三ヶ島製作所「Urban Step-in A」をブロンプトンに
ブロンプトン・バイシクルは、輪行しての観光ポタリングを10倍楽しくするアイテムだというのが私の持論です。このコンセプトからすると、ブロンプトンにビンディングペダルは不要なカスタマイズであるように思われます。一日あたりの走行距離も短く、信号の多い市内をストップ&ゴーしつつのんびり走るのであれば、フラットペダルで十分だと言えるでしょう。
ですが、ブロンプトンのデフォルト状態にはいくつか不満点もありまして、ペダル交換はその不満点を解消するうえでも役にたちます。ここでは、私が現在ブロンプトンに使用している三ヶ島製作所「Urban Step-in A」の特徴を紹介しつつ、ビンディングペダルが役に立つ場面について書かせていただきます。
まずはブロンプトンの通常ペダルから。
縦写真ですみません。上が左ペダル、下が右ペダルです。折りたたんだ時に横幅が小さくなるよう、左ペダルは縦にたたむことができるようになっています。イギリスの職人芸を実感できるペダルですね。
見事な仕事だと感心はするのですが、これが意外に、走る時に曲者となってしまいます。
1点目。ご覧のとおり、左ペダルは厚みがあります。そもそもブロンプトンの純正クランクはクランク長が170mmとかなり長いので、クランクが長い+ペダルが厚い、のダブルコンボで、左に曲がる際に左ペダルが下に来ていると高確率で地面を擦ります。この写真では分かりづらいですが、この左ペダルもそうやって地面と挨拶した関係で、エッジが削れています。
このため、ブロンプトン乗りの公式レース「Brompton Japanese Championship」でも、出走前に「左コーナーリングの際には、左ペダルを上に」するよう指示がだされていました。
自覚して気をつけていれば回避できる問題だとはいえ、走行時の余計なストレスはやはり減らしておきたいもの。こうして薄く小さなペダルに食指が動くようになっていきました。
2点目。このペダルの問題点として、輪行時に内側に倒れ込んでしまいます。輪行袋に入れて背負っていると、いつの間にか内側に倒れ込んだペダルがフレームにガッツリと傷をつけてしまうことがあります。
上がその傷です。ぎゃああああ。
3点目。左右でペダルの大きさが違うと、踏み心地が今ひとつ安定しません。やっぱり両側が同じ大きさのほうが、特に長距離を走る時、ストレスフリーでいられます。
純正ペダルに見られる、以上3点の問題を解決するオプションアイテムとして、「Bromfoot」という左ペダルに取り付けるアクセサリーもあるのですが、ペダル自体を交換したほうが、手っ取り早く根本的な解決になるでしょう。
というわけで、三ヶ島製作所「Urban Step-in A」です。
クランクにはアダプター部分を取り付け、そのアダプターをひねって奥に押し込むと、ワンタッチでペダルが脱着できます。本当に一瞬でペダルの脱着ができるうえ、ペダルを取り外してしまえば、純正左ペダルの折りたたみ時よりもさらに横幅を減らすことができます。
ブロンプトンのコンパクトさを損なわず、片面ビンディング/片面フラットの仕組みを備え、日本製だけあって回転も非常にスムーズと、性能的には文句なしのペダルです(若干お高いですが)。
三ヶ島製作所のこのワンタッチ脱着ペダル「Ezy-Superior」シリーズには、両面フラットペダル、両面ビンディングペダルも販売されています。
ビンディングペダルとして見たときのこのペダルはどうでしょうか。残念ながら、足の固定性能だけ見れば他のビンディングペダルより優れているとは言えません。かといって、使えない、というほどでもないのが評価に困るところで、このあいまいな評価の一因は「クリートの食いつき」にあると感じています。
通常の状態で、このペダルは(サドルにまたがった状態で見て)ビンディング面が手前、フラット面が奥になるように、縦の状態で回転が止まる調整をされています。
このため、ビンディングシューズを使っているときは、つまさきでペダルを前に倒しつつ、クリートを引っ掛けるわけですが、ここの説明にもあるとおり、真上からクリートを押し付けるのではなく、つまさき側の爪を先に引っ掛け、その後にかかとを降ろす、というのがコツになっています。
片面ビンディングではこれが意外にやりづらい。ビンディング面を起こしつつ、そのままつまさきを前に倒しながら、かかとを降ろしてクリートをはめるという一連のテクニカルな動きは、慣れるまで時間がかかります。
ロードバイクをお持ちの方で、ふだんSPDやSPD-SLのペダルを使っている人であればなおさら、この独特な感覚には戸惑うでしょう。
また、このペダルはTIMEのATACクリートと互換性があるとされていますが、素直にペダル購入時についてくる三ヶ島専用のクリートを使ったほうが無難です(2つ穴式のビンディングシューズなら対応しています)。
固定感覚もゆるめです。SPD-SLの装着音が「バチィン!」だとすれば、このペダルのクリート装着音は「ぱちっ」、外す時は「かちゃり」という感じです。クリートがはまっている状態でも、かかとの自由がかなり効くのも特徴です。ふわふわした感じですが、ツーリングで引き足を使う分には十分でしょう。
斜度が10%を超えるようなきつい坂ではあまり効果を実感できませんが、ゆるく続く登り坂を走る時に引き足が使えるのはありがたいです。
また、通常ではギアが重いブロンプトンの走り出しでも、引き足があるとスムーズに発進が可能になります。個人的にはこちらのほうが大きく、走り出しを軽くすることだけでも、ビンディング導入の価値はあると思います(素直にフロントのチェーンリングを小さなものに交換するっていう手もありますけどね)。
以上のような特徴から、このペダルは「ブロンプトンにビンディングペダルを装着したいけど、(1)輪行時に邪魔にならないのがいいなあ(2)レース用のガッツリ固定するビンディングペダルは必要ないなあ」という2つの条件が重なった場合に、大いにオススメできるペダルだと言えます(ニッチだなあ。私もそのニッチな条件を満たす人でしたが)。
なんだかんだ言って、片面ビンディング/片面フラットなのは日常とツーリングの使い分けで整備をし直す必要がなく、汎用性が高いのが嬉しいです。汎用性の高いマシンは専門領域に特化したマシンに劣る部分があるもの、そういうふうに割り切って使うことが重要かと思います。
三ヶ島製作所のEzy-Superiorは本当に優れたワンタッチのペダル脱着システムなので、ビンディングペダルが必要ない方も、ブロンプトンにこのシステムを到着したフラットペダルを装着することを検討してみてはいかがでしょうか。
以上、三ヶ島製作所を応援するダイレクトマーケティングによるカスタマイズ感想記でした。
2014/9/22 追記
使い込んでみての感想追加です。Amazonのレビューに書かれている人もいましたが、クリートの付け外しを繰り返していると、クリートを締め付ける金具の調整ボルトがだんだん緩んできます。緩んだままペダルを踏み込むと異音がするので、時々この調整ボルトを増し締めしてあげてください。使い心地は現在も良好です。