【Blend】BlurがリリースしたNFTを担保としたP2P無期限レンディングプロトコル / OpenSeaを更に突き放す一手となるか、、!
おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は「Blend」についてリサーチしました。
Blend とは?
「Blend」は、NFTマーケットプレイス”Blur”が、2023年5月2日にリリースした「NFTを担保としたP2P無期限レンディングプロトコル」です。web3投資企業「Paradigm」のメンバーと共同開発されました。
簡単に言えば、NFTを担保にしてETHを借りれるサービスです。NFTの世界では以前からNFTFiという市場が存在し、NFTを担保に暗号資産を借りるというサービスが存在していました。この仕組みは売却する意思はないNFTの利用用途の増加をもたらし、NFT業界の取引を活発にします。
すでに幾つかの種類のサービスが存在しているのですが、Blurがこの市場に参入してきました。
Blurはその発表の中で住宅ローンを例に出し、住宅の購入には80%の金額がローンで賄われている。逆にローンの仕組みがなれば住宅を購入する人は激減する。NFT業界でも高額なNFTの取引を行うためにはローンの仕組みが必要であると訴えています。
■概要
Blendは「NFTを担保にETHを借りれる」機能です。用途としては2つ存在します。
BORROW:単純に借りる(ex.CryptoPunksを担保に42ETHを借りる)
BUY NOW, PAY LATER(BNPL):借りれる金額の差額分だけ支払い購入する
後者のBNPLは現実世界でもPaidyなどで有名な”後払い”を意味します。BlendのBNPLは買った瞬間に担保に出してETHを借入ができる機能です。
例えば、Azukiの購入金額が15ETH、担保にすれば13ETH借りれるとします。
通常のフロー、「15ETHで購入→担保にして13ETHを借りる」ですが、この場合はそもそも購入する際に15ETHを用意する必要があります。これをBlendのBNPLを活用すると「購入価格15ETH-借入価格13ETHの差額2ETHで購入→後から13ETHを支払い完全な所有権を獲得(13ETHが支払えない場合はその所有権は放棄されます)」というフローになります。これによって、初期で支払うべき金額が15ETHから2ETHへ減額され、NFTの取引がしやすくなります。
現在は、CryptoPunks、Azuki、Miladysの3コレクションに対応しており、今後対応コレクションは増加していく予定です。
■仕組み
NFTFiには幾つかの種類が存在しますが、BlendはNFTfi.comのようなP2Pプロトコルに最も近いモデルです。個人間でお互いに納得した貸出(借入)条件を元に資金の貸し借りが行われます。
しかし、今までのNFTFiと幾つかの異なる点があります。
○オラクルなし
多くのNFTFiのサービスは、インターネット上に存在するオンチェーンやオフチェーンデータを参照して、NFTの担保額・金利・期間を決定します。そのデータ参照の際にオラクルを使用します。
しかし、Blendにはそれがありません。完全にP2P取引の元で実行されます。
○有効期限なし
Blendは返済期間に制限がありません。借り手はどのタイミングで返済することも可能で、貸し手はどのタイミングでも精算を行使できます。ただし、ローンの借り換えオークションにおいて買い手がつかなかった場合に精算が実行されます。
○借り換えオークション
貸し手は精算したいタイミングでそのローンを借り換えオークションにかけます。これはダッチオークションとなっており、落札者がいればその人にローンを引き継げます。
例えば、XさんがAzukiを担保にした「金利10%・10ETH」の貸し出しをしていた際の借り換えオークションだとします。ダッチオークションにかけ、0%金利から徐々に向上していきます。
結果、Azkiを担保にした「金利15%・10ETH」の貸し出しならOKというYさんが現れました。Xさんには今までの利息分+Yさんが新ローンで貸し出す10ETHが支払われ、精算が完了します。そして、新しくYさんがAzukiの担保と利息15%を手にいれる権利をゲットします。
この際、指定の金利まで入札者がいなかった場合も精算が実行され、借り手が10ETH+利息分を支払う必要があります。もし支払いができない場合は担保にしていたAzuki(NFT)が貸し手の手元に渡ります。
○要するに、、
P2Pで貸し借り条件は決定
返済期限はなしだがいつでも精算の借り換えオークションは実行可能
借り換えオークションで別の借り手が見つかる場合は別金利で借入続行
借り換えオークションで別の借り手が見つからない場合はすぐ精算
ということです。
ローンの金利を乗り換えできることで市場原理が働くので、P2P取引でありながら、不当に高いor低い取引をなくすことができます。よって、オラクルの価格参照がなくても正常な取引が実行されることになります。
また、必要最低限の箇所しかオンチェーンに刻まない仕組みであるため、借り手と貸し手の資金効率を向上させます。
