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またまた突っ込みどころ満載 2023年版「ここが知りたい!入管法改正案」その1 「人権を尊重することが必要」を削除した「1 日本の出入国管理制度の概略」について

2023年3月7日、内閣が入管法改定案を閣議決定したことを受け、早々に「そこが知りたい!入管法改正案」をリリースしました。

2021年法案は、今確認したところ、閣議決定が2月19日、「そこが知りたい!入管法改正案」をリリースしたのは3月30日でした。反対の声が予想以上に高まったことを受けて、急遽対応したのでしょうが、今回は、準備万端というところでしょうか。

2021年版には、何度かに分けて、批判を書きました。

https://note.com/koichi_kodama/n/nafba9b5fae59

https://note.com/koichi_kodama/n/n22c4617445c7

https://note.com/koichi_kodama/n/nabd37886abe9

今回の2023年版も突っ込みどころ満載なので、順次、気づいたところを書いていこうと思います。

「1 日本の出入国管理制度の概略」について

「人権を尊重することが必要」を消した?

https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/05_00007.html#midashi01より


まず、「1」として「日本の出入国管理制度の概略」が書かれています。

最初の一文、どこかで読んだことがあるなと思ったら、2023年2月20日に公表された「現行入管法の課題」の最初の文とフレーズがそっくりでした。

ですが、あれ、どこか違うな。

「現行入管法の課題」より

そう、「現行入管法の課題」で赤字になっている「人権を尊重することが必要」という大事な部分が、今回の「そこが知りたい!入管法改正案」では抜けているのですね。

私は「現行入管法の課題」について、朝日新聞の言論サイト「論座」に書かせてもらいました。

そこで、この記述にも次のとおり触れました。


「現行入管法の課題」、1枚目のスライドの冒頭では、「日本人と外国人が安 全・安心に暮らせる社会を実現するため、外国人への差別・偏見を無くし、人権 を尊重することが必要」とあります。
「人権」概念は、歴史的に見て、市⺠の権利侵害の最大の担い手が国家・公権 力であったことから、国家から市⺠の権利を守るために生まれたものです。「人 権を尊重」しなくてはならないのは、一義的には国家なのです。その国家自身 が、同じスライドの中で、「送還忌避者」や難⺠申請者が危険な存在であるとい うことを強調しており、「外国人への差別・偏見」を招いています。

出入国在留管理庁の方は私の投稿ご覧になって、やばいと思って「そこが知りたい!入管法改正案」では、「人権の尊重」を消したのでしょうか。

「ルール」には国際人権条約もあります

また、「そこが知りたい!」でも「ルール」を守れと繰り返していますが、まずは、日本政府こそ国際人権条約に定められたルールを守るべきというのは、先の「論座」に寄稿したとおりです。

たかだか100年程度の「国際慣習法」

さらに、「そこが知りたい!」には、

その国にとって好ましくない外国人の入国・在留を認めないことは、それぞれの国の主権の問題であり、国際法上の確立した原則として、諸外国でも行われています。

との記述がありますが、阿部浩己「グローバル化する国境管理」(世界法年報37号)42頁には

歴史的・規範的にいえば、国家の国境管理権限は、米連邦裁が説いたように「国際法上認められた格言」であったわけではない。むしろ、19世紀末に至るまで、欧米においては、国内の移動や国民の出国が制限されこそすれ、外国人の受け入れは国力の源泉として大いに歓迎され、外からの入国にはほぼ制限がなかったのが実態である。

とあります。
前にも紹介した昭和32(1957)年6月19日最高裁判決に付された小林俊三裁判官、入江俊郎裁判官も以下のとおり意見を述べています。

多数意見のように旧来の「国際慣習法上」という前提によりたやすく外国人の入国を憲法の保障外に置くことは、新しき理想を盛つたわが憲法の基本的原理を全く無視するものといわなければなるまい。

「私たちは、みな裸のままで生まれてくる。それをこちら側と、あちら側で区別するものは、人間が頭の中で作った境界(ボーダー)に過ぎない」(佐々涼子「ボーダー 移民と難民」より)

今の国際慣習法は、別に過去未来永遠に続く絶対の真理なのではないのです。そのうち、なくなるよ。下らないルールがあったんだな、昔は、と言われる時代が来ると思います。

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