【暴露】ある理由で会社辞めたら、3億円の訴訟を起こされた件
今回はちょっとオフレコ的な暴露話を公開していきたいと思います。もともと、私は新卒で入った会社で3年勤務し、その後大手に転職したのですが、転職に踏みきる決断に至った今回の話をしていきたいと思います。
それがまさに、3億円損害賠償の訴訟を起こされたという話です。
個人的には、平成の「3億円事件」と書きたいくらいです。
この記事の概要
簡単にまとめると、転職前の会社で設計変更を"ダマ"で実施したことで、客先にバレて3億円の賠償金を請求された、という内容です。
企業の3億円なら大したことないじゃん。と思われる方もいるかもしれませんが、当時私が勤めていた会社は事業規模も大きくなかったので、経常利益の約5%にあたるのでかなりの大ダメージだったと思います。
今回、公開しようと思ったのはそろそろ時効かな、と思ったためですね。って言っても私というより、私の元上司ですけどね(笑)
少し長くなってしまいますが、まずは事の経緯からお話していきたいと思います。(語彙力が乏しいので読みにくいかもしれませんが、お許しください。)
当時の状況振り返り
その当時、私は社会人2年目として設計・開発を担当していました。
当時の私は2年目ながら、新製品の開発や量産済み製品の設計変更などを担当していました。
それらの業務の1つとして、量産している製品の歩留まり改善に関する設計変更の話がサプライヤー(下請け)からあがってきて、それを2年目の私が担当することになります。
当時の私は、「サプライヤが困ってるなら改善しなきゃ!」と意気込みで仕事に臨んでいたんですね。
2年目で実力が無いながらも、まずは原因調査から進めようってことで仕事を着手し始めました。
既に量産された製品だったものの、設計根拠がほとんど残っていない状態でした。
加えて、設計形状は変更できない形状でしたので、とりあえず材質を10種類くらい選定し、試作品を製作し、半ばトライアンドエラ―的に試験を繰り返しながら、原因調査を進めたんですね。
朝から晩まで試験の中間チェックやデータまとめをしていて、結構大変ではあったものの、のめり込んで仕事をしていましたので、エンジニアーズハイみたいな状態でした(こんな言葉ある?)。
そして、数か月も調査を進めていくと原因がわかってきて、それが材料起因の変形によるバラつきが原因であることを突き止めます。
(もう少し細かく言うと、材料自体の機械特性が原因ではなく、材料強度をUPさせるために添加していた混ぜモノが、強度に引き換えて僅かな変形を材料に与えていたということです。)
話は逸れますが、とにかく、この時は嬉しかったですね。
原因の分からなかいことを、色々と調査して遂に分かる!という瞬間は、たまらなく興奮するんですよ。エンジニアの方ならわかってもらえる?
ってことで、ここまででまずは原因が判明します。
しかし、次の課題は、どのように量産同等機能を保証するのか?という点でした。
一般的に、材料変更を対策として行うと、耐久信頼性が懸念となるのですが、材料試験を繰り返し行っていたこともあり、耐久性を確保できる材質を見つける事ができました。
しかし、この材質変更により10%程度性能低下することが判明します。
厳密には、性能中央値は確かに低下しているのですが、元々性能バラつきが20%程度だったものが5%に抑えられたため、ある意味では性能向上していました。
(よくわからない方のために、以下にイメージ図を貼っておきます)
つまり、元々通常使用時のバラつきが大きく、なんとなく見かけ上の性能がよく見えていたということですね。
それなりの時間をかけ、調査・試作・実験という一連の設計・評価に時間をかけていましたので、これ以上解決案はない!ってところまで来たわけですね。
つまり、あとは設計変更をどう対応するか、という状況になりました。
このような場合、皆さんだったら設計変更しますか?
