
グッドエモーション
まだ21歳くらいの話。
埼玉県の北本市という街によく遊びに行ってた。
都内に友達は2人くらいしかいなかったけど、埼玉県には12人くらいは友達がいたからだ。
埼玉に引っ越した方がいいのでは?というくらいに埼玉県に通う毎週末だったと記憶している。
春や秋の気持ち良い時期には運動会やソフトボール大会が地域で開催され、
縁もゆかりも無いが僕もみんなに交ぜてもらって、あれこれ地域のイベントに参加させてもらっていた。

秋のソフトボール大会に参戦し、僕は5番レフトとかを任されていた。
結果として第1試合は点数忘れたけどボロ負け。おまけの親善試合は一点差で敗退。
ボロ負けだった第一試合は置いておいて、
次の親善試合に惜しくも負けたのは実は僕のせいだった。
僕は自分が点をとって勝利し同じチームのかわいい女の子(ちょっと好きだった)の笑顔が見たい!好きって言われたい!という欲望に実は朝から支配されていた。
僕は2塁にいて、チームメイトがレフト方面にヒットを打った。グランドに打球音が鳴り響く。
僕は走った。
そしてボールの行方を確認・把握せずに全速力でホームに突っ込んだ。
すると、あっという間にボールが戻ってきてキャッチャーとサードにはさまれた。
ニッチもサッチもどっちもブルドック!はっ!な状況である。
急いでターン、サードギリギリまでひきつけ、バスケで習得したバックステップでサラリと交わしホームに帰還!
そして、あの子を抱きしめる!
わずかな時間で思い描いたプランである。
しかし普段運動なんぞ全くしないふにゃふにゃ野郎に考えたとおりに体を動かす力なんぞ備わっちゃいなかった。
人工芝で見事に滑りずっこけてアウトという残酷な結末。
みんな僕を責める事はしなかったが、
本当にくやしそうにしていて、あの子を抱きしめるどころではなかった。
思い出しても悔やまれる思い出。
グランドに響く打球音が耳に残っていた。