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「ストックビジネス=固定収入」ではない? 新たな視点が広げる可能性~『ストックビジネスの教科書』を読んで考えた不動産屋

「売ることができる」ビジネスとは何か?

最近読んだ本、大竹啓裕『ストックビジネスの教科書 毎月継続的に収益をあげるビジネスのつくりかた』(ポプラ社)がとても良かったです。この中で何が自分にとっていちばんためになったかというと、「ストックビジネス=固定収入」ではないことが理解できた点になります。
 
私はこれまで、自分の会社も固定収入を作らなければならない、あらゆる方法を検討したりかけ算したりして、実際に取り組んでもきました。だから、会員制ビジネスやコンテンツ、オンラインサロンや講座を始める本など、実にたくさんの書籍にも当たってきました。
 
しかしながら、「ストックビジネス=固定収入」ではないという気付きを与えてくれたものは、私が見落としていただけかもしれませんがありませんでした。
 
本書によれば、ストックビジネスの定義はまず、「継続的にお金が入ること」となっています。だから固定収入、これはよくわかります。ただもう一つ、「売ることができる」という点が私にはこれまで無い視点でした。

不動産所有はすべてのストックビジネスのお手本

事業承継・M&Aのことはざっくりわかっているつもりでしたが、たとえば知識やスキルを個人的なノウハウに依存しているビジネスは売ることができません。

本書の中にも例として登場しますが、「カリスマシェフのフランス料理店」。カリスマシェフのAさんが退職するなどして、料理を作らないお店には価値がないわけです。
 
これをストックビジネス化するとしたら、Aさんがつくる料理にできるだけ近い“秘伝のレシピ”を誰でも簡単に作れるようパッケージングして、フランチャイズ展開するなどが考えられるのでしょう。
 
ニュースなどを見ていても、会社丸ごとではなく、事業部門のみを他に売却するという話をよく聞きますが、これはまさにストックビジネスですね。
 
ストックビジネスの例としては、アパート経営があります。アパートは毎月の賃料を生み、いざとなれば売却してお金にかえることもできます。
 
アパートはオーナーが変わったところで、賃借人にとってはそれまでどおりに使用できればよいわけで、本書にもあるように特に無借金で所有する賃貸不動産は究極のストックビジネスといえます。

属人化の排除はストックビジネス化への道

顧問契約や会費の類は固定収入ですが、たとえば税理士一人の個人事務所における顧問契約はありがたい固定収入ではあっても、ストックビジネスと呼ぶには少し心細いように思われます。

もちろん、たくさんの顧問契約をかかえていれば、それを同業者へ引き継ぐ際に当人同士で金銭が発生するということはあるでしょう。
 
しかしながら、ほとんどが中小企業の経営者が顧客となる税理士。特に税理士一人の個人事務所ほど、「この先生だからこそお願いしているのだ」という小規模事業者は少なくないと推察されます。そうなると、ストックビジネスの定義である「売ることができる」は難しいように思います。
 
ピアノ教室の講師などもそうで、ストックビジネス化するには属人化を排除しなければならないのがわかります。ちなみに会社員の給料も固定収入です。

フロントエンドとバックエンドの役割が生む収益の流れ

本書にも登場するストックビジネスに対するフロービジネスとは、一度商品やサービスを売ってしまえばそれで終わりとなるビジネスのことです。ラーメン屋でラーメンを食べたら、おいしいからずっと通うというのは別にしてそこで代金を支払えば関係は終わります。
 
一方で、精密機器メーカーがインクジェットプリンターを売って、その後は購入者がインクやコピー用紙を買い続けてくれればストックビジネスに育ち得るでしょう。

実際に原価割れでインクジェットプリンターを売って、購入者にとってそれを使用する限り避けられない出費の部分で稼ぐという話はよく知られています。
 
ここには、フロントエンドビジネスとバックエンドビジネスという考え方も隠れています。インクジェットプリンターは顧客を囲い込むフロントエンドビジネスで、必ず買い続けなければならないインクやコピー用紙こそがキャッシュポイントたるバックエンドビジネスというわけです。
 
フロントエンドビジネスとは、自分が本当に売りたい商品やサービスの見込み客を得たり、育てたりするためのもので、無料や安価で提供する試供品やセミナーの開催などがそれに当たります。
 
弁護士であれば30分5,500円の法律相談がフロントエンドビジネスで、裁判や債権回収など事件の受任がバックエンドビジネスという感じです。
 
本書を読んで私もこれから出会うあれこれを、「これはどうすることでストックビジネス化できるかな」、という発想で見るくせをつけたいと感じているところです。

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