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【低評価】なぜリメイクした?『CUBE 一度入ったら、最後』ネタバレあり

評価:★☆☆☆☆(1/5)

『CUBE 一度入ったら、最後』。

新宿ピカデリーにて鑑賞して来ましたので
その感想を書いて行きます。

この記事はネタバレを多分に含みます。
本編を鑑賞されていない方は
それをご了承の上、お読みいただけると幸いです。

■1. 映画の詳細情報


■【映画の基本情報】

●タイトル:『CUBE 一度入ったら、最後』
●公開:2021年10月22日
●監督:清水康彦
●脚本:徳尾浩司
●出演:
 ・菅田将暉
 ・杏
 ・岡田将生
 ・田代輝
 ・斎藤工
 ・吉田鋼太郎
 ・柄本時生
  他
●公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/cube/


■【原作映画の基本情報】

●タイトル:『CUBE』
●公開日: カナダ公開 1997年9月9日
      日本公開  1997年9月12日
●監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
●脚本:ヴィンチェンゾ・ナタリ
    グレーム・マンソン
    アンドレ・ビジェリク
●出演:
 ・モーリス・ディーン・ウィント
 ・ニッキー・グァダーニ
 ・ニコール・デ・ボア
 ・ウェイン・ロブソン
 ・デヴィッド・ヒューレット
 ・アンドリュー・ミラー
 ・ジュリアン・リッチングス

【あらすじ】

数人の男女がある部屋の中で目覚める。

その部屋は立方体「CUBE」の形状をしており、
四方、天井、床、それぞれに
一枚ずつ扉が設置されている。

それぞれの扉の先には
同じ形状の部屋が隣接しており、
どこに行っても同じ光景が続いていく。

登場人物たちに共通点はなく、
性別、年齢、職業、すべてがバラバラ。

なぜ彼らは集められたのか?
そもそもこの空間は一体なんなのか?

何も答えが見つからないまま、
無限に続くCUBEの中から
彼らは抜け出すことはできるのか?


■2. 勝手解説

原作は1997年公開のカナダ映画『CUBE』。
ワンシチュエーションホラー
というジャンルを切り開いた映画。


どこまでも続く同じ部屋の中で、
・どうやってそこから抜け出すのか?
・そもそもなぜ彼らは集められたのか?
という
疑問ばかりが残る雰囲気と


窮地に追い込まれた人間が
狂気に満ちていく様子を描いています。


その映画を原作として
日本版リメイクされたのが
本作『CUBE 一度入ったら、最後』。


原作の公開が1997年のこと。

そこから20年以上の時を経ても
映画好きの中で語り継がれるカルト的な人気作を
日本版としてリメイク!

という感じですね。


■3. 原作との違い


■ 違い1 俳優の『知名度』


原作とリメイク版とで大きく違うのが
俳優の知名度です。


原作の出演者はすべて無名の俳優。

有名俳優が1人も出演していないからこそ、
『次は誰が死ぬのか?』
という先の読めない状況が
おもしろいポイントの一つでした。


一方、
リメイク版に出演している俳優陣は、
今の日本映画界で活躍する有名俳優ばかり。


出演者がすべて有名であると
それはそれで
『次、誰がどうやって死ぬのか?』
というのが先読みできなくなってきます。

■ 違い2 CUBEの『ギミック』

また、
閉じ込められるCUBEのギミックも
原作とは少し異なります。


原作と大きく異なっている部分としては、

●人間の感情に反応して部屋の明かりの色が変わる。
●壁一面が巨大なスクリーンになる。
●1つの部屋を2つに分断する壁が存在する。

などがあります。


原作では
CUBEという閉ざされた空間のみが
登場人物たちの精神を追い込んで行きます。

リメイク版では
CUBEに設置されているギミックによって
登場人物のトラウマを映像で見せたり、
心情の変化に応じて部屋の明かりの色を変化させたりと
視覚的な効果で登場人物の精神をすり減らすギミックが追加されています。


そして、
登場人物達を襲う部屋のトラップも
原作とは違います。


原作のトラップは、以下でした。
●ガスバーナー
●溶解液
●無数の針
●網目状のワイヤーカッター


リメイク版のトラップは以下です。
●四角形にクリ抜く刃物
●高速糸ノコゴリ
●天井から襲ってくる高速回転するカッター
●動くものを追うレーザー
●突き刺した後に先端が広がる槍
●ガスバーナー


