ロシアを追い詰めていくのは戦略的には重大なミスだと思います。
ロシアを非難し、追い詰めていく論調を、戦略論者として非常に憂慮している。
感情論的に。あるいは、我が国的な正義としては、ロシアが間違っているとするのは、まあ正しい。(さしあたって、正しいとしておこう。)
だけども、世界の過去の歴史や、私達が獲得してきた英知を紐解くならば。
敵と決めつけ、徹底的に日独伊を追い詰めた先に何があったか。苦し紛れから同国内で国内世論や軍部が急進化、暴走。鬼畜米英と叫び、世界大戦に進んでいった。
一方で、私たちは、対話を試み、核戦争を回避し得たキューバ危機の歴史をも、経験している。
ロシアを追い詰めていくのは、戦略的に正しいやり方とは言えないのではないか。
戦略の成否は、相手方の反応でこそ決まる。天才たちの成した、かのゲーム理論によって、私達はそれを深く理解したはずではないのか。この状況、いわゆる囚人のジレンマではないのか。
なぜ相手を追い詰める。
その先を、なぜ考えない。
ロシアが暴走すれば、世界大戦なのだ。ルーブルの下落を嘲笑したり、国際大会に参加できなくなったスポーツチームのことを、いい気味だと思うのではなく、私たちはそこに世界大戦の危機をこそ、核戦争の危機をこそ、察するべきではないのか。
逆にもし、ロシアを屈服させ得たとしたなら、その先に何がある?お互いに、深い恨みを残して、これからの時代を極めて不安定不透明なものにするのが、賢いやり方なのか。そもそも、今のやり方で追い詰めていったとして、ロシア、プーチンが屈服すると、皆さんは思えるだろうか?
あるいはロシアが、国として瓦解するかもしれない。それこそ、無関係の市民が長らく苦しむことになるだろう。それは皆さんが望む未来なのか?
着地をこそ、考えなければいけないのではないのか。
どうして、一方を悪とするのか。
もし今度、逆賊討つべしと、どこかの国がロシアに攻め込むとき、あなたはウクライナにしたのと同じように、ロシアに支援をするだろうか。
いや、あなたは諸手を挙げて、プーチンをやっつけろと、その国に加担するだろう。
あなたはそれを正義と言うのか。
ロシアを悪とするのは容易だ。
まあ、この際別にそう位置付けても構わない。
だが問題は人と人のことなのであり、これからも同じ星の上で何十年も一緒に暮らしていかねばならない相手がいることなのだ。
一方的に悪と決めつけられ、追い詰められる人びとを、あなたは想像できるだろうか。次に何が起こる?彼らは次に、何をする?
べつだん、ロシアの肩を持つわけではない。
自己と世界の利益に沿って、戦略的に考えるなら、何かを悪と断じるのは決定的なミスだ。
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