【サーマルクライムスタジオ富士で茶ウナイベント!】
少しづつ秋の気配を感じ始めた9月最初の日曜日。爽やかな秋風が吹く快晴の中、静岡県裾野市、富士山2合目の別荘エリアにある人気温浴施設『サーマルクライムスタジオ富士』でかつてない魅力的なイベントが開かれた。イベントのテーマは、『サウナ×お茶』=『CHAUNA』。
静岡県ならではの掛け算である。そう、最近のサウナのトレンドはどの施設に行くか、というストレートなものより、行った先のサウナで何をするか、サウナと何を掛け算して楽しむかという、より突っ込んだ『サウナ体験』が主流になってきている。そんな動きの中でお茶をPRしたい静岡県、静岡県JAグループ、静岡第一テレビと、静岡が誇る人気温浴施設が手を組んだイベントが行われたというわけだ。以下、重度のサウナ愛好家である僕が体験した『サウナ×お茶』体験をリポートしてみたいと思います。
いつものケロサウナがさらに香り高い空間に!
~ケロサウナ×お茶ヴィヒタ×茶水風呂×水出し冷茶~
ケロサウナとは、いくつかサウナ室があるサーマルクライムの中でも1,2を争う人気のサウナ室だ。というのも、サウナの本場フィンランドで『木の
宝石』と言われる立ち枯れした松の木(樹齢200年プラス100年以上立ち枯れた状態の松のこと。脱水・乾燥が進み樹皮がはがれ表面が銀色になることから『シルバーパイン』とも呼ばれる最高級のサウナ材)で作られており、毎回入るとほんのり良い木の香りを感じ、それだけでもリラックスできる大好きなサウナ室だ。
そこに忽然と『生のお茶っ葉で作られたヴィヒタ』が置かれた。おお!ほとんど初めて目にする生の茶葉。そっと触れてみる。本来のヴィヒタの素材である白樺の若葉に比べるとかなりしっかりしている。ただ香りをかいでもそこまでしない。そこで、葉を水にたっぷり浸したうえでストーブの上でばさばさとロウリュしてみる。ウィスキングで体験するあれだ。プラス、茶葉の先を手で少しクシャクシャとしてみる。すると・・・!
なんとも甘い爽やかな香りが立ち始めた。これだ!この茶葉ヴィヒタを使って居合わせたお客さんとウィスキングのやりっこをしてみる。うーん、なんとも気持ちいい。いつもの白樺の若葉よりも肌への刺激が強いが、むしろ素人がやるのでこれくらいがいいのだ。おまけに香ばしいお茶の甘い香りもする。
これはやみつきになりそう。体験者は「森が身体を駆け抜けていく」と表現。まさにウィスキング体験と同等の体験ができたと思う。
そして、そのあとに待っていたのが、水風呂ならぬ『お茶風呂』。たっぷりの茶葉が大きめのパックに入っているため、まさに水出し茶のお風呂になっているのだ。
ただパックを持ち上げただけでどっとお茶が流れ出る。
汗をシャワーで流した後、そこに身体を沈めると、なんとも言えない、いいお茶の香りに包まれた。思わず手ですくって飲みたくなる(これは本当)が、思いとどまる笑 いつもの水の肌あたりがマイルドになっているのがわかる。こんな贅沢な気分になれる水風呂は始めてだ。
そして、水分補給のときに大切な瞬間が訪れた。いつもの水に代わって置かれていたのは『水出し 棒焙じ茶』というもの。氷水で冷やされている。そっとコップに注いでみるとその流水の動きから、とろみが付いているのがわかる。そして一口、含んでみると・・・なんとも爽やかな旨味とコクが口中に広がった。
今回の日本茶の選定を担当した西原周さん(お茶を中心に食のマーケティング支援・お茶に関するアドバイザーを行っているUKIWA代表)にお話を伺うと、これはほうじ茶とのこと。ただし、茶葉ではなく旨味が強い茎の部分で淹れているという。しかも冷水で時間をかけて淹れているため、苦味がなく旨味だけが溶け出しているそうだ。
確かに言われてみれば、いつものお茶特有の苦味がない。雑味もほとんど感じない。これが本来のお茶の味なのか。さわやかな甘味がより幸福な気分を運んでくる。このお茶を飲んでデッキチェアに横になると、いつもと違う景色が見えた気がした(ととのった)。
いつもの灼熱アウフグースがお茶薫る癒し熱波に!