以上のことからも
原作と比べて登場人物たちを襲うトラップのバリエーションは
増えたように感じます。


■ 違い3 登場人物の1人が『内通者』


原作では、登場人物全員が
『なぜ自分たちがこんな空間に閉じ込められているのか?』
という理由がわからずに悩むというシーンが多数あります。


●理由がわからない
●目的がわからない
●終わりが見えない

という
『わからない恐怖』

というのが登場人物達の精神的苦痛であり、
観客が注目するポイントでした。


行き場がなく、
誰も助けには来ない、


という窮地に追い込まれた人間が
段々と本性を表しながら豹変していく。


そうした
『人間の心が最大の敵』
という描き方が
ワンシチュエーションホラーの傑作として
人気を誇る理由の一つです。


一方、
リメイク版では
杏さんが演じる甲斐麻子という人物が
CUBEの仕掛け人の内通者であることが
最後に判明します。


甲斐麻子の正体は、人間ではなく、
『CUBEが送り込んだアンドロイド』
という設定です。


彼女の任務は、
『CUBEに送り込まれた人物を
 その人の顔を見ることで認証し、
 CUBE内での活動を記録する』

というものです。


したがって、
彼女はCUBEに人間が送り込まれる度に
その人物たちを観察し、
一人ひとりどんな行動を取ったのか?
を記録し続けているという設定です。



■4. レビュー 『正直、おもしろくない』


カナダでの公開から20年以上の時を経て
CUBEという人気作をリメイクしている本作。


原作にはない要素を盛り込んだり、
人気の俳優陣を起用したりと
チャレンジングな要素はもちろんあります。


しかし、感想を一言で言えば
『おもしろくない…』
という一言で終わってしまいます。


その理由は以下です。


■ 理由1 登場人物達が最後まで『小綺麗』


『CUBEという閉鎖空間の中で
 様々なトラップが命を奪おうと襲ってくる!』

『食べるものも水もなく
 いつまでこの恐怖が続くのかわからない!』

というのがこのCUBEという空間の恐怖です。


しかし、
登場人物たちは
最後の最後まで汗の一つもかかず、
髪型が乱れることもなく、
無精髭が生えてくることもない。


脱出のために着ている服を利用するので
少しだけ服は汚れていきますが、
それ以外は、
とっても『小綺麗』。


CUBEという恐怖の空間に閉じ込めれらたにしては
なんとも小綺麗すぎます。

その小綺麗さが半端なく違和感。


『本当に追い詰められているのか?』
というのが疑問でなりません。


■ 理由2 登場人物があまり『死なない』


ホラー映画を見に来ている観客というのは、

『人が惨殺されるシーン』

を見たくて劇場に来ています。


狂気じみた発想ですが、
ホラー映画というのは
身の毛もよだつような恐怖体験を与えてくれる
エンターテイメントです。


『もしもこんな風に殺されたら苦しいだろうな〜!』
『こんな風にモンスターが襲ってくるなんて怖すぎる!』
『うわ〜!グロすぎ!気持ち悪くなるわ〜!』


という恐怖をあえてお金を払ってまで
体験しに来ているわけです。


そんな観客からすると
登場人物がほとんど死なず、
惨殺シーンもない
なんて映画は退屈でしかありません。


恐怖を感じるシーンが全然ない。
ゴア描写(グロテスクなシーン)も生ぬるい。

『そんな映画を見たいわけじゃないんだよね〜』

という気持ちになってしまいました。


■ 理由3 菅田将暉くんに感情移入させるシーンが『あざとすぎて寒い』


本作の主人公と言える後藤裕一を演じているのが
菅田将暉くん。


菅田くんが出演していることは、
全くもって文句ありません。


演技力ももちろんシッカリしています。


仮面ライダー好きの自分としては、
仮面ライダーWでフィリップを演じていた菅田くんが
こんなにも活躍しているという状況が嬉しい限りです。


しかし、
その菅田くんに対して感情移入させようというシーンが
見え見え過ぎます。


物語の終盤、
部屋の壁がスクリーンに変化し、
菅田くん演じる後藤の過去のトラウマを見せる
というシーンがあります。


ココで違和感なのが、
・なぜ後藤の過去だけを映像として見せるのか?
・他の登場人物のトラウマは見せないのか?