■ロイヤリティプログラムとも連携
Blurは少し前にトークンの大規模なエアドロップを実施しました。その施策によってOpenSeaからユーザーを獲得し急成長を果たしました。
そして、$BLURトークンの大規模エアドロップ後の二回目のエアドロップの準備がすでにスタートしています。次なるエアドロップのキーワードは「ロイヤリティ」で、Blur上でのNFTの出品・入札・貸出でポイントが付与され、そのポイントに応じて$BLURトークンがエアドロップされます。
つまり、Blendを積極的に利用すると次のエアドロップで沢山の$BLURトークン貰えますよということですね。
そんなBlendですが、リリースからわずか1日ですでに900を超えるローンが成立し、10,000ETH以上がローンされています。凄まじい勢いですね。
Blurが競合優位性を確保し始めた
ここからはリサーチした感想を書きます。
Blurは相変わらず経営戦略が秀逸だと感じます。
大規模なエアドロップをちらつかせOpenSeaからシェアを一気に奪い去った第一フェーズを経て、「確かに今までの成長は凄かったけど、もうエアドロップしてしまったから(伝家の宝刀を使ってしまった)これからどうなるかな、、」という空気が少しあったように感じます。
OpenSeaもBlurに対抗するサービスをリリースしており、少しずつシェアを盛り返していくのかとも見られていました。
ただ、このBlurの動きを見る感じ、全く手を緩めることなく、圧倒的なNo.1のNFTマーケットプレイスになることを狙っている感覚があります。
まずトークンのエアドロップが数回しか使えない必殺技であることには間違いありません。何度もトークン配布をインセンティブにすることはできません。Blurはその必殺技を最初から全開で出してきたことでシェアを獲得しましたが、シェアを獲得できたということは、同様の作戦を使ってきた競合に奪われる可能性があるということです。
結局、OpenSeaからBlurが短期間でシェアを奪ったことはNFTマーケットプレイスの競合優位性はあまりにも低かったという事実を示すことになりました。商品(NFT)はブロックチェーンに紐づいているので、ユーザーは正直どのマーケットプレイスに出しても良いです。
Blurはこの事実を真摯に受け止めており、次のフェーズで「競合優位性を築く」ことに全力を注いでいます。
僕が思うNFTマーケットプレイスの競合優位性の築き方は大きく2つあります。
UXが最高なプロダクトを作る
トークンなどのロイヤリティプログラムを作る
単純に最高のプロダクトを作るか、どのプロダクトも似たり寄ったりだけどここ使った方がポイントつくからここにしよう!を作り出すか、です。これはNFTマーケットプレイス以外の例えばクレカやQR決済等の既存サービスの競合優位性でも使われています。
正直、現時点でプロダクト(機能)だけで差別化を図ることは難しいです。開発が容易になった時代では、すぐに機能はコピーされてしまうからです。
なので、いかにロイヤリティプログラムを作って、自社経済圏を広げていくのかが勝負になります。なので、Blurはロイヤリティの高い顧客に積極的にトークンを配布していくことを選んでいます。
そして、Blendの狙いはおそらく「大口顧客の定着」にあります。Blurは元々プロのトレーダー向けに作られたマーケットプレイスでした。しかし、OpenSeaでもトレーダー向けのサービスが始まり、機能や手数料が似通ってきてしまいました。
僕は結局、NFTマーケットプレイスの戦争は「いかに大口顧客を捕まえるか」に尽きると感じています。「大口顧客がいる→NFTが売れるのでそこに大口NFTプロジェクトが出品する→サイトのブランディングができる→一般ユーザーも集まってくる→一般NFTプロジェクトも出品する」というサイクルです。
Blendは数十ETHを保有しているか(貸せるETH保有)、CryptoPunksやAzukiを持っている人でなければ利用できません。利用できる人は、他のNFTFiで貸出をしていた人はBlurでやればトークンが貰えるのでこっちでやろうとなります。その結果、Blendが盛り上がり、Blur内でのNFT取引も活発になります。また、Blendを利用した大口顧客にBlurトークンをエアドロップすることで、第二回の大型エアドロップが終わった後もBlurを利用し続けるインセンティブを築きます。
つまり、Blurは
初回のエアドロップでユーザー数の獲得
二回目のエアドロップで競合優位性の確保(特に大口顧客の定着)
を狙っています。
なので、もう2023年中に白黒はっきりつけましょう、くらいの勢いでアクセルを踏んでいると思います。昨年末からNFTマーケットプレイス戦争が始まったと思いきや、たった1年で終戦までたどり着くかもしれません。
引き続き注目してみていきたいと思います!
リサーチ内容が面白いと思った方や勉強になったと思った方はぜひいいねやコメント、SNSでのシェアにご協力いただけると幸いです。ご覧いただき、ありがとうございました!
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