Vandoren AP2 vs Selmer Cocept!徹底比較してみた🎷
ついに日本国内でも販売が開始されたVandorenのアルトサックス用マウスピース"AP2"。
輸入代理店の野中貿易Webサイトではプロ奏者による絶賛の嵐が吹き荒れていたので早速試してみました!
せっかくなので、お互い意識し合ってると思われる(笑)Selmer コンセプトと比較してみました。
こういう比較記事は少ないと思うので最後までお楽しみいただけますと幸いです。
※めちゃくちゃたくさん試奏させていただきました!ありがとうございました〜!
《全体的な傾向比較》
最近のマウスピースの傾向として、単純比較で
○セルマー→フェイシングは左右均等、テーブルは平面が出ていない個体がほとんど。
○バンドレン→フェイシングは左右で±1,2mmのずれがある個体がほとんど、テーブルは平面が出ている。
という印象です。
どちらもオープニング(開き)は規定値〜+0.1mmぐらいがほとんどになります。
今回のAP2もカタログ値145mmのオープニングは一つもなくて1番狭いので148mm、広いので155mm(もはやAP3)でした。
フェイシングはコンセプトよりも1〜2mmほど短かいです。
セルマーはフェイシングが数値で公開されているのですがバンドレンはミディアム、ショートなどのように記載されており詳細がわからず困っていた方も多いはず(と思いたい)。
バッフルはプロファイルとコンセプトが似たもの同士なので比較すると若干プロファイルの方がローバッフル(バッフルの坂道の部分の容積が多い)なのかなという感覚です。
《実際に吹いてみた感想》
AP2の実際の吹奏感としてはテーブルの平面が出てるので、反応はセルマーよりもダイレクトに感じます。更にフェイシングも若干短いことにより、レスポンス良く感じました。
ここら辺がバンドレンプロファイルは遊び少なめ、セルマーコンセプトは遊び多めに感じる要因にはなってそうです。
個人的に「おっ」と思ったのは、オープニングの広さに対して扱えるリードの番手の幅が広いこと。
狭いオープニングには硬いリード、広いオープニングには柔らかいリードでバランスを取るという考えが一般的ですが、2-1/2でも3-1/2の幅広いリードで試してみた結果、それぞれのリードの個性が出るだけで、明らかなメリット・デメリットやバランスの崩れ等はほぼ感じられませんでした。
また、これはAP3をはじめ他のマウスピースと違うなと思ったのがそのリードやリガチャーの個性がびっくりするほど反映されます。
リード、リガチャーを変えるだけで同じ人が吹いてるとは思えないほど音質、音色、響き方が変化しますね。
ここまでの変化量を他のマウスピースで感じたことはないです。
そして個人的に嬉しいポイントなのですが「音程が変えやすい」。
サックスは音程を上げるとキツい音になりがち、下げると音がぼやけたり音色が損なわれがちですが、AP2はこのようなことは全然なりませんでした。
他のマウスピースよりも口元の変化量が少なくて済む(音程下げる時も口を緩めるなんてほぼ要らず、息の角度をちょっと変えるだけでググッとアシストしてくれます)というのも個人的には大きな魅力です。
何はともあれ、今まで感じたことのないバランス性能の高さでした。
Selmer S90/170と180のように単純にオープニングが違うだけで親戚感がある感覚がAP2、AP3には感じられず、どちらかというとマシンのスペックにこだわったスポーツカータイプのAP2、ラグジュアリーな乗り心地で機能面にこだわった高級車タイプのAP3という印象が強かったです。
野中貿易のプロ奏者による講評で吹きやすい以外に意見の一貫性がないのも頷けます。
《AP2のデメリット》
個人的には完璧すぎるAP2のデメリットをあえて探してみました。
それはズバリ"音質・音色"だと思います。
これはそもそものAP2の音質、音色が悪いという意味ではなく、どんな音色にもなれる(なりやすすぎる)故に自分で音色をちゃんと作っていかないといけないということです。
また、そういう良い音色を判断する耳であったり、道具を選択する知識も必要になるマウスピースです。
そういう意味では初心者や中高生には「吹きやすい」けど「現場で振り回される」マウスピースになりかねないのではないかなと思ったりもしました。
音色の矯正力はコンセプトの方が圧倒的に強いですね。ここが1番の違いかもしれません。
《まとめ》
音域による音質の均一性、安定性、反応の良さといった演奏に大切な基本スペックは現状の量産型クラシックサクソフォンマウスピースでは1番確保されていると感じました。
あとはセッティングですごく音色が変化するので、音色で嫌な印象を持たれた方はリードやリガチャーを変えて試してみると好きになれるんじゃないかなと思います。
《AP2の注意点》
AP2は選定が難しいマウスピースだと感じました。
というのも、個体差の種類が優劣より個性側に偏っていると感じたからです。
メーカーや機種(はたまた楽器の個体差)によって、このAP2①はヤマハには合うけどセルマーには合わない、逆にAP2②はセルマーには合うけどヤマハには合わない、ということが起こり得るマウスピースでした。
そういう意味では選定品が意味をなさない確率高めかもしれません。
選定を依頼する場合は、ご自身のセッティングを選定者にお伝えするということが必要ですね。
こんな感じでAP2を深く掘り下げてみました。
まだ使いはじめて日も浅いため、これから先更なる発見があるかもしれません。
野中貿易さんによるAP2紹介はこちらから!