ということです。


正直このシーンは、
人気俳優の菅田くんに注目を集めさせるだけに用意されたシーン
としか思えません。


とことん『あざとい』です。
『菅田くんのゴリ押し』としか思えません。


不要としか思えない寒いシーンでした。


■ 理由4 杏さんの『冷静さが不自然』過ぎる


杏さんが演じる甲斐麻子の正体は
CUBE側が送り込んだアンドロイド
というのが最後の最後でわかります。


確かにこの設定は原作にない部分ですし、
驚かされるようなドンデン返し的展開です。


しかし、
作中での甲斐の行動や表情が
あまりにも冷静すぎて不自然です。


また、
甲斐のみがトラップの被害に遭いません。


どんなトラップが襲ってこようと
常に顔色一つ変えることもなく、

それどころか
最初からトラップの存在を知っているかのように
なんの被害にも遭遇しない。


こんな登場人物って不自然すぎませんか???


さらに、
そんな甲斐に対して
登場人物たちは全く疑いを持ちません。


むしろ、
別の人物同士で感情をぶつけ合います。


『え?なんで?笑』

見ていて感じるのは
そうした違和感です。


ホラー映画の中で描かれる女性というのは、
●体力的に弱くて誰かの足を引っ張ったり、
●驚いて絶叫したり、
●頼れる男性に依存したり、
●急にエロいシーンを見せつけて来たり、


というのがテンプレート的な描かれ方です。


もちろんそうした女性である必要はありません。


エイリアンシリーズで
シガニー・ウィーバーが演じるリプリーのように
強い女性がモンスターを倒す!

という展開も最高に燃えます!


しかし、
本作で杏さんが演じる甲斐は
違和感がありすぎます。


その違和感が、
『アンドロイドだった』
という衝撃の事実によって辻褄が合う


というのも一つの描き方ですが、


内通者として
登場人物の中に入り込むのであれば、
もっと疑いを持たれないように
自然な立ち振舞をするのではないでしょうか?


あからさまに
甲斐以外のキャラクターは恐怖を感じているのに
彼女だけが涼しい顔をしている。


映画というフィクションの中であっても
異常なほど違和感です。


■ 理由5 吉田鋼太郎さんが投げかける『疑問点がナゾ』


物語の冒頭、
吉田鋼太郎さんが演じる安東と合流するシーン。


そのとき安東は、
田代輝くんが演じる宇野千陽を見て

『なぜココに子供がいる?』

と言います。


宇野は13才という設定。
他の登場人物に比べて圧倒的に若いです。


『子供がいることに違和感を感じている?…
 なぜ???』


CUBEという空間には、
何の共通点もない人たちが集められています。


したがって
年齢なんて関係ありません。


しかも、
安東はCUBEについての情報を何も持っていません。

したがって宇野がいるということに
違和感を持つ理由がわかりません。


『子供がいることに疑問を持つということは、
 安東はなにかを知っているということか?』


と思って最後まで見ていましたが、
何も言及されることなく
安東は殺されました。笑


子供について疑問を抱く行為は
一体何だったのか?