~マウンテンサウナ×お茶ロウリュ~
サーマルクライムのマウンテンサウナと言えば、ユーロビートが鳴り響き、サウナのキャラが変わったかのように熱波を送り出す最後の打ち上げ花火的なサウナの印象が強い。だが今回は違っていた。タワー型ベンチの3段目と4段目に茶葉ウィスクが敷き詰められたうえに、サウナヒーターに大きな鉄鍋が置かれ、そこでクツクツとお茶が煮出されている。このダブルのお茶セッティングがもたらす効果は絶大だった。一歩足を踏み入れただけで、お茶の香ばしい香りに包まれる。なんとも心地いい。まるで違うサウナ室にいるようだ。
そして現れたのが、サーマルクライム公式アンバサダーで千葉ビバークランド専属アウフギーサーの内藤さん。開口一番、内藤さんは「皆さん、熱波師とアウフギーザーの違いってご存じですか?熱波師は熱い風を送る人、アウフギーサーはサウナ室の管理をする人のことです。今回はただの熱い風ではなく、お茶の香りを楽しめる癒し系のアウフグースを行います」否応なしに期待が高まる。そして始まったお茶ロウリュ。あっという間に最上段までより香ばしいお茶の香りが駆け抜ける。そして内藤さんが優しくお茶の風を送ってくれる。
お茶ロウリュ自体は今は珍しいものではないが、今回の体験は熱と香りをしっかり楽しめる得難い体験となった。
ハーバルリチュアルとピーリングを日本茶パックで体験!
~テルマリウム×お茶パック~
近年、日本サウナ・スパ協会が積極的に推進しているのが『ピーリング』と『ハーバルリチュアル』。『ピーリング』とは肌の表面にある古い角質を柔らかくして取り除く美容法。『ハーバルリチュアル』とはアウフグースの一種で、よりハーブを感じるロウリュによって熱と香りを扇ぎだすもの。先日も協会の主催で、チェコで行われる世界大会のための日本予選会が開かれたばかり。
このエッセンスを取り入れたのが、今回オリジナルで作られた特製のお茶パックだという。かわいくデザインされた容器を開けてみると、キレイな緑色のペーストが現れた。
これを作った今回のイベントのトータルコーディネイター内田奈々さん(今回はサ飯も担当)に製法を伺うと『静岡茶のペースト+静岡米粉+はちみつ+西伊豆の塩』とのこと。完璧な地産地消のパックというのがレアだ。
また、はちみつはそもそも『保湿』や『抗菌作用』『美白』などの効果が期待されるピーリングケアの代表的な素材だが、これをお茶と組み合わせる発想がなんとも大胆。
早速、頬にたっぷり塗ってテルマリウムに入る。ほんのりお茶の香りと甘い香りが自分の顔のあたりに漂っているのがわかる。
白いスチームが立ち込め、だんだん温度が上がってくる。よくある生半可なスチームサウナと違ってしっかり熱いのがここのテルマリウムの特徴だ。熱さの限界を感じたところでクナイプへ。
ホースから冷水を出し頭の上からかけてみる。
「ひやっ!」水風呂に慣れている僕ですら、その意外な冷たさに声が漏れる。そして、その水で頬についたパックも落とした。
サウナ体験後の保湿の重要性は今や当たり前になったが、スチームサウナを楽しみながら香りが心地よいパックで保湿とピーリングが行えるこのアイデアは素晴らしい。こんなお茶の使い方もあるのだ。
ちなみにこのペーストは食べられるそうで、アイスなどにかけてもいいらしい。なめてみると、はちみつの甘さがじんわりくる。そういう意味でもサステナブルな一品だ。
これが日本茶なのか!初めての味と香りにお茶の奥深さを知る!
