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入院前、最後の温泉

入院する1週間くらい前に、二人で温泉に行くことにしました。

その間にも彼はたくさんの「術前の検査」と「痛み」に耐えていたので、正直本当に行けるかわからないな…と思いつつも予約しました。(当時はMRIを受けるだけでも身体の角度で痛みが出る状態でした。)

当日、何事もなく行けることになって2時間ほどバスに乗って温泉宿に向かいました。

腫瘍が神経を圧迫するために起きる腕の「痺れ」と「痛み」がいつくるかわからない。

それでも、思い出のづくりのために彼は頑張ってくれたんだと思います。

感じた異変

泊まったのは持て余すほど広い特別室。

温泉に入ったり、食事したり、ゆっくり楽しい時間を過ごしました。

あ、今まで1回も撮ったことのないプリクラも撮ったっけ。

温泉の作務衣に着替えると、彼の首元には今まではなかった隆起物があって、

あぁ‥確実に腫瘍は大きくなっているんだなと実感しました。

泣いて過ごした夜

楽しい時間なのに、夜になると不安と悲しみが襲ってきました。

側から見たら普通のカップルに見えるだろうな。

一緒に温泉に来られるのが最後かもしれないな。

普通に結婚したかったな。

まだ20代なのに‥どうして病気になったのが彼だったの。

なんで自分たちがこんな経験しなくてはいけないの。

これからもお母さんに反対されながら付き合うのかな。

手術したらどうなっちゃうんだろう。

そんな思いが溢れてきました。

普段は弱音を吐かない彼も、本当は手術が不安なことを話してくれました。

本当は一番辛いのは彼なのに励ましてくれて、彼の服を涙でぐちゃぐちゃにして眠りにつきました。


この記事を書くために当時のLINEや写真を見返していますが、翌朝の目の腫れようはひどいものでした。

夫から帰宅後

東大王を一緒に見る時間が楽しい

とLINEがきていました。

当時は一緒にテレビを見るという何気ないことも失うかもしれなかったこと、一緒にいる少しの時間でも大切だったことを思い出しました。


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小池しましま
夫の片手生活が少し豊かになります。