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「働く」を支える②ぼかしづくり

前回のnoteでお伝えした薪作業に次いで、アルプス福祉会が長く取り組んでいる作業がぼかしづくりです。
こもれび共同作業所ではじまり、コムハウスでとりくみ、現在は第2コムハウスでとりくんでいます。

「ぼかし」とは

ぼかし(ぼかし肥料)とは、「米ぬかや油かす、鶏糞などの有機質肥料を主な原料とし、それらを微生物により分解、発酵させてつくる肥料」です。

時間をかけて熟成したEMぼかし


ぼかしの原料として用いられる米ぬかや油かす、鶏糞などはそれ自体でも有機質肥料として直接土壌へ施用することができます。が、その後すぐに作物を栽培すると、「施用初期の急速な分解による有機酸の生成や発生したアンモニアガスなどが、発芽や植物の生育を阻害する」ことがあるため、使用前に土などと混ぜて微生物による分解・発酵を行い、急速な分解や肥料の効果を「ぼかす」ことが行われました。

これが、「ぼかし」という名前の由来であるとのことです。

また、アルプスがつくっているぼかしは、米ぬか、もみ殻に糖蜜とEM菌(株式会社EM研究所製造)を混ぜ合わせ、発酵させてつくっていますので、「EMぼかし」が製品の正式名称になります。
※EMとは、「Effective Microorganisms」の略語で、「有用な微生物群」という意味です。

ぼかしづくりのきっかけ

ぼかしづくりをはじめたのは、寿作業所からこもれび共同作業所へと変わった1993年頃でした。ぼかしを使って生ごみをたい肥にする。そのたい肥を使っての農作物をつくり、その作物を人が食べる、そして、生ごみが減る…という循環(リ・サイクル)がつくられます。これが一般的なぼかしの使用法です。

地球環境への関心が高まり、「地球にやさしい」「エコロジー」などの言葉が国内外でひろまり、ごみの減量が社会的な課題になってきたことが、ぼかしの普及の背景にあったのだと思います。
そして、この地域でぼかしを大きく普及しておられたのが、「松本市・消費者の会」のみなさんでした。

当時、職員が消費者の会の方とつながりがあったことをきっかけにして「作業所でぼかしをつくろう!」となり、ぼかしのつくり方は消費者の会のみなさんから直接教わり、なかまたちとつくるようになりました。

※「松本市消費者の会」のみなさんは、その後もわたしたちのぼかしを会員のみなさんにたくさん普及してくださり、販売でも大きく支えてくださいました。また、その後に展開したコムハウス建設、第2コムハウス建設の運動でも、物心両面に応援していただきました。「ぼかし」という製品づくりが、わたしたちに貴重な出会いとつながりをもたらしてくれたことをあらためて思いますし、ここに「はたらく」ことの大事な意味があると感じます。
「松本市消費者の会」は数年前に解散されたことを知りました。これまでのご支援に心より感謝申し上げます。

なかまのとりくみ …作業工程の特徴

ぼかしづくりは、「仕込む(まぜる)⇒ねかせる(熟成、発酵)⇒乾かす(乾燥)⇒詰める(製品化)⇒納める(納品)」の工程で進めます。
なかまのみなさんは、主に仕込み作業で、米ぬか、もみ殻、糖蜜、EM菌を仕込み専用の大きな容器(船と呼んでいます)で混ぜる作業にとりくみます。「混ぜる」工程は“大きな動作”で行うのでとりくみやすいことが、ぼかしづくりがアルプス福祉会だけでなく、他の作業所や養護学校にもひろまっていった理由のひとつだと思います。

底のほうからしっかりと混ぜ込んでいます。


また、製品化の工程で袋入れ、計量、袋のラベル描きで力を発揮するなかまもいますし、納品はなかまで手分けして行っています。

肥料の製造販売は、「肥料取締法」で定められた基準があります。
ぼかしは「特殊肥料」に分類されているため、2020年に長野県に申請し、許可をうけて製造、販売しています。

県より許可証をいただきました。


現在、松本市、安曇野市、山形村の農産物直売所など13店舗でぼかしを取り扱っていただいています。
また、個人のお客様がキロ単位でご注文くださることも度々あります(県外からのお客様もおられました)。

※ぼかし取り扱い13店舗一覧
アルプス市場、北アルプス牧場、コープ安曇野豊科店、JAファームみどりの店、清流の里梓川、とよしな旬彩市、農家の店とまと山形店、畑の彩り館きろろ、ファーマーズガーデン明科・内田・山形・山辺、三郷サラダ市


社会課題の解決と、なかまの仕事おこしを結びつけてごみ減量、リサイクル推進という「社会課題の解決」と、障がいのある方(なかたまち)の「仕事おこし」を結びつけてとりくんできたことが、ぼかしづくりのあゆみです。そのなかで、「消費者の会」のみなさんをはじめとする多くの「ぼかし愛好家」の方々と出会い、つながることができました。
日々、なかまたちがつくる製品は地域をめぐり、新たなつながりをもたらすことは、どの製品にも共通しています。
また、ぼかしづくりをはじめた30年前、「ここのぼかしがいいのよ!」と買い求めてくださった方が度々おられ、その声を励みにして、なかまも職員も一緒にぼかしづくりにとりくんだそうです。このことは、今も昔も変わりません。

常務理事 村松功啓

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