ハイボールの作り方 3つのポイント
はじめに
先日、Twitter(@tanabe_duvin)で、私がベストだと考えるハイボールの作り方をツイートさせていただいたところ、大きな反響をいただき、たくさんの皆さまからコメントをいただきましたので、あらためて詳しく解説させていただきたいと思います。
私は、神戸でソムリエのキャリアをスタートしましたが、実は元々はバーテンダーとして20歳の時、この世界に入りました。(今から22年前です。)
その後、2002年(当時25歳)にワインエキスパート資格を取得。翌年、ソムリエ資格を取得し、以来18年間、この業界に携わっています。
今回ご紹介するのは、神戸のホテルのチーフソムリエ兼バーテンダーを務めていた時代に出会った、伝説のバーテンダーに伝授していただいたハイボールの作り方。通常の作り方との最も大きな違いを先にお伝えしますと、「氷を入れるタイミング」です。
本来であれば「まず最初に氷をグラスに入れる」ですが、田邉流は「氷は最後に入れる」、つまり、一般的に普及している方法と、行程が全く逆ということになります。
このやり方を知るまでは、何の疑いもなく氷をまず先に入れていましたが、なぜそうしているのかは理解していなかったのです。きっとここに関しては、多くの方が疑問を持たず、無意識のうちにそうしているのではないでしょうか。
そこを完全に覆したのが今回ご紹介する作り方。
Twitterでは、文字制限等、うまく伝わらなかった部分もあったかと思いますので、今回あらためて詳しく解説させていただきたいと思います。
では、ご覧くださいませ!
ハイボールの作り方 3つのポイント
1.まず先にウイスキーをグラスに入れる。
グラスとウイスキーは、あらかじめ冷やしておくのが望ましい。(私は冷蔵庫の中に常備しています。)
田邉のおすすめウイスキーは、バーボンを代表する「ターキー8年」。アルコール度数が高めですが、ソーダとの相性は抜群です。ソーダで割ったとしても、ウイスキーの味が全くブレません。
ここでは、氷に直接ウィスキーを注がないことで、氷にダメージを与えないようにする。
*氷に向かって注ぎ入れる時点で、氷の溶解は始まる。よって氷を入れるのを最後にすることで、それを完全に防ぐことができます。(氷はなるべく溶かさないように、冷やすのに徹してもらうのがベストだと考えています。)
2. ソーダがグラスの中で回転するように、壁面に添うように注ぐ。
グラスに添って、ソーダが回転するように注がれることで、ウイスキーと自然に混ざり合っていく。
こうすることで、後からバースプーンで混ぜる必要がなく、炭酸を壊さずにハイボールを完成させることができます。(よって泡も長持ちします)
ワインの醸造で言う「グラヴィティ・フロー」(*重力に従い醸造を進めていく)に近い方法だと、個人的には考えていて、重力に逆らわずに原料を取り扱うことで、繊細な味わいを最大限に表現することができる。
この行程は、ソーダを注ぐ時、グラスに液体がどの角度で注がれていくかがとても重要。(グラスの中に、渦が生まれることを意識する。)
実はこの時点で、既に味は完成されているのです。
なんというシンプルさなんでしょう!
速く、確実に、美味しくできあがる。この三拍子が揃っているのがこの作り方。
そういう意味で、実際のレストランやバーでのオペレーションにおいても、供出スピードが格段に上がるという点で、この作り方は、とても優れた方法だと言うことができます。 (もちろん、ご自宅でも簡単につくれます。)
3. 最後にトングを使用し(写真はスプーンとフォークを使用)、上から氷をゆっくりと浮かべて完成。
氷はかち割り氷を購入。(製氷機の氷は溶けやすいので避けたい。)
大きめの氷塊、2〜3個で仕上げる。細かい氷を何個も入れると薄まりやすくなるので注意したい。(板氷を棒状にカットし、1本で仕上げることができたとしたら完璧。)
氷は一番最後に入れる。
先ほどのソーダの流れで撹拌できているため、バースプーンを使用する必要は全くない。
氷を入れる時、液面に、まるでビールのような泡立ちができあがる。その瞬間にひと口めを飲むと、とてもクリーミーな味わいのアタックと、華やかな香りを体験することができます。ぜひ泡があるうちに飲み始めましょう。(ひと口めは泡立ちがありますが、そこから立ち昇る炭酸は弱まることなく最後までしっかりとしています)
運命のハイボール対決
先述した通り、この方法は、神戸のホテルバーで働いていた時代に教えていただいたものですが、最初その方と私の、どちらの方法がより優れているか、実際にお互いがハイボールを作って、飲み比べ対決をしようということになりました。
私は既存の作り方で勝負を挑んだのですが、明らかに仕上がりが違い、全く材料、グラス等の条件が同じだとしても、作り方の行程で、ここまでクオリティに違いが出るということに、大きなショックを受けた瞬間を、今でも記憶しています。
完敗を認め、その日から私自身、この作り方に完全にスイッチしました。
氷を最後にゆっくりと入れることで、氷へのダメージを避け、溶けるスピードを遅らせつつ、最後まで味わいと泡を保つことができる。
原料由来の穀物の香りも、より華やかに感じられ、味わいのアタックは優しくまろやか。最初から最後の一口まで、味わいがブレることなく美味しくいただける。
ぜひ飲んでみてその違いを確かめてみてください。
ワインディレクター 田邉 公一