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hippo!

hippo=hippopoptamus=カバ(河馬)。

タンザニアのセレンゲティ国立公園(ナショナルリザーブ)で、初めて野生のカバを見た。

とりあえず巨大である。このあたりの野生動物の中で最もアブナイやつはこいつなので近づくなと、皆が口を揃える。

草食動物でおとなしい・・・などというのは典型的な机上の古い知識。何かの拍子に暴走すると、その巨大さを遺憾なく発揮し踏み潰されてしまうので、とにかく近づきすぎは禁物、との強いお達しであった。

特に子持ちの親カバは気が立っているので、絶対に近づくなという。かなりの親バカなのである(意味不明) 

ライオンの群れがいても、自分の歩くコースを変えずにその中を突っ切るサバンナの勇士マサイも、カバだけは避けて通るらしい。サバンナ版君子危うきに近づかず、の危うきの筆頭格なのだ。

サバンナには乾季と雨季がある。このカバを見たのは「ヒポ・プール」の地名で呼ばれるところで、川があるわけではなく、雨季の雨でできた巨大な水たまり、日本でいうところの「野池」だった。

そこの水がスゴかった。ドロンドロンなのである。濁っているなどとという生やさしいものではない。何かが溶け込んでトロトロこってりと富栄養化している濃厚なw 感じ・・・・・

その何かというのはカバの排出物。

夜、陸に上がって草などを食んだカバは、日中はほぼ水中で過ごす。なので、用を足すのもすべて水中。というわけで、一日何トンもの排出物がヒポ・プールに放出され、溶け込み、微生物の栄養となり分解され、その養分でプランクトンが発生し・・・乾季の強烈な太陽光もあるから、おそらくものすごいスピードで富栄養化が進んでいくのだろう。

日中のカバの行動を見ていると、一見動きがなさそうだが、意外に動き回っている様子だった。時にはケンカをしているのか、水中で激しく巨体をぶつけ合う。その水飛沫は半端ではない。

穿った見方になるかもしれないが、これらのカバの行動は水を動かす"攪拌"の役割を担っているのではあるまいか・・・・・などと現場で考えたことを覚えている。とにかく、カバの群れのおかげで、ヒポ・プールには健全な生態系が確立しているように見えた。

ここでで釣りをしてみたら数十センチのナマズが釣れた。1尾釣れたら、その後は入れ食いに近い状態に・・・・・孤立した野池に魚がどこからやってくるかはともかく、ヒポ・プールには見事な生態系が成立している証しである。

釣れたナマズは友人が長期滞在している大草原の一軒家に持ち帰って、捌いて食べた。味は上々であった。

"自然"を見るという観点で世界のあちこちを巡ってみたが、生態系というのはつくづく不思議なものだと感じさせられることが多い。このヒポ・プールはそんな中でもひときわ強く印象に残っている場所だ。

なぜインパクトが強いかというと、生態学的に見るなら、ヒポ・プールにおけるカバは完璧な絶対的存在、限りなく「神」に近い存在、に見えたからだ。

#写真は 、タンザニアのセレンゲティ・ナショナルリザーブ、ヒポ・プールのカバの群れ  / June, 1983

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