セッション定番曲その16:(Take Me Home,) Country Roads by John Denver
ポップス、カントリー系の楽しいセッション定番曲。セッション曲としてはアレンジの余地があまりないのが、ちょっと微妙ではありますが。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:「知らない単語はだいたい固有名詞」
いきなり土地の名前が出てきます。これを具体的にイメージ出来るかどうかで歌う際の情景が変わってきます。
West Virginia
ウェストバージニア州はバージニア州とは別の州です。アパラチア山脈の中にあり、山岳地が多く主要産業は鉱業(石炭、石灰、岩塩など)。平地が少ないので農業には不向きな土地が多い訳です。南北戦争の際にバージニア州は南軍に、ウェストバージニア地域はバージニア州からの分離独立を選び、ウェストバージニア州となり北軍に属して、早い時期に奴隷制度廃止した土地となったようです。白人比率が9割を越え、肉体労働者が多く、肥満率が高く、人口減少率も高い。大雑把に言うと「景色が良くて、旅行に行くにはいいけど、ずっと住みたいとは思わない土地?」という感じですかね。
「Almost Heaven」と「故郷への郷愁」を歌った曲なんだけどなぁ。
Blue Ridge Mountains, Shenandoah River
ここがちょっと混乱の元で、あちこちのWebサイトにも解説が書かれています。
シェナンドー国立公園/シェナンドー川はバージニア州にあり、ブルーリッジ山脈はアパラチア(山脈)地方の中にある大きな山脈のひとつですが、ウェストバージニア州は通っておらず、州東部から眺めることが出来るという位置関係のようです。つまり舞台としてはバージニア州の方が相応しいはずなのに、わざわざウェストバージニア州を舞台に選んで歌っている、と。ウェストバージニア州の「ご当地ソング」なはずなのにイマイチはまっていない感じ?
原作者のタフィー・ナイバートはワシントンD.C.出身でバージニア州ブルーリッジ山脈へのアクセスは良い場所なので、勘違いとは思えません。ジョン・デンバーの出身地は同じ「田舎」でも全然離れた南西部のニューメキシコ州。だからロッキー山脈について歌うのは自然だけど、ブルーリッジ山脈には行ったことあったのかなぁ?
まぁ、我々に出来るのは風光明媚な山深い景色をイメージしながら歌う、演奏することだけですね。出来れば現地の映像を観てみましょう。
発音的には、テンポもゆっくり目なので、出てくる固有名詞をちゃんと歌えれば難しい箇所は無いかと思います。
ポイント2:山よりは新しいけど、木々よりは古い
Life is old there, older than the trees
Younger than the mountains, growing like a breeze
この地域の暮らしは「山よりは新しいけど、木々よりは古い」と歌っているけど、実際に木々より古いのはもともとこの地に暮らしていたネイティヴアメリカン達ですよねぇ。なんだか白人視点で書かれた歌詞なのかなぁ。米国の本当の原風景って、都合よく書き換えられてしまっていますね。まぁ、カントリー音楽ってそういうことですね。
Country roads, take me home
To the place I belong
田舎で暮らしている人はわざわざ「カントリーロード」とは言わないので、都会で暮らしていて田舎に郷愁を感じている人が「やっぱり自分は田舎の空気が似合うんだ」と歌っているんでしょうね。いい気なもんだ・・・。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」だと。
ポイント3:「moonshine」の味?
Misty taste of moonshine
「月光」という意味の他に「密造酒」という意味もあります。禁酒法時代に盛んになったので「密造」ですが、田舎だと自分の飲む酒を自分で作るのって必要性から生まれたものなので、故郷の思い出の一部なんでしょうかね。日本でも酒税法で、作っても良い酒(果実酒など)は自家消費の範囲に規制されていますよね。質の悪い酒による健康被害は昔から問題になっていたので。
この歌詞はどちらで解釈すべきなのか、意図的にダブルミーティングにしてあるのか、考えるのも面白いですね。「teardrop in my eye」なんで泣いているの、という部分も。
大昔、日本のテレビでも放送されていた「爆発!デューク(The Dukes of Hazzard)」という米国のテレビドラマはこの密造酒を作って運ぶ一味と保安官とのカーチェイスがメインになっているコメディでした。逃げ切らなきゃいけないから改造車に手間を掛けている、と。こっちの舞台はジョージア州の田舎町でした。
爆発!デューク - Wikipedia
ポイント4:登場する女性は誰?
Miner's lady, stranger to blue water
ウェストバージニア州は鉱業が盛んで「Miner」は炭坑夫など地下に潜って鉱物を掘り出す人達です。日本語だと「炭鉱」だけど獲物は石炭だけとは限りません。まぁ、荒っぽい肉体労働者な訳です。その「娘」なのか「恋人」なのか「奥さん」なのか。地元を離れたことがないので「blue water」=海をまだ見たことが無いようです。
そういう素朴な、自然に囲まれて暮らす女性を登場させることで、都会との対比をイメージさせて、自分はそういう素朴さの方が好きなんだ、と歌っているのでしょうね。
ポイント5:どうアレンジするか?
カントリー曲の多くはドバッタンバッタンという「2ビート」で演奏されることが多いですね。この曲もその類ですが、それだとベタ過ぎるので、フォークソングっぽい8ビートで歌われることも多いです。ただそれ以上のアレンジがうまくはまっているのを聴いたことが無い曲でもあります。
ハーモも含めて好きなアレンジはコレ
これもリラックスした感じでいいですね
この気だるい感じは・・・本当は田舎道が嫌なのかな?
なんとかボサノバっぽくしたもの
無理やりジャズにアレンジしたもの
どう料理しても、原曲の埃っぽさが薄れて、どうも異常に脳天気になってしまう気がします。そういう意味での難曲ではあります。あなたならどうアレンジしますか?
■歌詞
Almost Heaven, West Virginia
Blue Ridge Mountains, Shenandoah River
Life is old there, older than the trees
Younger than the mountains, growing like a breeze
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, mountain mama
Take me home, country roads
All my memories gather 'round her
Miner's lady, stranger to blue water
Dark and dusty, painted on the sky
Misty taste of moonshine, teardrop in my eye
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, mountain mama
Take me home, country roads
I hear her voice in the morning hour, she calls me
The radio reminds me of my home far away
Driving down the road, I get a feeling
That I should have been home yesterday, yesterday
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, mountain mama
Take me home, country roads
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, mountain mama
Take me home, country roads