『ウィッシュ』:叶える願いはジェネリック
『ウィッシュ』(2023年)★☆・・。
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キャラクター・アニメーションの質が桁違いに高いのは、やはりディズニー・スタッフ達の成せる技。Dream Works AnimationやIllumination作品でも同じように感銘を受けるが、ディズニーのプリンセス系列作品となると等身も高くリグも複雑な分、難易度が高い。それでも生き生きした動きが絶え間なく見られるのには、感じ入るものがある。キレが良い。のみならず、細やか。気持ちが良い。
レンダリングや背景に手描きらしさを盛り込んだヴィジュアルは、流行りに乗るディズニーらしからぬ意外性もある。が、いい意味で目新しい。
しかし物語は驚くほど直線的で、タイトルから得られる以上の広がりがない。願い(=夢)を持ち、叶える業務を独占する事業で国を成した王様(クリス・パイン)に主人公が疑念を持つ、というプレミスはわかりやすい。しかしそこからが困惑する。
「夢」は成年になってから預けるので、主人公アーシャはまだ夢を奪われていない。そんな中、家族思いの主人公は、王様が夢の内容を選別し、都合の悪そうな願いは叶えずに塩漬けにしていることを知る。その不親切に不満を抱き、主人公は親族の願いを本人に返してあげたいと考えるが、案の定却下。その不満を星に向かって歌ったとき、願いを受け止めた星がひとつ、マスコット的なキャラクターになって降臨。その天真爛漫なマスコットに影響されて、主人公アーシャは人々が王様に預けた願いをすべて取り戻そうとする。
戸惑うのは、物事の因果関係の薄さ。願いを預けると願いそのものを忘れる。王ではなく星に願いを伝えると、赤子ほどの知能指数の星が付き人になる。いずれも必然性が希薄。王国の統治方法も、とうに暴かれていて不思議でない欠陥仕様だ。王の動機の背景も明確には描かれないので、物語自体が奇妙な世界観の上で浮いている印象を持つ。
「アナ雪」の立役者でありCCOのジェニファー・リーが筆頭ライターにクレジットされている作品の物語が、これほど脈絡なく単純なことには首を傾げる。極めてジェネリックな、まるで会議室から生み出されたような成果物。企業自体が商売繁盛を願った結果のキメラを想起する。
なおアニメーションが特級な反面、コンポジションや編集は緩さが目立つ。キャストの歌唱力は確実に響くが(アリアナ・デボーズもクリス・パインも、印象的な曲が続く)、数曲は物語自体を前に進めている実感が持てず、ミュージカルのためのミュージカルだと感じる側面も。ピクサーやディズニー・アニメーションが常々たどり着く高みを思うと、本作の至らない面は多い。
大企業となったメディア企業の社是を売り込むプロパガンダ感が強い一本。とはいえ、漠然とでも夢を追い、願いを叶え、希望を持つことの大切さのメッセージを受け取ることで割り切れば、生半な作品を見るよりも得るものはある。6歳を迎えた娘は十分に楽しんでいた。
(鑑賞日:2023年12月9日 @Regal Irvine Spectrum)