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スタートアップ企業支援者に聞く『イノベーションを興すには』(岡山イノベーションサミットパネルディスカッションレポート②)


(小林)ありがとうございます。ここからパネリストの方にも課題意識とtodoをお伺いしたいです。
(桝野)よろしくお願いします。私、本業はパンツの販売です。イノベーション、イノベーションと言いますが、皆さん同じ格好をしていては無理ですよ笑 

枡野 恵也氏
 株式会社 TOOT 代表取締役社長

変な格好をするのは手段なんです。皆さん、手段と目的を混同されているなと思います。スタートアップは手段だと思っていて、目的は何かということを多くの方に聞いているんですよ。だけど、はっきりと、「これだ」という人は少ないのです。それは、なぜか。「岡山は豊か」だからです。苦労して起業しなくても、豊かに幸せに暮らしていけるんです。現在岡山では、スタートアップの環境を整えることを重点的に取り組んでいますが、それほど岡山に解決すべき課題はあるのでしょうか。この点を皆さんに問いたいです。私が考える目的の一つは、イシューの解決すなわち課題の解決、もう一つは夢を実現することです。岡山をこんな街にしたいんだというのがあれば、そのためにスタートアップが出てくることはあり得ると思います。ただ、そもそも課題があるのでしょうか。先に課題がこないとto doはないではないでしょうか。

(守屋)我々もスタートアップの方に説明する際に、「課題ニーズがないとビジネスとして成り立たない」という話をします。今の話は岡山の課題がないという話はそうかもしれません。


守屋 俊氏
株式会社中国銀行 地方創生SDGs推進部 次長 岡山イノベーションプロジェクト協議会担当


銀行の立場としては、地方創生を進めていかなければならない
と考えています。現状、中国地方にいかに人を増やすかが、我々の主要テーマになっています。人を増やすためのアプローチの一つが起業を増やすことです。ただ、我々が事業を展開する中で、一番課題認識として思っていることは、起業している方への支援体制が脆弱だということです。スタートアップ事業に取り組まれている方々への巻き込み力をもっと発揮していかなければなりません。この課題に対して、中国銀行としてやっていないわけではないですが、結局マンパワーに頼りがちで、繋がった人間同士だけでスタートアップ支援が進んでしまっています。中国銀行として、スタートアップ支援の仕組みがないため、担当者が変わると支援は続かなくなってしまうのです。なので、支援のつながりができないこと、(中国銀行と)繋がらなかった人に対して支援する方法が見つからないことも一つの大きな課題と感じています。
中小企業に対する課題としては、オープンイノベーションをする意義、メリットをしっかりと見せていかなければならないということです。我々も多くの協賛企業の支援のもと、多くのオープンイノベーションプロジェクトを展開しています。協賛いただいた企業に対して、メリットをしっかりと提供することができていないこと、中小企業の方々がスタートアップ企業の方と繋がろうとするインセンティブを持てていないのが今の課題です。
それらに対して今取り組んでいるのが、中銀スタートアップコミュニティです。このコミュニティは、今まで事業に参画した方々が集まる場所になっており、スタートアップ企業と我々を支援している企業とが繋がる箱にしていきたいと考えています。ここに、皆さんが参加することでオープンイノベーションを促す箱になると思っています。

(志水)スタートアップ支援の仕組みや支援組織は多く出ていますが、実際に取り組むプレイヤーが少ないことが根本的な課題と感じています。

志水 武史氏 
国立大学法人岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科 特任准教授 岡山リビングラボ主宰

イノベーションに取り組まなくても、今まで岡山は成り立ったかもしれませんが、我々の子供、孫の世代になった時、今のビジネスモデルのままでやっていけるのかと考えるとどうなのかと思います。今余力があるなら、今イノベーションをやっていかないと、子供や孫の世代になったときに食べていません。なので、地元の中小企業の皆さんにイノベーションに参加して欲しいと思っていますが、正直私の取り組む範囲ではうまくいっていないです。

(山田)課題とto doの二つの観点で話します。私は、SetouchiStartUpsというベンチャーキャピタルをやっています。取り組んだ理由は、瀬戸内地域のスタートアップ企業にお金が回っていないという課題感があったからです。

山田 邦明氏
 Setouchi Startups LLP 共同代表

大前提として、単純にスタートアップ企業が好きで取り組んでいて、特定の国の相手、行政の相手、岡山の相手に対してスタートアップ企業を作りましょうという発想ではありません。僕らは、今ここに課題を感じているスタートアップ企業を支援しようという企業家がいて、その企業家がお金さえあれば成長できるのに、という人に資金を提供しようという目的意識で取り組んでいます。なので、支援者ですが、スタートアップを中心に考えています。スタートアップの人たちが成長していくことを目標としている団体だと思ってください。支援者って一歩ひいているじゃないですか。一歩引いた瞬間にスタートアップとの距離は明確に生まれているのです。自分たちの時間を使って、命をかけて達成したい課題があるという人たちと、支援者の間には熱量に大きな差があるのです。そこで、その熱量の差を埋めにいっています。自分たちが支援者としてサポートしていればいいという立場ではなく、自分たちも当事者の一人であると言える世界になればいいと考えているので、そのような世界になっていないことが課題であると思っています。

(小林)それでは、行政として支援する立場から聞いてみたいと思います。

(二ノ宮)岡山市の創業に関する政策は三本の柱から成っています。地元企業の成長支援、外部から起業家の誘致、創業支援の三本柱です。

二ノ宮 和人氏
 岡山市産業観光局商工部産業政策課 課長代理 ももスタ担当

行政の立場として、これらは市民のために取り組んでいます。産業が盛り上がって経済成長すれば、その利益が地域に還元されて、市民の生活が向上するからです。そこで、経済成長していくために、どんな政策が必要かという観点で仕事をしています。岡山市内の創業支援について、飲食店などのスモールビジネスに関しては、かなり支援環境が整っています。一方で、経済成長に強く寄与するスタートアップ企業の支援に取り組んでいる事例が少ないです。投資として支援するので利益に結びつきにくい。そこで、岡山市としてスタートアップ支援に取り組んでいるのです。スタートアップは複数でてきて、成長する企業も出ています。スタートアップ企業を支援するファンドも出ています。ただ、地元企業に対する巻き込みが弱いのが現状です。地元企業を巻き込んでスタートアップ企業を支援し、結果として地元企業の成長につながるような支援が課題と感じています。これらの問題に対するto doとしては、地元企業の方をターゲットとしたアイデア創出プログラムなど、地元企業の方が行きたくなるようなプログラムを作り、スタートアップコミュニティと融合するようなコミュニティができていければなと思っています。

(坂上)私は、オープンイノベーションのオープンの意味をよく考えた方がいいのではと思っています

坂ノ上 博史氏
 一般社団法人 MASC (倉敷水島航空宇宙産業クラスター研究会) 事務局長

新しいものが出てきたとき、既存の調和を乱され、既存の法律に抵触するなどいろんなことが起こります。そのときに岡山の人たちは耐えられるのだろうか、受け入れることができるのか。我々は試されているのではないかと思っています。

(小林)みなさん、ありがとうございます。1点目の課題とtodoについてお伺いすることができました。後半からはニーズについても議論できればと思います。

次の記事へ続く

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