母との記憶 (短文バトル444)
印象深い母との思い出は、中学の頃の話。
私の通っていた中学校は妙にスポーツ重視で、クロスカントリー走大会が毎年盛大に行われていた。
当時の私は、逆上がりも出来ないほど運動神経が良くはなく、その上に担任が大会に力を入れており、大会が憂鬱で仕方なかった。
私の母は、私とは逆にスポーツが得意で、大きな大会で入賞した事もあったそうだ。
ある時、私は母にクロスカントリー大会がとても憂鬱だと話したら、その日から母が毎日一緒に練習をしてくれた。
走り方を正してくれたのはもとより、その時言ってくれた言葉がとても印象的だった。
「他人と競うのではなく、自分のコンディションを把握して自分と対話しながら伸ばしていけばいい」
これを聞いた時、心が軽くなった。
自分との競争と思うと、あと少し頑張れそうと思えるようにもなった。
おかげで気持ちを切り替える事ができ、走る事に少し楽しみを覚えられた。
※米光一成さんの表現道場6にて「記憶交換の儀式」で交換した記憶であり、だいぶフィクションです。