【開催報告】ドローン実用化の課題とは(ドローンファンド共同創業者大前創希氏講演会④)
イノベーションではワクワク感が大事
(会場から)山本 1点だけ、町長としてお伝えしておきたいことがあります。それは「ワクワク」感が大事だということ。町づくりの観点で考えると、鈴木さんがおっしゃったように、町民が何に困っていているか、地域課題解決を考えるのが根底にあります。田舎の町なので多くの住民は不便を感じている。中には今のままが良いという人もいる。ただ、相対的に町民を見ると、病院がない、買い物が不便、岡山の中心地まで遠い等、暮らしにくいと思っている方が多いので、人口動態のことを考え色々な策を行っている。その中の1つにあるのが、このイノベーションヒルズ構想。そこにはワクワク感をもたらしてくれる種がある。私は、いい意味で皆さんたちイノベーターを利用して、町づくりを行っていきたいと考えているので、どうぞ引き続きよろしくおねがいします。
大前 1つ紹介したい話があります。それは、十数世帯しか住んでいない小さな島で出会ったおばあちゃんの話です。その小さな島は、隣の島まで船が出ていて、おばあちゃんは週に3回船で隣の島に行っていました。3回のうち1回は通院、でもその他2回は買い物でした。おばあちゃんは最初ドローンを見せた時は大きいし羽がうるさいしと懐疑的だった。けれど、買い物をドローンが代わりにすることが出来るという説明をしたら反応が変わった。自分の暮らしがどのくらい変わるのかどうかを具体的に想像できたとき、つまり隣の島に行く週に3回が1回になるんだったらこんな“楽しい、嬉しいことはない”に、変わったんです。これは非常に印象的な出来事で、消費者にとって便利になることが実感、イメージできると、物事は変わっていくのだと強く感じました。この実感には、どのくらいお金を払えるのかも付け加えないといけないとは思いますが。
飛行時間の限界
(会場から) 岩谷 私は米パナソニックに30年ほどいましたが、イノベーションヒルズの個人的応援団として支援しています。いくつか話をしたいのですが、アメリカでテレビを売っていく際に、松下幸之助から消費者と同じ目線で考える事が大事だと言われました。日本で売れているテレビが何故アメリカで売れないのか、その理由は何か。ユーザーが求めているのは、「仕事が終わったあとに、家でフットボールがみたい、ベースボールがみたい」でした。だからそれにあわせた戦略で家電量販店を巻き込みながら行った。 少し話題を変えます。この中でドローンを使ったことがある人はいますか? まだあまりいないですよね。でもね、2020年頃にアメリカに行ったときに、釣りでドローンを飛ばして、魚が跳ねているかどうかをチェックしていました。何が言いたいかというと “実用性“が大事ということです。そして、もう1つ伝えたいのは「日本製」のドローンが市場に出てないことに危機感を持っているということ。みなさんユーザーとしてメーカーのお尻を叩いてください。このままだと日本は太刀打ちできなくなる。ドローンは確実に実用化、当たり前の社会になっていくでしょう。このままでは、いけない、と強く私は思います。
鈴木 ありがとうございます。岩谷さんがおっしゃっていた技術に関わることで、1つ大前さんにお伺いさせてください。ドローンの「バッテリー」が非常に重要だと思うのですが、飛行中にバッテリー交換ができる技術とか、そのあたりはどうなるのでしょうか。
大前 ドローンの場合、バッテリー交換という考え方より、ステーションでの接触充電など「ちょこちょこ充電」が考えられます。また、飛ぶ時間を長くすることができないが、早い時間で急速に充電できたほうが安全設計上良いだろうとされている。バッテリーのエネルギー率を高めていくこと、「ちょこちょこ充電」のできるステーションを多く設定したほうが良いだろうということが議論されています。
小林 これは、初期の電気自動車(EV)であった議論と似ています。充電に要する時間を克服するためにEV車体の下から交換可能なバッテリーを搭載して、都度交換するなんていう技術で多額の資金調達をするも結果的に倒産してしまったイスラエル発のベンチャー企業も以前ありました。克服すべき課題である「ペイロード、電池の寿命、時間」の3つの関係性をどう捉えていくべきか、ヘビードローン、エアモビリティの実用化の中でも語られている状況です。現状は25分の飛行が限界であり、実用の制限がどうしても存在する。これら課題3点の克服に向けた鬩ぎ合いなのだと思います。
もう1つ紹介します。「Society5.0挑戦投資」の投資1件目が二次電池の開発型スタートアップ企業でした。その二次電池(蓄電池)とは何かというと、Cレートが非常に高い電池です。1Cレートとは、電池容量に対し1時間かけて充電または放電することを意味します。例えばリチウムイオン電池は略々1Cレートです。我々が投資したスタートアップの二次電池は、最低20Cレートです。これはリチウムイオン電池で1時間かかる充電が、3分間で済むことになります。また、我々が期待している開発中の二次電池は200Cレートです。すなわち18秒で済むというものです。このレベルになると充電だけでなく放電でも瞬発力が高くなるので、電磁カタパルトの電源として使い、SkyDriveのエアモビリティを上空まで打ち上げて制約あるバッテリーを節約することも考えられます。中に乗っている人がどんな状況かはわかりませんが。このような感覚で繋がっていないように見える分野でも密接に交わる可能性を秘めている、まさにオープンイノベーションだと思いますし、こういった議論からイノベーションが起きていくことだと感じています。
大前 まさに社会実装していく上で、電源周り、高密度なバッテリー、また単純な技術だけではなくメンテンス等サービスの部分まで見据えて動いていく必要がある。10年後がドローン前提社会だったとして、なにが必要になってくるのかを考え、投資先を探し、見極めているところです。
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文責 米村