『ミッション:インポッシブル デッド・レコニング パート1』走りながらの原点回帰
『Mission Impossible Dead Reckogning』★★★・。
最終2作へきて、第1作のブライアン・デ・パルマ節を色濃く反映させる原点回帰。
変装マスク使用後の種明かしの演出、プロットのセットアップの長台詞、寄りで頻発する下からの煽りのフレーミング。傾きのある不安定なダッチ・アングルのコンポジションもデ・パルマを彷彿とさせる。
ヘンリー・ツェニー演じるキトリッジを物語に再登場させたのは、前作で殉死したアレック・ボールドウィンに代わる司令塔が必要だったからに違いない。
そこで初作のスタイルやトーンに加え、主人公イーサン・ハントの過去にまで遡る物語の因果関係を描こうとする点で、どの要素も連続性のある発想なのだと理解できる。
仕上がりも良い。ただし、2部構成だからこそ、物語のビートの数が極端に少ないイメージもある。脱線電車からの脱出までにあれほど尺を割くとは…ヨーロッパ高速鉄道を舞台にした第1作とは明確な差別化がなされているとはいえ、シークエンスによっては通例以上に懇切丁寧なのも確かだ。
マクガフィンの効果が何かを最後まで語らず、そもそも使用用途を知ることが目的、という割り切り方はJ・J・エイブラムスの第3作にも通じるところがある。中身を最後まで明かさないのがマクガフィンのマクガフィンたる所以なわけだが、それにしても理屈をオフセットしている感が強い。
後半が控えているだけに、これをパート2でどう展開させていくのか。着地させられないこともないのだろうけれど、ショートしても不思議はない。
走りながらストーリーを考えるチームだからこそ、広げた風呂敷をどう畳められるかが見どころになる。
(鑑賞日:2023年7月12日@池袋シネマサンシャイン)