最後までわかりませんでした。


■ 理由6 斎藤工さんの演じるキャラへの『掘り下げがほぼない』

他には、
斎藤工さんが演じる井手というキャラクターは
なぜか常に焦っています。


急いでCUBEから抜け出したい
と思う気持ちはわかるのですが、
終始無口で何も語らないため
なぜそんなにも急いでいるのかわかりません。


その理由のわからない態度が
後で意外な展開を生むのか?
といえばそんなことはありませんでした。笑


物語の中盤、
井手は
『俺はココから早く抜け出さないといけないんだ…
 大切な人がいるからな…』
というセリフを言います。


それまで無口だった井手が
心情を吐露する貴重なシーンです。


それまで無口で近寄りがたい印象だった人物が
突然、大切な人がいるようなことを匂わせる。


こんなもん完全な死亡フラグです。

そしてそのシーンの直後、
井手はトラップによって殺されます。


あまりにもわかり易すぎる展開。


そして、
井手という人物に対する
掘り下げは皆無。


というか、
基本的に菅田くん以外の人物については
過去の掘り下げなんて一切ありません。


完全なる菅田くんゴリ押し。


斎藤工さんが演じる井手にも
なにかしらストーリーを面白くするような要素
を持たせることだってデキたんじゃない?
と思って仕方ありません。


■ 理由7 子供は絶対に助かるという『わかり易すぎる展開』


田代輝くんが演じる宇野というキャラは
まだ13才という設定。
中学生くらいの子供です。


ほとんどの映画で
子供に対する殺戮シーンなどは
コンプライアンス上の問題から
描かれないことが多いです。


『主要人物の中に子供がいる場合、
 その子供は死ぬことはない』

というのが、
映画業界または映像作品業界の
暗黙のルールとも言えるでしょう。


しかし、
そのルールにそぐわない作品もあります。


ラース・フォン・トリアー監督の
ハウスジャックビルド(2019年)では、
主人公が容赦なく子供を銃殺するシーンがあります。


ギレルモ・デル・トロ監督の
ミミック(1997年)では、
人間並の大きさに進化したユダの血統という巨大昆虫が
子供惨殺するシーンが描かれています。


そうした
子供だって容赦なく殺されるかも知れない!
という先の読めない展開は
この映画にはありませんでした。


■ 理由8 登場人物の『別れ際がアッサリ過ぎる』


田代くんが演じる宇野は、
最後に唯一、
CUBEから脱出することがデキます。


しかし、
それまで守ってくれた、
または一緒に困難を乗り越えた
後藤やその他の人物のことなんて何も考えることなく
明るい表情で脱出の通路を歩き始めます。


『え?そんなに綺麗サッパリ一緒にいた人のことなんて
 考えることなく脱出できる???』


という疑問が消えません。


死んでしまうかも知れないような
過酷な状況を生き抜いたんです。
それなのになんの心残りもない?
なぜ?笑


また、脱出の際、
杏さんが演じる甲斐は
『CUBEに残る』という選択をします。


そんな意味不明な行動を取っているのにも関わらず、
宇野は甲斐のことを止めようとしません。


折角脱出できるチャンスが来たんです。

そりゃ一緒に逃げようってなりませんか?
なんで危険な場所に留まるってことになるの?
なんでそれを止めようとしないの?

疑問が鳴り止まなかったです。笑


■5. 良かった部分もある


散々酷評しましたが、良かった部分もあります。

それが以下です。


■ 良かった点1 岡田将生くんの『演技』

今をトキメク人気俳優の1人、
岡田将生くん。

イケメンです。


物語が進むにつれて
岡田くんが演じる越智は
安東へのストレスを募らせていき
最終的には殺人を犯してしまいます。


演じている岡田くんの表情はイイですね。

優しそうな青年が
段々と追い込まれて
殺人鬼となる。


こうした
『人間の本性は怖い』
といった描写は
原作へのリスペクトも感じられる場面でした。


■ 良かった点2 新しい設定を盛り込むという『チャレンジ精神』


原作は、
充分過ぎるくらいに魅力的な作品。


そんな作品をリメイクするというだけでも
大きなチャレンジです。


そこに
・新しいトラップ
・アンドロイドが潜り込んでいる
・トラウマ映像を見せるといった精神的苦痛描写
といった要素を追加して
新しい映画を作った!

となれば、一度見てみるのもよいのかなと思います。


そうしたクリエイターのチャレンジ精神は
敬意を評したいところです。

●6. まとめ 『もっとおもしろくできたはず…』


公開されてから20年以上の歳月を経ても
映画ファンの中で語り継がれるような名作『CUBE』。


その原作を元ネタとして
日本映画界屈指の人気俳優を揃えて
リメイクを作ってみた!!!


という結果がコレというのは、
なんとも残念でなりません…


『なぜリメイクしたのか?』


という疑問が残るばかりです。


『リメイク作品を作ってみたい!』
『インスピレーションを受けた作品を元ネタにして
 新しいモノを作りたい!』


というクリエイターの思いは痛いほど理解できます。


映画というアート作品は
そうした気持ちが凝縮されて作られるモノでしょう。


しかし!

本作はなんとも『もったいない!』


これだけ人気ある原作と人気ある俳優さんたちを起用したにしては
脚本やストーリーの展開に違和感がありすぎる。


原作にはなかったようなCUBEのトラップや
アンドロイドが潜り込んでいるという設定を盛り込んだなら
もっとおもしろくできたのでは?
と思ってしまいます。


クリエイター達の新しい試みには敬意を評しますが、
作中での違和感や疑問点が多すぎます。


最初から期待せずに見に行った映画でしたが、
見終わった後も
その印象は変わらず、


『正直、おもしろくなかったな〜』
としか思えない映画でした。


という感想を書き終えて
筆を置きます。


以上、勝手な感想でした!


ではまた!

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