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【INTERVIEW】MELRAWの紡ぐ2020年の夏

シーンを暗躍する音楽宇宙からの使者

 コロナウィルスの影響で世界のあり方がひっくり返ってしまった2020年。"コロナ渦"と呼ばれる今、数多くのアーティストがオンラインの世界で活発に各々の想いを発信している。彼"MELRAW"もそんなコロナ渦中のアーティストの1人だ。
 millennium paradeやAnswer to Rememberのメンバーとしても知られるMELRAWは、最近でも盟友WONKの最新アルバムへの参加をはじめ、米津玄師の話題の楽曲「感電」に自らのホーンセクションを率いて参加。KIRINJIの配信ライブへのゲスト出演などとオーバーグラウンドポピュラーミュージックシーンに登場したかと思えば、ジャズトランペッター黒田卓也の新作ではリミキサーを担当。他にもヒップホップアーティストへのトラック提供などその活動は多岐にわたっている。そんな中リリースされたMELRAWの最新シングル「melty melty feat.kiki vivi lily」についてインタビューを通して紐解いていこう。

緊急事態宣言下、完全ステイホームで制作された楽曲

−今日はよろしくお願いします。早速ですがリリースおめでとうございます。4月の「OBSCURE」ぶりの新作ということですが、いかがですか?

MELRAW:ありがとうございます。いやあ夏曲にしては時間がかかっちゃいましたね(苦笑)。本当は7月中に出そうってキキビビちゃん(kiki vivi lily)とも話をしてたのですが、結局お盆明けのリリースと相成りました。

−今回の楽曲はスタジオに入らずお互いの家でリモートワークをされたということですが、意外とその方が時間がかかってしまったということでしょうか?

MELRAW:そうなんですよね。スタジオに入ってひと思いにに作るんじゃなくてデータを投げ合ったりしながらだったのでその辺のタイムラグとの戦いがリモートによる制作における自分的な課題かなと、、(笑)

−なるほど。それでは楽曲についてなのですが一聴して今までとだいぶ作風が違うなと思ったのですがその辺どのような気持ちの変化があったのでしょう?

MELRAW:気持ちの変化ってほどじゃないんですけどこの曲(melty melty)に関して今までのシングルと明らかに違うのはアルバムを意識してないという点が大きいですね。これまでのシングル曲は後に出るアルバムのテーマに沿っていて、1曲1曲かなり時間をかけて「やっと出せた!」って感じなんですけど、今回のは本当にこの数ヶ月のうちに0から作った曲なので本当に"今"の一番フレッシュな感じですね。

失われた2020年の夏

−楽曲のテーマとしては"失われた2020年の夏"という言葉がプレスにも登場してますね。

MELRAW:はい。僕は四季の中では夏が一番。それに海が大好きで前作(Pilgrim)にも「aquarium.」という曲が入ってて、、まあ水族館なんで直接"夏"や"海"って感じでは無いのですが(笑)。あれも夏休みの暑い日に水族館(名古屋港水族館)の大水槽(黒潮大水槽)の前に佇んでるイメージの曲なんですよね。そうすると地球と繋がるっていう(笑)。

−そんな壮大な話だとは思いませんでした(笑)

MELRAW:まあそんなこんなで夏が大好きなんでね、今年も夏フェスとかでいろいろなところへ行ったり、プライベートでも海行ったりしたかったんですよね。

−それがこのコロナ騒動で実現しなかったと。

MELRAW:そういうことです。それでやっぱりライブが無い分周りのみんなは楽曲制作をし始めて、、。でも自分の場合、これまでのMELRAWの音楽性はフィジカルをとても重要視していて、人に会って一緒に音を出して、その中で生まれる生々しいインタープレイやアンサンブルをレトロフューチャー的なシンセサウンドの中に落とし込むってのがテーマの一つでもあるわけです。そうするとスタジオが閉まり、人が集まることもできない中で自分はどんな曲を作ってやろうか、とそういうことを一から考え始めました。

−シンガーをフィーチャーしようというアイディアはその頃から?

MELRAW:いや、とりあえずDAW(音楽制作ソフト)上でひたすらトラックを作ってましたね。エクササイズみたいな感じで。

−リリースするつもりはなくですか?

