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熊本市 大西市長 市電延伸5ルートについての説明全文

2024年7月24日の熊本市定例市長記者会見の質疑にて、大西市長から市電延伸5ルートについての説明がありました。示唆に富む内容でしたので文字に起こしました。読みやすくするため字句を若干修正しています。小見出しは私がつけました。


質問

読売新聞の○○です。市電の関係でお伺いしたいのですが、昨日の特別委員会で、市電の延伸について5ルートを検討しますということでしたが、今、市長の思いとして5ルートの延伸についての考え、これを進めていかれるのかどういう思いがあるのかお伺いできればと思います。

回答

過去の検討経緯

令和6年7月23日 地域公共交通に関する特別委員会 資料より

市電の延伸については、過去からずっと検討されていて、5ルートの話も実は新しい話では無く、平成27~28年に前回ルート選定を行ったということを、もう1回、この5つのルートについての考え方を、昨日、委員会の方で当局からお示しさせていただいたということです。

それでまず、あの時の色々な議論の中で、優位性が最も高いというのが、当時自衛隊ルートといいますけども、東町線という今度延伸する予定のルートということで、まずはそこに着手したということが一つの経緯ではあります。ほかにも実は当時、有力と言われたのが南熊本ルートが有力だという風に言われてます。

「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」へ

KAB(熊本朝日放送)「「政令市ワースト」交通渋滞解消へ 熊本県・熊本市トップ会談」

やはり鉄道が通っていないような色々な基幹軸もある中で、公共交通を担う路線をしっかり整備していくということで、多くの住民の移動手段として、非常に高齢化も進んでいく中で、あるいはお子さんやいろんな皆さん方がやっぱり利用しやすい、そして市民の足として非常に今、減便でご不便をおかけしてますけども、こういったことをやっぱりルートも含めて将来的な姿を充実していくことで、先日トップ会談でも知事と合意をしましたけども、自動車の1割削減、そして渋滞を半減させる、そして公共交通の利用を2倍にしていくことに繋がっていくんだろうという風に考えています。

市議会委員会での議論

ですので、そういった一環の中で、今まで検討したことについても、改めて昨日、そういった状況について委員会の方で報告させていただいたということです。

その中で議会でも、渋滞解消効果といったことについいて、色々なご意見もあったように受けておりますので、これからどういう形でそれを進めていくのかについては、議会とも相談をしながら一歩一歩進めていきたいという風に思います。

公共交通網全体の将来像

ただ全体の絵姿として、公共交通網全体の将来像というのをやはり皆さんに見ていただいて、そしてそれを描いて、どういう風になっていけばみんなの移動手段がもっと楽に、あるいは公共交通をもっと乗りやすくすることによって車の利用が減るのかというようなことも、併せてしっかり考えていく。

令和6年7月23日 地域公共交通に関する特別委員会 資料より

社会情勢の変化

そのためには、こういったルートの設定もそうなんですけども、アンケートをしっかり採ったりして、またお話を伺っていきたい。というのが、平成27,28年くらい、ちょうど熊本地震の前の時で、私が就任してすぐこれをやったんですよね。私の当時からのずっとマニフェストにも掲載していましたけども、市電の延伸やルートを充実させるということは私も掲げておりました。ただ熊本地震があり、コロナ禍もあり、そして今TSMC、といろんなことで移動の手段は変わっています。

南熊本ルートにまつわる情勢

例えば南熊本ルートが当時は優位性があるということで検証されてましたが、当時と比較してどう優位性が変わっているのかということも検証してみるとわかると思うんです。例えば豊肥線を今から増強していくということもあります。今度は空港アクセス鉄道を県の方でも計画をされている。今、光の森も含めてTSMC近辺からの利用も増えている。ですからそうしますと、新水前寺駅での市電への乗り換えが非常に多いわけです。ここに乗換が集中しています。

新水前寺電停での積み残し(2024/6/28 8時)

新水前寺の負荷を南熊本に分散

ところが、南熊本で仮に辛島町方面まで延伸が進みますと、新水前寺で乗り換えて市役所前を通過して辛島方面まで行っていた方が、JRで南熊本まで行って乗り換えた方が、アクセスが近いという方もいらっしゃる。ということで、新水前寺駅の負荷が分散できる可能性も出てきます。

例えばそういうことも、今の利用状況と、当時のこれを検討し始めた時の利用状況はやはり変化があるので、これをしっかり検証しながら、そしてできるだけ将来に向けての利便性の向上に繋げていきたいということです。

市電ありきでなく公共交通を充実させ市民を幸せに

昨日の委員会の中でも、別に市電だけの手法じゃ無くてもいいのではないか、という議論もあったという風に聞いております。それはあまり予断を持たずに、ただこういう公共交通の軸のルートを増やしていくということが、非常に皆さんの公共交通の促進に繋がっていって、市民の皆さんの幸せに繋がっていくという風に考えて、これからも積極的に検討していきたいという風に思っています。

所感

前日の特別委員会後の断片的に報道されましたが、そこに至る経緯や狙いがしっかりと補完されたコメントだと感じました。また、3方面5ルートの提案が、3ルートのように誤解を与える表現となっていたのが解消されました(RKKは反省しましょう)。

県市トップ会談にて「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」という共通目標が掲げられたことで、目的・目標がブレず、個々の施策がそれにどの程度寄与するかというバックキャスティングでの評価もしやすくなるでしょう。

ただし、市電の将来について私は以下のような様々な疑問を抱いています。

  • 市電の運行・経営そのものが「非常事態」

  • 延伸ルートの不透明な評価方法(特に渋滞解消、バスからの転換)や選定プロセス

  • 健軍等への結節点整備の停滞

  • 既存バス活用や乗継割引などの代替策、短期策の停滞

  • 利用者数目標の低さ(7%増が長期目標)と、渋滞解消への貢献の無さ

  • 独立採算、人件費カットありきの経営方針

  • 3連接新車導入ペースの遅さ、混雑解消の見通し不透明

  • なし崩し的な減便、速達性の低下

  • バスと連携、整合しない運賃体系

  • 市電以外も含めた公共交通網の具体的な計画の無さ

これまでの経緯や現状を検証しつつ、「公共交通2倍」に向けて、より良い交通網を提案していきます。

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