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『Trolls: Band Together(原題)』イン・シンク世代が確実に浮かれる爆速テンポなファミリー映画

『Trolls: Band Together』★★★・。
 公開:2023年11月17日(北米)
 IMDB | Wikipedia | Rotten Tomatoes

1作目はポップ。2作目はロックにカントリーにと音楽のジャンルを広げ、3作目はイン・シンクやバックストリート・ボーイズなどの90年代ボーイグループ全盛期へのオマージュを捧げる。『トロールズ』は親世代へのウィンクを欠かさない「フォー・クオドラント(全年齢向け)」映画の定型だ。ネタとミームがとにかく豊富。

物語はスピード感に溢れ、展開が次から次へと押し寄せ、カバー曲からジャスティン・ティンバーレイクおよびインシンクの新曲まで、多様なポップソングが常に響き渡る。6歳の娘は集中を切らすことなく鑑賞に没入した。終映後、物語のあらすじを改めて問うと、「主人公たちに兄弟や姉妹がいること」くらいしか呑み込めていなかったようだけれど。

もとより、こうした作品にひねりや変化球は求められていない。なのに工夫のない作品なわけでもない。代わりに押し出されるのは、ビジュアルのエステティックだ。フェルトや髪やダイヤモンドの質感と、絶え間なく切れ味の良いアニメーション。それさえあれば、ひとつひとつのジョークに笑う間さえなくとも気にならない。芸の細かさに感心して、エクセキューションの質の高さを噛み締められる。

旧来のキャラクターたちに加え、新登場のキャラクターたちも、濃い。それにしてもアナ・ケンドリック、ジャスティン・ティンバーレイク、アンドリュー・ラネルズといいカミラ・カベロといい、俳優と歌手の区別がつかないほど歌唱力に長けたキャストが集められている。一方で、勢いとキャラクターで押し切るゾシア・マメット版「9 to 5」にも笑う。

主演の過去のボーイグループの名曲たちまでをフィーチャーし、音楽面のプロデュースにもジャスティンを巻き込んでいるあたり、タレントのコミットも勝ち取るシリーズ作品としては確実に成功しているフランチャイズのようだ。北米では一週間後に公開されたディズニー作品『Wish』にも競り勝ったというから、奮闘ぶりがよくわかる。

$100M弱の制作費に全世界$160M程度の興行収入を上げているとなると、宣伝費も含むと若干厳しい戦いかもしれない。とはいえ、まだ公開2週間なので今後の伸びもあるだろう。2作目の公開がコロナ禍初年度と重なり、家庭でのデジタル配信と劇場との同発で成功を収めた一本でもあるので、もう1, 2作くらいは作られるだろうか。ドリームワークス/NBCユニバーサルとしても実入りはある。

哲学を求めるなら期待に沿えないが、子世代と楽しむなら十分に色彩豊かで、アニメーションならではなこだわりの詰まった一本。なお現時点(2023年12月)では日本公開が決まっていないようだ。

(鑑賞日:2023年12月3日@Regal Irvine Spectrum)

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