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「おまえの顔がまずい」なんて普通は言わないだろ
ウェブメディアが元プロ野球選手の上原浩治さんに対して、「顔が苦手で好意を持ってなかった」という記事を掲載、上原さん自身も憤りを表明し、炎上した騒動がありました。
発表した側には相手は有名人だし、今は嫌いではないということで許されるという気持ちがあったのかもしれません。だけど、普通は他人に対して「あなたの顔が嫌い」とは言いませんよね。お笑いタレントが、容姿をバカにして笑いを取ることにも厳しい昨今。間違いなく、ハラスメントです。
このニュースを読んだとき、すぐに何かに似ているな、どこかで見た光景だなと思いました。それは「LGBTに対する嫌悪感」を、公の場で表明してしまう人たちのことです。
顔立ちが生理的に受け付けない、ということはあるでしょう。だけどいい大人が、それをわざわざ口に出して言うべきではない。たぶんほとんどの人がそう考えるでしょう。
だけど、LGBTsに対する気持ちの表明になると、途端にそれが許されるかのような風潮が確かに存在します。そこには、性的指向は自分が選択するものであるという誤解が、社会の中に根深くあるのも一因だと思います。
一昔前は「おまえホモじゃないのか」といった問いかけに、「俺はそっちの“趣味”はないから」と答えるような会話は珍しくありませんでした。私のような当事者からすれば、趣味ってなんだよという話です。
LGBTsにも異性愛者と同等、あるいは準ずる社会保障を求めるような話をすると、自分が好きでそういう生き方をしているくせになどという、残念な人は必ずいます。そりゃ、あえて結婚しない男女や子どもを持たない夫婦なんて、そういう人からすれば非国民だろうなと脱力感に襲われてしまいます。
雑誌に「LGBTは生産性がない」とする論文を発表した国会議員がいました。またテレビで、「同性婚は少子化に拍車がかかる」と発言した国会議員や、自治体議員(議員さんの例ばかりでアレですが)がSNSに、「同性愛者は異常動物」と書き込んで批判を受けたこともありました。
これらのほとんどが、上原さんに対する有名人だから許されるだろうという感覚に似て、「自分が好きでやっているのがLGBT」だから許されるだろうといった認識の下に、発言された部分もあるのではないでしょうか。きっとみなさん、普段は良き親であったり上司や仲間であったりする人たちなのだと思います。
生理的にLGBTsを嫌われるのは結構ですが、それを公に表明するのは掛け値なしに失礼でみっともないことだと知ってください。そして、LGBTsに関する社会保障、たとえば同性婚が認められたとしても、当事者以外の人にはそれまでと何ら変わらない日常が続いていくだけです。それによって少子化は進みません。
とは言いながら、LGBTsについてもっと知ることによって、嫌悪感を少しでも解消されるのであればそうなってほしいです。対立したいのではありません。目の前の当事者を色眼鏡なく一人の人間として見ていただけるなら、これほどうれしいことはないと思うのです。
とにかく、LGBTsに対する誤解が多過ぎます。
詳しいことを知りたい方には、『LGBTとハラスメント』(集英社新書)はおすすめの一冊です。