ここまで読んだ方は、この後に起こる展開を理解してもらえるかもしれません。
(そこは興味ないって方は飛ばしてもらって構わないです。)
・・・話を続けましょう。
上司のコンプライアンス意識の低さが判明。
当時の私はこの結果から設計変更にリスクがあると判断しました。
元々の目的である歩留まりの改善に対しては、性能バラつきが低下するため達成できます。
しかし、性能変化は品質的リスクがあるため、完成品メーカーに打ち上げるべきです。
当時の私でもそう考えました。
そして、ビジネスの基本はホウレンソウ。ってことで、設計変更する前に「完成品メーカーへの申し入れ」を上司へ提案してみました。
すると、衝撃の返事が返ってきます。
「そんなことを、申し入れる必要はない。」
・・・え?聞き間違いか?と狼狽している私に対し、
「設計変更の申し入れなんてほとんどしない。」
と上司は続けて発言しました。
これは社会人2年目でもわかるほどの違和感でしたね。
量産済み製品の性能低下を一切客先に言わずに”ダマ”で設計変更するなんてありえない。
そう思いつつも、当時の私は、2年目で経験も浅く業界の常識を知らなかったため、その時は黙って引き下がりました。
再提案にむけて、もう一工夫した。
ですが、考えれば考えるほど、やはりおかしいよな?と思うわけです。
「設計変更の申し入れなんてほとんどしない。」とか腹落ちしないし、そもそも今回の件は申し入れに値するレベルだろ、とどんどんモヤモヤしてくるわけです。
そんな時に、ほとんどやらない作業だから面倒なのかも?という考えを思い付き、作業の準備を全て自分で作れば納得知れくれんじゃね?と考えたんですね。
・・・けなげじゃないですか?社会人2年目。
そんな考えに至るなんて、今じゃ考えられません(笑)
ところが、そもそもフォーマットすらなかったんです。
なんでやねん!と思いながら、自分で設計変更申入書を作成します。
Word1枚の中に設計変更の内容を書き、そして、性能変化に対する検証をしてもらうように協力要請の旨を記載しました。
2年目にしてはよくやったなぁ、と今さらながら思いますね。ここまでやるってことは、それだけ、自分の中の想いが高まっていた、という事ですね。
そして、再度、上司へ完成品メーカーへの報告を打診します。
第3者目線を用意して、いざ出陣。
上司に同じように申し入れるにも、前回の失敗が頭をよぎったため、上司だけでなく営業課長にも打診しました。
というのも、上司も長年培ってきたプライドがあるでしょうし、たかだか社会人2年目のペーペーに言われたくない気持ちから再提案をよく思わないだろうという考えから、第3者目線を用意したのです。
営業課長には納得してもらい協力を仰ぐことはできました。
それでも、最終的には設計判断だ、という話になります。
そして、上司のもとへ再提案をしに、営業課長と共にいざ出陣したわけです。
しかし、再提案するも結果は撃沈。
営業課長と共に上司の机に向かい、改めて再提案をします。
前回の失敗も踏まえて、改めてリスクがあるんじゃないかと考えていることを説明し、営業課長にも確認したうえで、その必要性を極力下手に出て説明をしました。
・・・が、しかーし。同様の返事が返ってくるのです。
「報告の必要はない。設変を申し入れは必要も無い。」
しかも、上司は顔をゆでダコのように真っ赤して怒り始めたのです。
それから、小一時間でしょうか。かなりの押し問答をしました。
営業課長も必死に説得をしてくれたものの、その甲斐も実らず、設計変更申入書はシュレッダーへ。
そして、その性能変化のある設計変更は、完成品メーカーに申し入れされずに進められてしまいました。
とても悔しい気持ちでしたね。社会人2年目で物凄い無力さを感じました。
と同時に、この会社に居ては自分が腐ってしまうと思い、転職の決意をしました。
そして、丸3年勤めた中小企業を退社し、自動車系の大手企業へ転職しました。
あえて、自動車系の大手企業と書いたのは、コンプライアンスを遵守している会社に入ること、が転職要件の1つだったため。
とにかく、正しく仕事をしたくて必死で、医療・自動車業界あたりであれば、コンプライアンスに厳しいと考えたからです。
(自動車関連の不正ニュースが多いですが、求められる法令順守レベルが高いためだと考えています。もちろん、検査無資格はNGだと思いますが、他の製造業ってそもそもまともにISO規格に基づき、検査者の設定しているんだろうか・・・。)