MELRAW:そうですね。制作モードの時はとにかく作りまくるスタイルなので、ほんの数小節の断片みたいなものもこういう時にたくさんできますね。そういう断片が後々繋がったり広がったりということも多々あります。またこの緊急事態宣言中はビートメイク系の依頼もいろいろ来ていてひたすらPCに向かい制作をする日々でしたね。

−じゃあそのビートたちもこれから、、。

MELRAW:順次リリースされていくかと思います。まあそれで夏っぽいビートをいくつか作っててその中でこの「melty melty」の下地みたいなマテリアルが出来たんです。んでこれには間違いなくkiki vivi lilyの声だと。

−そこは結構直感なんですね(笑)

MELRAW:僕は割と何でも直感ですねよ。なのでまだ彼女に声をかける前なのに勝手に当て書きで曲を詰めていきました(笑)。

−引き受けてもらえてよかったですね(笑)。

MELRAW:いや本当に。因みに彼女とは自粛期間中にホームセッション動画を制作しまして、こちらはミックスから動画の編集まで担当しています。

−そういえばこれまでのMELRAWさんの楽曲を見てみると女性シンガーばかりがフィーチャリングされていますね。

MELRAW:たしかにケント(WONK)以外はみんな女性ですね。対してラッパーは男性だ。自分でも今気づきました(笑)。自分は人に客演をお願いするときは、声を楽器的に聴いたときの"音色"が第一なので、頭の中で鳴る音が女性の声なんですかね。と言うよりいい声の女性シンガーに出会うことが多いんだと思います(笑)

MELRAWは横着者

−では次に今回の楽曲で特に拘ったポイントを教えてもらえますか?

MELRAW:うーん。まあ強いていうなら「今回は詰め込まないように」というのは常に考えてました。DTMで作ってると出てくるアイディアを全部重ねちゃってどんどん隙間がなくなっちゃうんですよね。でも今回はシンプルにシンプルにと思っていました。

−それはやはり歌の邪魔にならないようにってことですか?

MELRAW:それはもちろんですね。純粋な歌曲にしたかったので。あとはパーカッシブなビート、それこそ今回はスルドを意識したブラジリアン的なリズムが軸になってるんですが、こういうのって隙間が大切なんです。パーカッシブなんだけどフロウするビートのポイントは隙間ですね。まあでも完成後に「MELRAWとしてはもうちょいエグい方がいいんじゃないか」とかいろいろ悩みました。

−結果は、、

MELRAW:お聞きの通り!こういう曲もあっていいじゃん!ってなりました(笑)。それにkiki vivi lilyの歌がとにかく良いのでもう僕は何もしなくていいなってなりましたね(笑)。

−歌の部分は共作ですか?

MELRAW:そうですね。AメロBメロ的な部分は僕が作ったけど、サビは絶対彼女のメロディーがいいなって思ってたのでお願いしました。それで架空の甘ったるい夏(笑)の歌詞をお願いしました。めちゃくちゃキュートですよね。ため息出るくらい。

−かなりキュンとする内容です。

MELRAW:なんかこのご時世だとみんなポジティブなメッセージだったり、勇気付けてくれるものだったり、うまく言えないけどそういうのを発信するんだろうなと思ったんです。けどMELRAWは横着者なんで「あー!夏満喫してー!海いきてー!」みたいな思いがダダ漏れてるわけですよ(笑)。ステイホームで遊びに行けない悔しさですね(笑)。

−どこか漂う寂しさはそういうところからですかね?

MELRAW:そうだと思います。ただただ遊びたいだけ(笑)。

−楽曲の最後に長めのアウトロが付いてますが、これにはどういった思いがあるのでしょうか?

MELRAW:何でしょうねー!そこは聞き手に委ねてもいいかなと思います。「夜になった」でもいいし「夢から覚めた」でもいいし。とにかく僕の曲って底抜けに明るい曲は一曲もないんですよ。昔から作れなくて。今回も根暗なところが滲み出てるかもしれないですね(苦笑)。

−海行きてー!のわりに根暗だと。

MELRAW:はい(笑)

−では最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。

MELRAW:こんな茶番インタビューを最後まで読んでいただいてありがとうございました!ちょっと遅めの夏曲ですがきっと9月も暑いです!そして意外とこの曲は晩夏にも合うんじゃないかと思っているので長く聴いてくれたら嬉しいです!いつか海辺でライブしたいですね!

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(写真/木原 隆裕 文/安藤康平)


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