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00 白紙
フランス語で、Carte blancheという表現がある。
日本語で言うと白紙委任権という意味になるのだが、これがなかなかの代物だ。
現在インターンをしている会社では、ECサイトのデザイン、コンテンツの作成と、毎週ファッションジャーナリズムの記事を書いているのだが、全てにおいて自分がCarte Blancheを握っている。
どんなデザインでもいい、どんなコンテンツでもいい、何を書いてもいい、そう言われて白い画面の、白い紙の前に座り、手はなかなか動かないものなのだ。
そして今、人生においても自分はCarte Blancheの前で立ち尽くしている。書き始めるのは難しい。
前回何かこうものを書いたのは今年の2月末、それ以来、今はまだ自分の事を話すような大物でもない、いっぺんここらで黙って、目の前のことに取り組んでいこうと思った切り、筆を進めるのを一度止めた。
今この留学がそろそろ一旦の区切りを付けようとしている中で、Carte Blancheを前に、もう一度筆を執ってみてもいいかなと思って書き始めている。
書き始める前に、万全な準備を整える必要はない。なんとなくで書き始めるくらいの方が、力が抜けてていい。タバコを持つ手も、力が入ってはいけない。
それに、文章も人生も、頭で思い描く通りにいくものじゃない。こうじゃない、そうじゃない、そう思いながら、勝手に表象する現実を咀嚼してゆくものだ。
言葉についていえば、1から10まで綺麗に起承転結整っているものよりも、言葉それ自体が紡がれながら思考しているようなものの方が、よっぽど面白い。
そのくらいで、本当にいいんだよなって、熟思う。
さあ、もういっぺん始めるとしますか。