「補完的保護対象者」は借金取りに命を狙われる場合も対象となる?
準難民=「補完的保護対象者」
秋の臨時国会にも提出されるとされている、昨年廃案になった入管法案にある「補完的保護対象者」。その定義からすると、迫害の理由は、難民条約に定める5つの理由(人種、宗教、国籍、政治的意見、特定の社会的集団)以外なら何でも良くなる。
2022年4月10日に公開された上記の寄稿執筆時点では、政府が言っている「難民に準じる者」が「補完的保護対象者」と同じかどうかははっきりしていませんでしたが、4月21日に公開した以下の記事のとおり、本村伸子議員が出入国在留管理庁にヒヤリングしていただいた結果、同じものということがわかりました。
借金取りからの迫害も対象となり得る
そうすると、入管が濫用者として忌み嫌う、借金取りに追われてるとか、不倫相手の夫や妻から殺される、お隣の家との敷地の争い、相続に関する家族間の争い等も「補完的保護対象者」の概念に含まれうることになりますね。
ちなみに、2022年4月21日に衆議院法務委員会で、柳瀬房子さんは以下のとおり述べていました。
そして四番目は、条約上の迫害とは全く異なる内容で難民であると主張する申請者です。
よくある主張としては、借金取りに殺されるという主張や、不倫をして、不倫の相手の夫や妻、また親から殺される、だから自分は難民だという方ですとか、お隣の家との敷地の争い、相続に関する家族間の争いという主張は大変多く見られます。
迫害主体の解釈
先の論座の記事に書いたとおり、「迫害」の主体について、入管は「迫害と申しますのは、一般的には国籍国の国家機関またその政府によって行われるものと解されておりますけれども、我が国における難民認定制度の最近の傾向といたしましては、このように非国家主体による迫害の申立てや、そもそも難民条約上の迫害に該当しないような申立てが相当数に上っているということが言えると思います。」との見解を示しています(2013年10月4日「第6次出入国管理政策懇談会」における妹川難民認定室長発言=15頁)。
ですから、借金取りなどは、理由の部分では排除できませんが、「補完的保護対象者」の要件である「迫害を受けるおそれがあるという十分理由のある恐怖」の方で、迫害主体が国籍国の政府などではないとして、切られる可能性はあります。
けれども、迫害主体についての解釈を、従前通り、原則として国籍国の政府などとするのであれば、国籍国の政府ではなく、ロシア政府から攻撃を受けているウクライナの方々もまた、「迫害…」の要件を充たさないことになってしまいますね。
そこまで覚悟しているのか
迫害主体についての解釈を従来から改め、国籍国政府に限定しないとすると、借金取りなどについても十分認めうることになります。そのような方向で保護を拡大していくのであれば、世界にも類を見ない人道的な対応になるので喜ばしいのですが、出入国在留管理庁はそこまで腹が据わっているのでしょうか。考えていないだけでしょうか。
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