「スウェーデン式ドッグマッサージ」で愛犬と長く一緒に。ヘルシーな未来をつくるドッグケアのススメ
「楽しくて健康にもいい。ワンちゃんにとってはこれが一番ですよね!」
カラリと爽やかに笑いながらそう語るのは、関直子先生。彼女は茨城県水戸市で、ドッグマッサージ店を構える「ドッグマッサージセラピスト」だ。
関先生が営む『SORA wan』では、さまざまなワンちゃんの身体の悩み・疾患に合わせて、北欧の動物理学療法に基づいた「スウェーデン式ドッグマッサージ」を行っている。
「ペットはかけがえのない家族の一員である」という価値観が浸透した昨今。大切な愛犬と1日でも長く一緒にいたいと願い、熱心にペットケアを取り入れる飼い主は少なくない。
今回は、実際にドッグマッサージセラピストとして活躍している関先生に、スウェーデン式ドッグマッサージの魅力や効果、どんな子におすすめなのかなど、気になるポイントをたっぷり語っていただいた。
スウェーデン式ドッグマッサージとは? 「健康維持」「免疫力アップ」効果も
——まず、「スウェーデン式ドッグマッサージ」について教えてください。
関さん:
簡単に言うと、犬特有の筋肉や骨格を理解したうえで施術するメディカルケアマッサージです。
もともとはスウェーデンの動物療法で使われているアニマルマッサージで、その技術を現地で習得された、安居院 千尋先生によってアジアでも広く認知されるようになりました。実は私も先生から教わったんですよ。
——お話を聞くかぎり、かなり本格的なマッサージなんですね…!
関さん:
解剖学や犬特有の疾患を重視して作られたものなので、ワンちゃんの健康により効果的なものだと思います。
——スウェーデン式ドッグマッサージを行うことで、どんな効果が期待できますか?
関さん:
主に「健康維持」と「免疫力アップ」が期待できます。
マッサージをすることで、筋肉や腱がほぐれて動きがよくなったり、血行促進により排泄がスムーズになったり。
内臓にも働きかけてくれるので、より深い部分にアプローチできます。特に老犬の健康維持におすすめですね。
——身体の外側だけでなく、内側にも効果的なんですね。
関さん:
リンパの循環が改善することで、病気への耐性も強くなるし、ストレスの解消にもつながります。筋肉が温まると身体が動きやすくなるのは、人間もワンちゃんも一緒ですよね。
実は今、当院に20歳のトイプードルちゃんが通ってくれているんです。高齢なのであまり動けないんですが、マッサージを受けてみたら、あるとき施術後に尿がいつもの3倍も出たそうで(笑)。
——3倍はすごいですね! 老犬はどうしても排泄もスムーズにいかないことも増えてきますから、そういった効果があるのは飼い主さんにとっても嬉しいですね。
関さん:
そうですね。飼い主さんもとても喜んでいました。
それから、スウェーデン式ドッグマッサージは、膝疾患などにも効果的なんです。
「完治する!」と断言はできませんが、なかには膝が悪くて獣医さんから「手術が必要」と言われていたのに、マッサージを繰り返すことで手術を回避できた子もいます。そういった効果が出るワンちゃんも多いですよ。
——そんな効果まで。実際にドッグマッサージを受けるとなると、相場はいくらぐらいになるんですか?
関さん:
当院では、はじめてのお客様にはカウンセリングのお時間も含めた30~40分2,200円の体験コースをおすすめしています。
2回目以降は15分2,000円、30分3,000円のコースで受けられます。
——なるほど。ほかに、お店選びのポイントはありますか?
関さん:
まずはイベントなどで、お試しで施術を受けてみるのはいかがでしょうか。今は各地でドッグフェスなどが開催されているので、スウェーデン式ドッグマッサージで出店してるところも見つかると思います。
一度単発で試してみて、効果や先生との相性を見たうえで、お店に通ってほしいですね!
ウチの子にも必要?ドッグマッサージを取り入れるべきタイミングとは
——スウェーデン式ドッグマッサージは、ワンちゃんが何歳くらいのときに取り入れるのがベストでしょうか?
関さん:
やはりシニアに突入したらですね。具体的には7歳くらいになったら、特に健康に問題がなくても一度ぜひ受けてみてほしいです。
ワンちゃんも人間と一緒で、元気なように見えても、知らず知らずのうちに首や肩が凝っているんですよね。
どうしても歩き方の癖や、利き手、利き足があることで歪みが出てきてしまうんです。脚も片方だけが少し太くなったり、硬くなったり。そういった微妙なバランスを調整する必要があるんですよ。
——先生のお店に来られるのもシニア犬が多いのでしょうか?