~サウナラウンジで呈茶サービス~
この日は『呈茶(ていちゃ)』というイベントも行われた。呈茶とは、お茶でお客様をもてなすということだが、誰でも気軽にお茶に触れてもらうことが今回の狙いのようだ。今回は『山のつゆひかり』という浜松市のカネタ太田園さんで作られた高級茶葉を使う。興味深いのは、この茶葉を違う温度のお湯で淹れて、その味の違いを体験してみるということ。普段僕たちは何も考えずに沸騰したてのお湯でお茶なりコーヒーなりを入れてしまう。しかし、熱いお湯で入れると茶葉が持つ様々な成分がすべて流れ出てしまい、苦味や雑味を不用意に生む原因になってしまうという。知らなかった。
そこで今回はまず60℃という低温でお茶を入れる。お茶をお湯に浸す時間はきっちり2分間。丁寧にお茶を淹れながら説明してくれたのは静岡県お茶振興課の藤井拓さんと瀧本珠理さんだ。藤井さんは『お茶インストラクター』という資格を持ち、日本茶の正しい淹れ方だけでなくお茶の科学的な知識にも精通しているとのこと。
そして、出されたお茶はまるで金色のような透き通った色をしている。口に含んでみると、今までに味わったことのない旨味が広がった。深くいつまでも舌に残る。それだけ味が強いのだ。2回飲んで初めてこれが甘味だということがわかったが、でも本当にそれで的確に表現できているのかが疑問になるほど、初めての味だった。これは体験してみないとわからない。
そして、次は80℃で1分間。しっかり温度計で湯温を測り、淹れる時間もストップウォッチで厳密に測る。飲んでみる。
あ、これはいつもの煎茶だ。程よい苦味と香ばしさ。安心できるこれぞ日本茶。
でも先ほど感じたあの強烈な旨味はほとんどなかった。不思議だ。温度の違うお湯で入れたことでまるでお茶の味が変わってしまった。お茶アドバイザーの西原さんはこう言う。
「要は茶葉の持つポテンシャルをどう引き出すかなんです」お湯の温度、時間ではっきりと変わるお茶の味。サウナに入った後だからこそ細かい味のニュアンスも感じることができたと思うと【サウナ×お茶】の意味合いもぐっと大きくなる。まだまだ入口だが、お茶の奥深さに触れることができた。
ポカリスウェット×お茶!うますぎる!びっくりコラボ!
~サウナラウンジで変わり種お茶体験~
西原さんのお茶イノベーションはまだまだ止まらない。僕らもついていかねば!
次に飲んだのはポカリスエットの無糖バージョン、イオンウォーターで淹れたお茶だった。なんだこのスッキリ感。あのイオンウォーターの身体に染み込むように飲める感じがお茶の爽やかさと相まってとっても心地良く飲める。
またオロナミンCで割ったお茶(オロポならぬオロチャ)、英国式の製茶法で作られた日本茶アールグレイ(柑橘系のベルガモットの香りを入れた茶葉のこと)など多彩な日本茶を飲むことができた。もちろん『オロポ』も美味しいが、ここまで爽やかに飲めるのであればサウナドリンクとして充分楽しめると感じた。そして写真に写っているタンブラーはなんと廃棄茶葉で作られたものだそう。こんな使い方もできるなんて本当に驚きだ。
今回の目玉!サ飯ならぬ茶飯は玉露出汁で頂く至高のお茶漬け!
