第6椀 信玄のほうとう風お味噌汁
初出:2015年1月23日
<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから
戦国武将と味噌汁の話その1
「信玄のほうとう風お味噌汁」
今回から、ワタクシの大好きな戦国武将と味噌汁の話を数回シリーズで書かせていただきます。
岐阜県飛騨地方の「朴葉味噌」という料理は、野菜やきのこなどと味噌を朴葉にのっけて、下から炙りながら食べるというものでして、調理器具も食器もいらない極めて実用的な野戦食だったそうです。ごはんをつぶして串に刺して味噌(醤油)だれをかけて焼く「五平餅」も実は野戦食だったりと、戦闘食がルーツの食べ物というのは意外に多いみたいです。
甲州名物「ほうとう」のルーツも、武田信玄の陣中食とみられています。具だくさんで消化がよいので、食べてすぐにでもパワーが出せる料理ですね。「ほうとう」は甲州味噌で作ると香りよく仕上がります。甲州(北関東)ではお米が豊富にとれなかったために、米こうじと麦こうじを混合して作るという、全国的にも珍しいお味噌です。
実は我が家(岐阜県恵那地方)では、信州味噌(米こうじ)圏に近いにもかかわらず、甲州味噌と同じように米こうじと麦こうじ(割合的には米4:麦6)を混ぜて作っています。昔から教えて貰ったとおりに作っているので疑問に思ったことがなかったのですが、お味噌のことを調べているうちに、これが珍しいものと最近知りました。東美濃の一部は一時的に信玄の所領だった時代もありまして、もしもその時の名残だったとしたら面白いですねぇ。
戦国時代には武将の間で「汁講(しるこう)」と言われる「お味噌汁パーティー」が流行したそうで、ゲストはご飯だけを弁当箱に詰めて集まり、ホストは鍋いっぱいのお味噌汁を用意するというもの。この汁講で人気だったのは、ほうとうのように色んな具がたくさん入ったお味噌汁で「集め汁」と呼ばれていたそうです。この汁講の場では「この味噌はおいしいから、ちょっとわけてくれ」なんて、味噌の地域交流があったそうです。
そんなわけで、今回は汁講をイメージして鍋仕立てにしてみました。材料はそのとき家にあるもので何でもいけます。逆に入れてはいけないものってあるのかな?と思うくらいです。今回は野菜だけで作っていますが、もちろん鶏肉や豚肉を加えるとより一層うまみが増しますよ。
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「信玄のほうとう風お味噌汁」
出汁:昆布、乾椎茸、酒
具材:カボチャ、キャベツ、カブ、マイタケ、ネギ、油揚げ、豆腐
薬味:七味とうがらし
味噌:手前味噌(米麦混合麹)
野菜の甘みがすごく出るので、味噌の種類によっては醤油か塩を加えて味を整えたほうがよい時もあります。ほうとうの場合は、シメではなくて最初から麺を入れておきますと、汁にとろみもついてあったまります。