関さん:
若いワンちゃんもいらっしゃいますよ。割合的には5対5くらいだと思います。
——半々なんですね! 意外です。元気でわんぱく盛りの若いワンちゃんでもドッグマッサージを行うのは効果的なのでしょうか?
関さん:
スウェーデン式ドッグマッサージは、生後半年から施術が可能なんです。ダックスフントみたいに骨格上どうしても腰の疾患が出やすい子や、飼い主さんが心配な子には若いときから取り入れてもらって損はないと思います。
また、若いワンちゃんは“人に慣れる”という意味でも、マッサージを定期的に取り入れるのはいいのではないかと。社会化にも役立ちますし、ゆくゆくシニアになったときもスムーズに施術に入れますから。
若いときは数ヶ月に1回程度のペースで来ていただいて、楽しみながら身体のケアもしていくのがおすすめです。
——逆に、「こんな症状が出たらマッサージを受けてほしい」と思うワンちゃんの異変などはありますか?
関さん:
ケンケンをしはじめたら要注意ですね。
——ケンケン…というと、片足を上げて歩くイメージでしょうか?
関さん:
そうそう! おしっこ以外で片足を上げて歩くのは絶対におかしい状態なので、その兆候は見逃さないでほしいです。
ひょこひょこ歩いている姿を見て「かわいい~!」と思うのではなく、何かしらの異変が起こっていると察知して、早めに病院やマッサージなどでケアしてあげてください。
——日常的にしっかり愛犬を観察しておくことが大切なんですね。
関さん:
そうですね。健康的なワンちゃんは、筋肉をS字型に動かして歩くんです。だから、腰がしっかり交互に振れていないワンちゃんを見かけると、つい声をかけたくなっちゃいますね。愛犬の散歩に行ってもそこにばっかり目がいってしまって(笑)。
いつも散歩に行っているのに急に歩きたくない素振りを見せるなど、通常と違う動きをしたらまずは病院へ行ってください。そこで獣医さんでもわからなかったら、一度ドッグマッサージを検討してみてほしいです。
——たしかに、ワンちゃんを長年飼っていると分かりますが、“病名がつかない不調”ってたくさんありますよね。
関さん:
たとえば、下痢をしたときにウイルスや風邪が原因であれば、病院で薬を処方してもらうのが適切です。でも気圧の変化による不調には、ドッグマッサージで血流を良くしてあげるのもひとつの治療なんです。
疾患によって治療の方向性は変わってきますから、まずは獣医さんに相談してみてください。
——Instagramを拝見したのですが、最近はリハビリもメニューに取り入れていますよね。
関さん:
そうなんです。最近はリハビリグッズも揃えています。
マッサージで筋肉や血流にアプローチしつつ、リハビリで体幹を鍛えることで、より効果が期待できると考えまして。
具体的には、犬用のバランスボールを使いながら、主に後ろ脚を鍛えることが多いですね。身体の構造上、ワンちゃんは後ろ脚が弱いので、そこを重点的に強化しています。
高齢の子や、手術を行ったあとのワンちゃんに、ぜひ取り組んでもらいたいメニューです。
——術後ケアとしても効果的ということでしょうか?
関さん:
個人的には、手術後は絶対にやったほうがいいと思っています。神経質なワンちゃんだと、完治しているのにメンタル面が原因で、そのまま歩けなくなってしまうケースもあるんですよ。そういった子も、リハビリに取り組むことで徐々に歩く感覚を思い出してもらえますから。
——手術をするとなると飼い主さんもワンちゃん自身も不安でしょうから、こういったケアがあると思うと少し心が軽くなりますね!
関さん:
スウェーデン式ドッグマッサージ以外にも、ツボや呼吸法など、いろいろなアプローチがあります。
たとえば、てんかんの症状が出る子にも効果が期待できる施術があるんですよ。諦めずに一度相談にきてほしいなと思います。
重要なのは“継続”すること。ワンちゃんの不調とうまく付き合っていくために
——今まで施術を受けたワンちゃんのなかで、印象的なエピソードがあったら教えてください。
関さん:
もう4、5年お店に通ってくれているポメラニアンちゃんがいるんですが、その子も膝疾患の悩みを抱えていて。
膝がまっすぐ正面を向いているのが正常なんですが、なかにはガニ股になってしまう子もいるんです。特にポメラニアンみたいに脚が細めのワンちゃんは、だんだんと膝が内側に入ってしまうので、余計に負担がかかるんですね。
その膝を正常な位置に戻すために、飼い主さんがかなり熱心にマッサージに通ってくださっていて、今では少しずつ症状も良くなっています。
飼い主さんにも本当に感謝していただけたので、嬉しかったですね。
——マッサージによってワンちゃんにいい影響が生まれるのを目の当たりにすると、やはり嬉しいですよね。
関さん:
膝疾患については、「完治した」と言い切るのが難しい症状なので、ワンちゃんの症状を見極めながら、うまく付き合っていかなくてはいけないのですが…。
症状が治まっているように見える段階になっても、「じゃあ次は3ヵ月後に診せてね」という形で、定期検診を行うのが大切だと思っています。
ワンちゃんそれぞれの症状に寄り添うお手伝いができたと感じられるのは、この仕事をしている大きな喜びですね。
——なるほど、継続がなにより重要なんですね。
関さん:
人間でも健康診断や歯科検診など、定期メンテナンスをするタイミングがあるじゃないですか。
ワンちゃんは人間と違って自分で病院に行けないので、飼い主さんには愛犬に定期的なメンテナンスを受けさせる意識を持っていただきたいです。
——愛犬を持つ身として気が引き締まります。ちなみに、家でも簡単にできるケア方法はありますか?
