人の心を動かすちから

アルプス福祉会は、無認可の共同作業所の時代から、
重症心身障がいのある方を「なかま」として受け入れてきました。

重症心身障がいとは、
重度の知的障がいと身体障がい(肢体不自由)
のある状態をさします。

「何もできない人」「一方的に支えられているだけの人」という見方が、
わたしたちの社会にはまだあることも、残念ながら現実だと思います。

しかし、かつて松本で、重症心身障がいのある方の
地域生活を考えるシンポジウムが開かれたときのことです 。
シンポジウムのなかで、重症心身障がいのある
お子さんのお母さんが、次の要旨の発言をされました。
 
重い障がいのあるわが子は、
うまくしゃべれないし、
自分で動くことはできません。
だけど大きなちからを持っています。

それは、人の心を動かすちからです。

社会のなかで、重い障がいのあるなかまたちが、
自分の持つちからを発揮すれば、
多くの人々の心を動かし、
人間としての輝きのある人生を送ることができると思います。
 
一人ひとりのなかまが待つ
「人の心を動かすちから」に、
文字通り、心をつき動かされ、励まされ、支えられて、
わたしたちはここまで来ることができたのだと思います。

障がいのある人は、次のように「社会福祉」そのものを変えてきました。


ですから、
障がいのある人は「遅れている」人ではありません。
わたしたちがすすむべき
「先を示す」人であり、まさに「導き手」です。
 

どんな自分と出会いたいか…「あなたを大事するわたし」との出会い

 シンポジウムで発言されたお母さんは、
別の機会に、次の言葉も話してくださいました。
 
「うちの子には、『人のやさしさを引き出すちから』があります」
 
本当にそうだと思いました。
わたしたち支援者は、
なかまたちが持つ「やさしさを引き出すちから」によって、
自分自身のやさしさを体現・表現するからです。
支援者自身のやさしさを、なかまが”引き出して”くれるのです。
 
人が他者にやさしさを発揮することは、
その人が「あなたを大事にするわたし」と出会うことです。
「あなたを大事にするわたし」と出会ったとき、
その人は「わたしであること」がうれしくなります。

このうれしさが、
「かけがえのないわたし」を実感させてくれます。
この実感こそが、
「最も自分らしく生きている」こと、
すなわち、確かな自己実現の証だからです。
 
「あなたを大事にする」とき、
「あなたを大事にするわたし」と出会う
そのとき「わたしであることが」うれしくなる
 
ここに、障がい福祉援助職の
よろこびの尽きない源があるのではないでしょうか。

そしてこの瞬間に、
支援者自身が抱えている
内なる生きづらさの呪縛が解かれるのだと思います。
 

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