~地の食材にこだわった新しいお茶の活かし方~
今回のイベントのトータルコーディネイターでありサーマルの朝食の監修もしているサ飯スタイリスト内田奈々さん(都内の会員制料理店のオーナーシェフ)が作ったサ飯ならぬ茶飯(ちゃめし)はその名の通り、お茶漬けだ。奈々さんの料理の特徴はまずはその色使いにある。テーブルに運ばれてきた瞬間に「美味しそう」と脳が反応するのだ。真っ白のご飯の上には赤い金目鯛、その横にはこれまた真っ白の釜揚げしらす、そして味変用にと黄色の卵黄の醤油漬けが添えてある。そして特筆すべきは、お米も含めて魚、卵もすべて静岡産ということだ。
静岡のサウナ温浴施設で静岡産の物を頂く。これこそが地域の特性を活かし、その土地の生産者の環境を整え、魅力ある地域づくりの要となる形だ。それがこの小さな一杯のお茶碗の上で実現していた。
いくつものサウナを体験し、もうお腹はグーグーだ。そんな最高のタイミングで料理が提供された。今回のポイントとなる出汁は、料亭などで供される羅臼昆布に血合を抜いたカツオの上品な出汁に玉露の旨味を合わせた合わせ出汁とのこと。そして、奈々さん自ら注いでくれる。深い緑色のまるでお茶だ。そして「まずは出汁だけ飲んでみてください」と一言。言われた通り、出汁だけを口にすると・・・
かすかに香る上品なカツオ出汁にしっかりとした玉露の旨味が絶妙なバランスで舌の上に広がった。つまり、ちゃんとお茶の味がするのに、出汁の味もするのだ。
「う、うま・・・」みんなの口から思わず言葉が出る。まだ出汁だけなのに。
そこからはもう箸が止まらない。ほとんどレアだがあぶられた皮目がパリッとした金目鯛は、味を決める塩加減も出汁とのバランスがしっかり計算されていて控えめながら美味い。サウナ後の鋭敏な舌の具合まで熟知した奈々さんならではの味付けだ。
安藤農園産の米はサーマルの朝ご飯の定番だが、出汁に浸っていても粒立ちがよく舌の上をすべっていく食感までも楽しい。あっと言う間に半分まで食べてしまった。おかわりをできないことを知りながら、このまま食べきってしまいたくなる。いや、待て。まだ卵黄が残っているじゃないか。泣く泣く箸を止め、卵黄の醤油漬けをごはんの上へ余すことなくかける。すると、まるで温泉卵のように卵黄が程よく固まっていた。そこに薄口醤油が絡んでいる。口にすると、また違った世界が広がった。醤油の上品な甘みと卵黄のコクがご飯かっ込み速度を上げていく。TKC、卵かけ茶漬けだ。こうして楽しみにしていた食事の時間は、あっという間に終わってしまった。今度はお茶漬け以外の【お茶×奈々さん料理】を食べてみたい。誰しもがそう思ったに違いない。
サウナ×お茶!その無限の可能性に期待!
サーマルクライムで過ごした4時間でまさかここまで多様な体験ができるとは思っていなかった。想像をはるかに超えた〝しぞ~か〟体験ができたと思う。
今回のお茶は見本市のように多くのスタイルが紹介されていたが、次回は何かひとつに絞って深化させるのもいいのではないか。そして、料理は奈々さんの手にかかれば無限に広がる可能性がある。今後のコラボに大きな期待を寄せたい。
そしてサウナとお茶のさらなる掛け算を楽しみにしたいと思う。
最後に、サーマルクライムスタジオ富士のオーナーである松永武さん、サーマルで様々な掛け算イベントを企画運営している山田英介さん、主催者のひとりでありいち早くこのイベントをテレビで伝えた静岡第一テレビの白鳥貴久さん、そしてこのイベントに関わったたくさんの方々に惜しみない賛辞を送りたい。本当にありがとうございました!
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