事件は転職2年後に起きた。
転職してから2年後がたったある日。
元同僚で同期が会社を退職するということで、送別会に参加しました。
(コンプライアンスではなく、家業を継ぐという理由でした。)
送別会の中で、同じ職場だった同期と話す機会があり、転職した後の話を聞くことができました。
そこで、私が担当していた設計変更が大変なことになっている事実を知らされます。
同期曰く、設計変更から数年経過してから、完成品メーカーが異常に気付き、問い合わせをしてきた。
そして、すぐに打ち合わせをすることになり、完成品メーカーと打ち合わせする中で、設計変更したことがバレてしまい大問題に。
詳細は伏せますが、完成品メーカーは、かなりの有名企業で皆さんも身近な会社で、生産ボリュームもそれなりに多い会社さんです。
(そんな会社相手によくダマで設計変更したなぁ・・・)
問題の争点は性能低下で、完成品の性能があるロット以降、低下しているという点。
会社の部門トップまで駆り出され、打ち合わせを行った結果、ほぼ平謝り状態だったそうで、製品の回収と損害賠償請求にまで発展したんだそう。
訴訟の末、3億円の損害賠償金を支払うことになったというのが結末でした。
まぁ、正直なところ、「ざまぁ!」とは思えなくて、「意地でも止めときゃよかった」という後悔の念が強かったです。
この時に2度とこんな事態にならないようにする、そんな風に決意しました。
さて、同期・同僚たちは、冗談交じりで「やってくれたなぁー」なんて言い方をされましたが、さすがに、当時苦汁をなめる気分だったくらいの事柄だったこともあり、うまく受け流せず、ついつい食い気味に否定してしまいました。
同期・同僚たちには話していたこともあり、思い出したように「あ、確かにそんな話してたな、あの件か。」と笑いながら対応してくれました。
そして、不思議な形での自分へのフィーバックとなりましたが、改めて自分の考え方は適切なモノであったと感じた経験でした。
以上で、今回の話は終わりとなりますが、私と同じ境遇にあった人のためにどのように対処すべきかを整理しておきましょう。
コンプライアンス違反に出会ったらどうすればいいのか?
今回の私のように、意外とコンプライアンス違反の状況は身の回りに潜んでいます。
このような状況に出会ったらどうすべきか?
まずはしっかりと自身の意見を伝えましょう。
上司(管理職)というものは、自分よりも経験値が多く、場数をこなしているため対応力も高いですが、会社側の人間で立場が異なります。
会社側としての意見を強く持っていますので、たまに正しい考え方をできなくなってしまう人がいます。
どう考えてもおかしいという違和感を感じたら、それは正しいと思います。
そのような時は、私のように勇気をもって意見を伝えましょう。(私のようにだめかもしれませんが、諦めずに伝えましょう。)
そこで、何か明確な理由が出てきた場合は、よく相談しながら決めてください。
自分の意見を伝えても取り合ってもらえず、理由も明確ではない。加えて、違和感がどうしてもぬぐえない。そんな場合には、すぐに転職に踏みきるのことをオススメします。
というのも、その違和感は時間が解決してくれないです。
放置しておくと時限爆弾のように、あなたの心の中で時を刻みいつか爆発してしまいますよ。
まとめ
今回は、かなりギリギリな暴露話をお話をしました。
会社に対する世の中の見方は年々厳しくなっている、一方で、会社という特殊なコミュニティの中では、どうしても歪んだ考え方を持つ人が現れます。
歪んだ考え方の度がいき過ぎないように、コンプライアンス教育や経営体質の改善が行われるわけです。
ですが、そういったことがなされないままですと、私の上司のようになってしまいます。
設計者として成長したいのであれば、コンプライアンスを守ることは大前提です。
その理由は、ルールの中で、いかに良い性能・耐久性を持った製品に仕上げるか、というのが設計者の使命であり業務だからです。
つまり、言い換えると、ルールを守っていない会社は、設計者としての業務を適切に行えていない=ただの自己満足だと言えます。
そんな会社には未来はありません。
あなたの会社は大丈夫ですか?技術者として10年後成長できるでしょうか?
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