見出し画像

死の谷「シリーズA」資金調達を乗り越えた裏側

今年の7月と9月に、シリーズA 約1.6億円の資金調達を実施しました。
最近は市況も悪く、華やかな大型調達のリリースの裏では、シリーズAを乗り越えられずに会社を畳んだり、ひっそりとゼロ円MAするスタートアップも増えてきているように感じます。

今回はシリーズAをなんとか乗り越えた、その生々しい裏側を書きたいと思います。笑
起業家の資金調達のリアルが少しでも伝われば嬉しいです。


プライベートとの両立に苦戦

まずは簡単に自己紹介。家事代行やベビーシッターの枠を超えたご家庭サポート「きらりライフサポート」を運営する「株式会社ぴんぴんきらり」のCEO喜多尾と申します。
元々は「株式会社ぴんぴんころり」「東京かあさん」という一度聞いたら忘れられないような尖った社名・サービス名でしたが、最近マイルドにリニューアルしました。

さて、いきなり私事で失礼しますが、今年で37歳になります。昨年の夏、不妊治療をスタートしました。
不妊治療といってもピンとこないと思いますが、ホルモンバランスが崩れるので毎日が疲れやすく、まるでずっと生理前のような気分。仕事も思うように進みません。
それに、もし赤ちゃんを授かれば悪阻がスタートして全てが強制終了する可能性も・・・。
刻一刻と老いていくので1ヶ月でも早く! と焦る気持ちもありますが、不妊治療と資金調達の両立は無理だ・・・! そう判断して、治療を一旦ストップし、資金調達に集中することにしました。

期間としては5ヶ月ほどでまとまり、割と順調に思われるかもしれませんが、実際のところは水面下でジタバタと、まるで白鳥のようにもがいました。

一昨年2022年にシリーズA 2億円の資金調達で挫折する

実はシリーズAは一昨年の6月に一度スタートしていたので、私の中では2年間続いていて、ああやっと、長い戦いが終わった・・・という気持ちです。

一昨年は、フォローで出資したいと前向きに言ってくださるVCがありつつも、リード候補が最後の最後で決まりきらず、シリーズAがまとまりませんでした。

順調だと思っていたリード候補にまさかのお断りの連絡が来た日。
たまたま応援団のひとり、イシン株式会社の明石さんや夫など、大勢の人と一緒に、海外に渡航する起業家の送別会をしていました。

リードを取ってくれるだろうと思っていたVCから、メッセージで22時半頃、突如お断りの連絡が来て、(え、え、え・・・?)と大パニック!!!

あの日は、人生で1番お酒飲みましたね。笑

私の期待値が誤っていた可能性もありますが、ショックすぎて浴びるほどお酒を煽り、夫に介抱してもらいながら帰りました。

お店の方、あのとき絡んだ初対面の方、本当にごめんなさい・・・。ショックで荒ぶってました。
(こういうことはメンバーには言わず、たくさん寝てなるべく早く立ち直り、会社では平然としていました。)

ブリッジファイナンスに切り替え

そこからはランウェイとの戦いです。
ベンチャーデットや個人保証付きで借りれるだけ融資に動いたり延命を図るも、ランウェイがあと2ヶ月を切ろうとしたとき。
まだ検討してくれているVCはあるけれど、もしダメだったときどうなる?
このまま粘り続けると、キャッシュショートのリスクが高い!

頭を切り替えて、エンジェル投資家中心に、ブリッジファイナンスをする意思決定をしました。

エンジェル投資家の方中心にアポをとり出資のお願いに周ると・・・
ビックリするほど、トントンと決まっていきました。
VCから資金調達ができず、キャッシュショートしそうで瀕死状況だということも伝えていて、このまま潰れるかもしれないスタートアップだというのに!
「社会意義の高いとても良いサービスだと思う!!応援したい!」と、30分〜1時間のZOOM面談で、500万円、1,000万円の出資を即決してくださる方が続々と現れたんです。
神様、仏様、エンジェル様!救われる想いでした。

エンジェル以外にも、シード期にリードをとってくださったANRIの河野さんもフォローオン出資に尽力してくださったり、社会起業家に出資をされているtalikiさんも新たにご出資いただきました。
なんと、驚くべきことに1ヶ月足らずで約7,000万円が集まりました。

翌年3月、事業会社様など3,500万円追加でご出資いただき、ブリッジファイナンスのつもりが、結果的に1億円以上のpreシリーズAとなりました。

プレスリリース用写真
おふざけイキリ写真
おふざけPART2

このとき出資してくださった皆様、一生、この恩を忘れることはありません。

キャッシュショートギリギリの綱渡り

呑気なことに、事業が伸びてさえいれば、資金調達ができると安易に考えてました。
なぜ、弊社がこんなに資金調達に苦労したかというと、ひとつはComps(類似会社)となる上場会社が時価総額十数億円。という背景があったと思います。
(私や弊社の至らない点や、他にも理由はあると思いますが、Comps問題がなければ、間違いなくここまで苦戦することはなかったと思います。)

Compsになる企業も素晴らしいサービス、素晴らしい会社様なのですが、確かに資本主義の物差しだけで測ると、投資家目線ではうちに出資するのはかなり勇気がいるのも理解できます。

そんなこんなで、2022年年末、給与支払い前日を期日に、無事約7,000万円を着金しました。
ギリギリヒリヒリの綱渡り…なんとか会社は存続できましたが、一部の業務委託メンバーやインターン生達とも泣く泣く契約を終了するなど、無念の年でした。

