北京訪問の雑感
個人的な用事があり、北京に訪問していました。
約6年ぶりの北京はだいぶ変化していたので、感じたことをまとめて共有させていただきます!
生活の中に実装されている宇宙産業
今回、北京ではバス移動が多かったのですが高徳地図(中国国内で使われるGoogle Mapのようなアプリ)を使うと、バスがどこにいて、あと何分で到着するかをバスの現在地と共に正確無比に伝えてくれるため移動が非常に便利でした。
中国の公共交通機関や物流は、「いつ来るのか?」「どこに行くのか?」「本当に遅れるのか?」が全く読めないので、衛星を用いた地図ビジネスは、日々の生活における予測可能性を高めることに貢献しており、生活の様々な場面に活用できそうだと実感しました。
逆に日本の場合は、公共交通機関にしても物流にしても「定刻通り(=極めて高い予測可能性)」を実現しているので、衛星を活用したビジネスは、農業とか規模の大きな産業には活用できそうですが、個人の生活に入り込むかはイメージができませんでした。
EV普及の理由はコスパの良さ
北京市内はバスやタクシーがほぼ全てEVでしたが、肌感覚では全体の3割程度でした。約8割がEV化していた広州や深圳と異なり、ガソリン車が依然として存在感を示しています。
今回も配車アプリを活用したり、商業施設に入ったショールームに行ったり、様々な場面でEV(電気自動車)を見てきました。そこで、EV車が普及した理由の一つに気付かされます。それは、「北京市のナンバープレートが入手困難」という点です。
日本では実感を持ちにくいのですが、北京市に限らず中国の大都市では渋滞緩和のために、時間帯や時期によって、他都市のナンバープレートを付けた車両の乗り入れに制限をかけています。例えば、東京23区内で取得したナンバーでないと混雑する時間帯に23区内に乗り入れができず、他都市のナンバーが乗り入れた場合は罰金を科すと言ったところでしょうか。
ガソリン車の青色ナンバーを手に入れるためには定期的に行われる抽選で当選することや、ナンバー購入費として200万円近くを納める必要があります。一方で、EVである緑色ナンバーは抽選による交付制限がありません。
・厳しい環境規制により工場を撤退させたため、電力供給インフラをEV用に振り分けることができ、充電コストを比較的安価にできた
・補助金だけでなく、市内に乗り入れできるナンバープレートをコスパ良く獲得できる(できた)
・現地でウケの良い近未来的な内装デザイン
上記の三点が中国の大都市でEVが普及し、中華EVが勃興している要因であると仮説を立てています。
総合的な評価で見たときのコスパの良さで中華EVが選ばれているのであって、AIを活用した自動運転技術であったり、高性能な機能やサービスで凌駕したりしているというのは中華EVを大きく見せるための虚像の場合があり、買いかぶりすぎないほうが良い気がしています。
また、第一汽車の最高級モデル「紅旗H9」やアウディ「A8」はガソリン車ですし、高級モデルを購買できる層は既に北京市内の青色ナンバープレートを所有しているので、EVへの需要があるかは未知数です。
まだまだビジネスチャンスが多い中国市場
北京の現地IT企業で働く日本人の友人と話している中で、日本企業の世界での勝ち筋は「モノづくり」だと改めて実感しました。
彼の働くIT産業では大規模な人員削減が進んでおり、新規採用がシビアになっている話を聞きました。中国の大手SNSの小紅書(RED, Instagramみたいなアプリ)で解雇書類を投稿するのが一種のブームになっているそうです。
デフレ基調も相まって、コスパの良いものが非常に人気です。先日、訪れた広州でも「焼肉ライク」、「サイゼリヤ」や「スシロー」で長い行列ができていたり、「無印良品」や「ユニクロ」が新規開店の準備をしていたりします。日本の「モノ」は価格が低くても品質が高いという意味で奇跡の価格不相応を実現しているからウケが良いと言うだけでなく、中国の都市部で幸せな生き方が再定義されている文脈の中で日本の「モノ」が需要される余地があると思いました。
実際、北京で会う人は、日本が持つアイディアや技術や伝統工業を評価しています。航空宇宙産業やAIといった先端産業を極めようとする一方で、ローテク産業(先端産業以外)には資源が投下されないため、品質の向上もイノベーションもなかなか起きず、ローテクを極めることが日本社会の強みになっています。
機械や工業製品に限らず、農作物、加工食品(お菓子や酒造りとか)、アニメ等のコンテンツを含めて、今こそ日本のモノづくり産業を守り、育てる時ではないでしょうか。
日本のモノづくり産業は、市場ニーズを無視したハイスペック信仰や後継者難といったことがありながらも、世界市場で発信していくことで、無限のアップサイドがあります。
そこに多くの人が参画し、作るモノを再定義していけば、長期的には唯一無二の存在となり、世界中で稼ぎ続けられる可能性があります。
モノづくりは地味で、ITほど急な成長は無く、AIほどの華やかさを演出できていません。持久戦が必要な場合が多いのです。
世界的に稀有なレベルの高さ、深さと広さを持つ日本のモノづくり産業こそ、我々が世界で存在感を示す強みとなるのです。慰めでも愛国心の鼓舞でもなく、日本社会が思っている以上の成長産業になる可能性を秘めていると実感しました。
おわりに(社員募集の宣伝)
そんな日本のモノを再定義して発信していきたいとの思いで、2021年3月に創業しました。もはや一人では対応できないくらいの事業規模になっており、PR施策や新規施策を止めながら運営を行っています。
何を目指しているのか、どんなことをするのかをnote別記事にまとめたので是非ご一読いただけると幸いです!
数年後、10年後に向けて多くのことを仕込んでいますので、一緒に咲かせていきましょう!
募集人員は1名だけです。
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