見出し画像

<他区事例③>改築ではなく改修!貴重な復興小学校の事例(台東区、港区)

前回前々回と他区の改築(建替)事例を紹介してきましたが、今回は改修(リフォーム)の事例をまとめます。

改修は改築に比べて工期が短く、費用も安く済みます。また、戦前に建てられた学校は歴史的、文化的な価値があることから、積極的に残そうとする動きも見られます。小日向台町小学校も関東大震災後に建てられた復興小学校であることから、改築ではなくて改修できないか?との声は以前から根強くあります。

※小日向台町小学校改築問題の概要はこちら(まずはこの記事をご覧ください)


■台東区

上野、浅草、入谷など下町エリアがある台東区には、古い建築物がたくさん残っています。台東区はこれらの建築物を改築前提で進めるのではなく、できる限り改修で残していこうとしているようです。

復興小学校とは

復興小学校とは、1923年9月1日に東京を中心にして起こった関東大震災によって大災害を受けた小学校を、当時の先端技術だった鉄筋コンクリート造によって再建した小学校を指すものです。震災後から昭和初期までに総数117校が建てられました。小日向台町小学校は、文京区で唯一残っている復興小学校です。

台東区の復興小学校に対する提言

台東区は震災復興小学校の校舎を改修していくことを前提に、審議を重ねています。

そして、「現役小学校及び中小企業振興センターとして本格活用中である3校(黒門小学校、東浅草小学校、旧小島小学校)については、復興小学校の特徴的な意匠も残され、校舎を適切に維持管理した活用が図られています。今後も校舎全体の歴史的価値の維持に引き続き取り組み、校舎の価値をより一層高めていくことが望まれます。」とする提言がまとめられています。

ここで書かれている

「復興小学校の特徴的な意匠」
「歴史的価値の維持」
「校舎の価値を一層高める」

は、小日向台町小学校にも同じことが言えると思います。

台東区はこの提言どおりに復興小学校の黒門小学校、東浅草小学校を改修。さらに他の老朽化が進んでいる校舎も基本的には改修で対応しています。台東区も仮校舎用地の確保が難しいのか自校方式が多いですが、改築ではなく改修の選択により工期が文京区よりも短くなっています。

東浅草小学校(復興小学校)・東浅草こどもクラブ


改築(建替)or改修:改修
自校or他校:自校方式
仮校舎期間:2年7ヶ月、2017年9月〜2022年8月
改築中の対応:校庭内に仮校舎

根岸小学校・ねぎし幼稚園



改築(建替)or改修:改修
自校or他校:自校方式
仮校舎期間:2年2ヶ月、2017年9月〜2022年8月
改築中の対応:校庭内に仮校舎
※小日向台町小学校も隣接したこひなた幼稚園とともに改築が予定されています


■港区

前々回のnoteでも港区の改築事例を上げましたが、今回は改修事例を紹介したいと思います。復興小学校の高輪台小学校は1935年に作られ、約70年後に大規模改修がありました。設計を担当したと思われる建築事務所のサイトには以下のような記述があります。2006年の「日本建築家協会優秀建築選2006」にも選ばれているようです。

歴史的建造物である昭和10年開校の校舎の大規模改修にあたり、1)外観の保存再生、2)内部の新たな空間機能の創造を、コンセプトとした。校舎棟は「制震+在来」方式で耐震補強を行い、新たな教育機能を組み込んだ。新設の地下体育館はサンクンガーデン・「風の塔」を設け自然採光・通風に配慮した。

石本建築事務所(https://www.ishimoto.co.jp/products/312/)

高輪台小学校

改築(建替)or改修:改修
自校or他校:他校方式
仮校舎期間:2年7ヶ月、2002年9月〜2005年3月
改築中の対応:廃校になった中学校(具体的な校名はわかりませんでした)

文京区も事例として検討していた?

実はこの高輪台小学校の工期などは、文京区サイト内にある資料から見つけました。学校改築にあたっての「先行事例による経費等比較」で取り上げられていたのです。
この資料、「改修(高輪台小学校)」「改築(中央区立明正小学校)」が比較され、改修のほうが工期も経費もパフォーマンスが良いのに、なぜ今の文京区の改築前提の進め方になっているのかよくわかりません

まとめ

小日向台町小学校は文京区に唯一残る復興小学校の校舎です。校舎内はかなり老朽化が進んでいますが、ガラス張りの階段室、丸く突き出た踊り場など、当時のモダニズム建築を伝える貴重な建築物です。

小日向台町町会は環境委員会を立ち上げ、小日向台町小学校の改築などをテーマにまちづくりについてのワークショップを行っています。その中で、環境デザイナーの長谷高史氏から、改築ではなく改修を求める文書を公開しています。

文京区はこれまで「改築ありき」で進めてきました。そして貴重な復興小学校である小日向台町小学校でも同じように、住民や保護者になんの説明もなく「改築」が大前提で計画が作られています。

財務省跡地の活用問題とともに、なぜ、改築ありきなのか。文京区内の資料にもあるように、建築物の価値としてだけでなく、改修のほうが工期も経費もパフォーマンスが良いことは区もわかっているのに、なぜなのでしょうか。

改築が悪い、と言っているのではありません。改修よりも改築が優れていると判断した理由の説明を求めています。

いいなと思ったら応援しよう!