば、持っているものを全て使えばそれも果たせるのではないか。

最近はそう思っている。

脳梗塞を発症したとき、医師からは、

「50歳を過ぎると血管が弱くなる可能性がある」
「今は大丈夫だが、その時にはバルーンなどの拡張手術を考えた方がいいかもしれない」

と告げられた。

あれから7年。
この秋で、こいまゆさんはその50歳になる。
毎月検診に通っているが、経過は良好だ。

「今は好きなことをしているから、だから調子がいいのかもしれない」

だからこそ、自分の人生を諦めず、未来に期待したいと思っている人が進むきっかけになれたらと思っている。

たとえ今はできなくても、自分の未来に希望を持ちたいと思っているならきっとできるようになる。

自分の人生、自分で舵取りをしよう。
私たちにはそれが出来るんだ。

「写真は楽しい!」

その言葉の後ろに、応援旗を掲げて満面の笑みでエールを送るこいまゆさんの姿が見えるようだ。

だからこそ、彼女の撮影は、人生を変えるひとつのきっかけになっているのだろう。

文責・はたなかさやか



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