2020 Women’s Collection - 制作 2 (植物とデニムの時間)
2020 Women’s Collection
Fashion Designer : Yuko Koike
Model : Ksenia , Hair & Makeup : Marisa Tipkanok , Photo : Yuko Koike
koike. 2020年新作コレクションです。闇夜の中でそびえ立つ、凛としたただずまいの樹木。その静かな時間を表現した、デニムのロングドレスをつくりました。
わたしは、和歌山県でうまれ育ちました。ふるさとの山々の夜空をいまでも思い出します。冬から春にかけての空には、視界に入らないぐらいの星たちが集まっています。
銀色の文字刺繍をドレスに施しました。銀の文字は、流れる星たちを思わせる花々の名前です。Fuchsia(フクシア)、Tree peony(牡丹)、Weeping cherry(しだれ桜)がドレスの曲線にあわせて瞬いています。
洋服の物語を考えるとき、童話がインスピレーションになるときがあります。霧がかった山の向こうから吹いてくるすこし水っぽい空気、草花や動物のにおいがまじり合う、ふるさとのような世界をイメージしています。
ドレス(ワンピース)、シューズ、全て koike.
眠ることをわすれて作業をつづけていると、明け方が深い眠りにつく時間になります。作業中に眺めていた、アートブックのような童話がはじまり、これは夢だと何となくわかりながら、享楽に気持ちをゆだねます。
深い森の童話の世界。見上げれば視界いっぱいに、鋭く空気を切るように星が流れています。
うっすら霧がかった空気と、深い闇が混じりあっています。夜がすすむにつれて、霧の白さの濃淡が美しく、その魅力にあらがえなくなります。
少し不気味なのは、影が潜んでいることがわかることです。彼女はその影を見ないよう、2mぐらいの後ろを気にしながら、ゆっくり森の向こうをさがします。
思わず目をつぶってしまう勢いのある風。彼女は反転しそうなスカートおさえながら、少し怖いけど、自由にすべりぬける風の流れを、全身で感じるとなんだか楽しくワクワクもします。
動物の気配も感じます。草花のすれあう音、風から伝わるにおいみたいななにかで、生き物がきっといるのだと思います。まだ姿は見えませんが。
風がはこんでくる水分で、もうすぐ雨が降るのかもしれません。山の天気と童話の世界は、一瞬で場面の色がきっと変わるのでしょう。
何か変わりそうな気がするけど、何も見当たらない、ただ広大な柔らかい草の上を歩いていきます。
彼女は、柔らかい風と流れる星、幻想的な霧のハーモニーの世界の主人公です。
流れ星は零れ落ちてスカートに曲線を描き、群青色に染まる世界と同じように、靴も色づきます。不安で下を向く彼女の瞳には足元の瞬きが映って、明るく照らしかえしてくれる花と星たちが彼女が一人ではないことを教えてくれます。
彼女の心はいつも自然とともにあって、世界とよりそいたいと願っています。
その洋服のシルエットは樹木のようにそびえ立ち、大きなラッフルの花が開きます。洋服が時間をつくり、凛としたたたずまいが宿り、彼女は開花します。