関さん:
頭の上から尻尾の付け根までを、20回ほど撫でるだけでも血流の流れが変わってくるのでおすすめです。このとき、必ず頭の上からはじめてくださいね。
——本当にお手軽でいいですね! これなら日常にも取り入れやすそうです。
関さん:
他にも、実際に施術にきていただいたお客様には、ワンちゃんの身体の癖や凝りに合わせた簡単なマッサージをお伝えしています。
簡易的でもしっかりやり込んでいただくことで、次のマッサージで身体に触ったときに変化が如実にあらわれるんですよ。
必要以上に気負う必要はありませんが、日々のちょっとしたふれあいのなかで「そういえばここを揉んどけって言われたな」くらいの気持ちで触ってもらえるといいかなと思います。
ワンちゃん自身に「また来たい」と思ってもらうことが大切。ドッグセラピストとしての流儀
——ドッグマッサージセラピストとして、関先生が大切にしているモットーはありますか?
関さん:
「ワンちゃんに楽しいと思ってもらう」ことですね。まず第一にワンちゃん自身がここに来るのが嬉しい、と思ってもらえるように意識しています。
関さん:
私は、とにかく一緒に遊んでいます。遊びながら隙を見てマッサージをして、また遊んでの繰り返し。
その甲斐あってか、当院が見えた瞬間にテンションが上がって吠えだす子とかも多いそうで(笑)。嬉しいことですね。
——私の愛犬も先生にお世話になっているのですが、たしかに毎回大興奮です(笑)。
関さん:
やっぱり「ここにまた来たい」と思ってもらうのが大切ですよね。スウェーデン式ドッグマッサージには、精神的安定などのメンタルヘルス的な効果も期待できるのですが、何だかんだ「楽しい」という気持ちが芽生えること自体が一番の治療になるんじゃないかと思っています。
なかなか人に慣れなくて遊ぶのが難しい子は、おやつなどをあげて少しずつ信頼を築いていきます。ワンちゃんに安全な場所だと分かってもらうのが最優先なので、すぐにはマッサージに入らないこともあるんですよ。
——ワンちゃんの気持ちを大事にされているんですね。
関さん:
ストレスなくマッサージを継続してもらうのが大切。
楽しくて健康にいい。ワンちゃんにとってはこれが一番ですよね!
——ありがとうございます。「愛犬には1日でも長く健康でいてほしい」という切実な願いを持つ飼い主さんは多いと思います。そういった方に向けて、メッセージをお願いします。
関さん:
病院で適切な治療を受けながら、平行してドッグマッサージなどでケアをしていってもらうというのが理想的です。
やはり、愛犬に何か異変が生じたときにまず行くのは病院ですよね。もちろんそれは正しい行動なんですが、病院で処置する以外のケアも今はどんどん確立されてきています。
ワンちゃんの身体のことで悩んだときの選択肢のひとつとして、ドッグマッサージも覚えておいてもらえると嬉しいですね。
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関先生が運営するドッグマッサージ店『SORA wan』は、9:00~14:30の間で施術の予約が可能。HPの予約専用フォーム、もしくはInstagramのDMから相談できる。初めてマッサージを受けるワンちゃん向けにカウンセリングを含めた体験プランも用意されているから安心だ。
また、愛犬同伴で飼い主のボディケアが受けられるのが嬉しいポイント。留守番が苦手なワンちゃんや目が離せないシニア犬と暮らす方も、愛犬を連れて気兼ねなくマッサージが受けられる。
ワンちゃんの健康により一歩進んだアプローチができるスウェーデン式ドッグマッサージ、愛犬家の方にこそ、ぜひ一度体験してみてほしい。
◆SORA wan
https://sora-wan.com/
◆Instagram
https://www.instagram.com/mito.dogmassage/
〈取材・文=鯉(@koi_ushiroya)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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