心を鬼にコストカットでプチ組織崩壊

売上が伸びていてもダメなんだ!と気付き(遅すぎ)
「ガンガンいこうぜ」から「いのちだいじに」モードに切り替え。

販管費を抑えるために、人員整理や安い家賃のオフィスに引っ越し、契約している電話サービスの見直しなど削れることは全てしました。

まず、人員整理の前に、ボードメンバーに資金調達に苦戦してコストカットを実施することを説明しました。
会社が潰れることなど心配せず仕事に集中してほしいのに、資金繰りというCEOとしての大事な仕事ができず迷惑をかけること、本当に情けなさと申し訳なさでいっぱいで、話している途中に涙で言葉が詰まってしまいました。
そんなに大変な状況と思っていなかったメンバーは驚いたかもしれません。
お葬式のような暗い話になってしまいましたが、メンバーは離れるどころか「しばらくお給料減らしてくれてもいい」と言ってくれたり、励ましてくれました。

あのときは、ゾンビのような顔をしていたよ、と応援団のひとり・レオスキャピタルワークスの藤野さんに言われます。笑
社員ではないので正確にはレイオフではありませんが、業務委託メンバーも社員と変わらない気持ちでコミットしてくれているので、こちら都合で契約終了を伝えるのは胸が痛かったです。

支出を抑えて売上を伸ばすのですから、その後、メンバーには大きな負荷をかけてしまったと思います。
チームビルディングのために、リモート中心から週3出社に切り替えました。
翌年上半期は、新卒採用した子など若手の社員がひとり、またひとり・・・と去っていって寂しかったし申し訳なかったです。
(成長に貢献してくれたことは間違いなく今でも感謝しています。)

捨てる神あれば拾う神あり

残ったメンバーは強かった。特に起業初期から一緒に働いているボードメンバーは一枚岩でした。
振り返るとピンチのとき、ボードメンバーの結束がなかったらもっと揺らいでたかもしれないです。

手弁当で手伝うと言ってくれた起業家の友人。
「100万でも良ければ出資しますよ」と言ってくださった業務委託メンバー。
創業直後に出資してくれていてバリュエーションが何十倍にもなっているのに追加出資をしてくれた社外取の加藤伸一郎さん。
多くの人の言葉や行動に助けられました。

はぁ…(ため息)思い出すとまた涙が出てきますね。笑

「オフィスをまだ借りてるなんて贅沢だ!」と言われたり、辛いときは耳が痛い厳しいことを言われることももちろんありますが、それ以上に愛や応援が大きかったです。

昨年1年間は赤字を抑えながらもしっかりと売上を伸ばし、オペレーションを磨きこみました。
若干ノリでやっていた採用も、採用設計のフローをつくり、組織づくりにも力をいれ、昨年1年間で筋肉質な組織になりました。
エコノミクスを改善して、今年からまたアクセルを踏みなおし、資金調達中も成長を止めずにいられました。


今年も、(またリードが決まらず、同じようになってしまうかもしれない。)と一昨年の悪夢が蘇り、不安になるときもありました。
続くお見送りの連絡。「VCからの資金調達は難しいのでは。」と言われたり、たまに落ち込むことがあっても、「絶対にやりきるんだ!!」と自分を鼓舞し走り続けました。

必死に走ってきて、ふと後ろを振り返ると…2年前に比べて社員の数は変わらないのに、売上は3倍近くなっているんです。
そんな組織や事業の成長を評価いただいた結果、以前は断られたVCにも、今回ご出資いただくことができました。

辛かったけど、強くなれたし、絶対に必要な2年間だったんだと思えます。
それに、こんなにも心強い応援団、いや「大応援団!」が築けたことが何よりの財産です。
人間万事塞翁が馬とはこのこと。

豪華!きらり応援団の皆様(株主の方がメイン)とメンバー
先日感謝の気持ちを伝える交流会を実施
挨拶する私を父のように見守ってくださる藤野英人さん
皆様、真剣に話を聞いてくださり一体感が高まりました!

株主の皆様には「しぶとく頑張ったね。」「君はどこでも生きていけるね。」と言っていただきます。笑

会社を経営していると調子が良いときも悪いときもある。
戦場で華々しく活躍することも大事ですが「ピンチのときに死なないで最後まで立ち続けること」も同じくらい大事なのではないかと感じます。

長くなりましたが、振り返りは以上です。

ミッションを一緒に叶えてくれる仲間募集!

今、私は再び不妊治療を再開しながら、新規事業や採用に取り組んでいます。
最近は、心強い仲間もどんどん増えてきています!
また、政府の骨太の方針に「家事支援サービス」の普及が盛り込まれるなど、政策の追い風もあって、やることは盛りだくさん。

新規事業のハウスクリーニング
一緒に働く大好きな仲間


この2年間は大変だったけれど、その分、人の温かさに触れることができました。
「世の中に絶対に必要なサービスだ」と背中を押し応援してくださった方の言葉を胸に

これからも挑戦をし続け ミッションの「笑うは一生」 高齢者が人生最期まで笑顔でいられる社会をつくる。

そんな決意でいっぱいです!


最期まで読んでいただきありがとうございます!
応援いいね!やシェアいただけると嬉しいです。

(CSやマーケティング、CxOなど仲間も募集していますので、お気軽にDMご連絡くださいね!)


いいなと思ったら応援しよう!