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はじめての遠くにいて近い存在

数ヶ月前、北海道に住む義理の姉から妻に写真が送られてきた。

「この額のM字かわいいでしょう〜」

妻がそんな事を言いながら、LINEの画像を見せてくれた。

まじ、ちょうかわいい。

遠くにいて、じぶんの飼い猫でもないのに、我が子のように、愛おしい気持ちになった。とにかく、かわいいに尽きる。常に頭の中にいる存在だ。

名前は、『ゆず』

生後数ヶ月の子猫(メス)だ。


はじめての遠くて近かった存在

ゆずが飼われる前、義理の姉の家で長く飼われていた『遊』が去年の暮れに亡くなった。

私と結婚する前の妻が、学生時代に住んでいた家の前で鳴いていた遊を保護して飼い始めた。当時、妻以外の家族が実家に戻ってしまったため、約2年間、妻と遊の1人・1匹・1つ屋根の下生活を経て、妻の上京と合わせて、北海道の義理の姉宅に遊は引き取られた。

10年以上の月日を経て、亡くなる前の遊は、もうおばあちゃんだった。寿命だった。

遊が亡くなって、妻は泣いた。遊の火葬にあわせて、妻は週末、北海道へ単身で飛んでいった。私は、なぜか一緒に行きたくなかった。

妻から遊の死後の姿と骨壷の写真が送られてきてた。遊は、静かに目を閉じて固まっていた。

本当に遊は、もういないんだなぁ。

私は、遊に会った事が一度もない。時々、妻から写真を見せてもらうぐらいだ。遊のかわいい、ふてぶてしい姿、じっとカメラ目線の姿、びっくりしている姿、角度によっては美人だなと思える姿など様々だ。
遠くにいる遊の存在を、写真を通して、あれこれ想像するのがたのしかった。はじめての遠くにいて近い存在だった。妻の思い出話を聞いたせいか、会った事もないのに親近感はあった。

一度も会った事がなかったから、最後に死ぬ前に会いたかったなぁと後悔した。なんで早く会いに行かなかったのか。なんで、こんな気持ちになるのだろう。

猫を飼うということ

ぼくは、猫を飼いたいと思っている。しかも2匹だ。妻と相談して、名前はすでに決めている。黒猫と白猫。毛がふさふさしているのがいい。

人間と比較したら、猫の寿命は短い。たとえ10年そこらでも、たぶん猫にとっては、我々人間が生きる時間と同じくらい長いものなのかもしれない。人の尺度で、猫を見るというのが、そもそもナンセンスだ。

たぶん、僕ら夫婦が死ぬまでに、この2匹は先にこの世からいなくなる可能性が高い。それも覚悟で飼いたいと思っている。猫2匹がきたら、どんな生活になるんだろうと、常々、頭の中でたのしい想像が膨らむ。

猫を通して、じぶんの死生観を考えたりする事がよくある。妻よりも先に死ぬじぶん、妻を看取るじぶん。もしかしたら、交通事故にあって、我々夫婦よりも猫2匹が生き残ってしまうことだってあるかもしれない。

猫とじぶん

Twitterで、他人のカワイイ猫画像を見ると、思わず「いいね」を押してしまう。最近のお気に入りが、じゅうたんに仰向けになって寝転ぶ、ぽっちゃり猫だ。とにかく、ずうずうしくて、カワイイ。

NHKで不定期で放送している「ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。」を見て、作家と猫が静かな空間に一緒にいる空気感、猫の自然体の姿、猫の自分勝手な行動に思わず、笑みが溢れる。

最寄り駅から自宅への帰り道、我が物顔でコンビニの前で、居座っている猫2匹。餌をねだるわけでもなく、ただただ「なんだ君は?」って感じで、こっちを見ている。

漫画「3月のライオン」(著:羽海野チカ)に登場する川本家の猫たちが飼い主や主人公に「ごはんは、まだですか?」と餌をねだったり、撫でて欲しいとお願いする姿。

たぶん、猫は人間に対して何も思っていない。勝手に人が猫の気持ちを考えたり、想像したり、とにかく、自分勝手に創作するのだ。

それがたのしい。もっと言えば、考えているじぶんが好きなんだ。

先日のお盆に実家に帰って、猫についてあれこれ母と話した時に言われた一言。

自由がいいんだね、浩平(私)は」

なんで自由がいいんだろう。まだ答えはわからない。

今わかっているのは、自由にわがままな猫が好き、それがかわいい。好きで憧れている異性や才能ある人間を追いかける気持ちに少し似ている。近づきづらく、でも近づいて触れたい、話したい、関わりたい。

猫への憧れ。猫は自由で、自然体。


『アホになる修行』横尾忠則言葉集 にこういう言葉があった。

猫を見習えば立派なアーティストになれる。自然体で、衝動と本能に従い、常に自由であろうとする。どんな状況に置かれても遊びを忘れない。常に自己中心的で、相手の身になって考えたりしない。

猫には「遊び」という概念すら持っていない自由奔放さがある。

「わがまま」っていうのは単にエゴイスティックにやるっていうことじゃなくて、我のまま、つまり自然体ですよ。


最後に

最近、ゆずの成長や動向について、不定期で、義理の姉から写真や動画が送られてくる。それが、毎回たのしみ。

今度、ゆずに会いに北海道にいこうと思う。

寝落ち

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読んでくれてありがとうございます。
ゆずの写真は、不定期ですが、ぼくのTwitterで投稿しています。

たまになので、機会があれば、ご覧になって見てください。

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上田浩平/コンテンツ編集者
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