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【解説】SKAdNetwork4.0のアップデート

こんにちは。Alphaという会社で3D ADという広告配信プラットフォームの運用や営業などビジネスサイド全般を担当をしているキンジョーです。

新しい知識を吸収するだけではなく、アウトプットの機会が欲しいなと思い、noteにまとめていくことにしました。

これから学んだことを少しずつまとめていくので、
年末年始休暇にでも読んでいただけると嬉しいです。

今回はWWDC2022で発表された、SKAdNetwork4.0について以下の内容でお話したいと思います。

SKAdNetworkとは

簡単に言うとAppleが提供するIDFA(広告識別ID)を使わず、アプリ上でのユーザーアクティビティの計測を可能にしたトラッキングツールです。
iOS14.5以降で実装することが必須となったATT(App Tracking Transparency)の影響で、IDFAを取得する際にユーザーの許可を求めることが必要になり、ますます注目が集まっています。

※iOS14.5以前はユーザーが端末の設定で取得拒否をしていなければ、許可を取らずにIDFAの取得が可能でしたが、現在はATTでオプトイン(トラッキングを許可)していないユーザーのIDFAが取得出来ないため、ユーザー情報の取得がますます困難になりました。

ただ、ATTの影響で広告の計測が困難になってもSKAdNetwork(以下SKAN計測)を活用している会社が多くはないと感じています。
それにはSKAN計測が抱えるいくつかの課題が関係しています。

SKAN計測が抱える課題

1. 成果が計測出来る配信先がアプリに限られる

これまでSKAN計測では計測できる配信先はiOSのアプリに限られていました。
多くのアプリ広告がweb面へ配信をしているため計測ができず、web面の計測はMMPで行うしかないことから計測ツールを併用するなどで各社対応していました。

2. MMP計測と併用することで成果の重複がおき、成果の定義の違いにより広告の評価が複雑になる

web面へ出稿した広告経由の成果を計測するためには、MMPの計測を使用するしかないということもあり、各社SKAN計測とMMPを併用することで対応していたのですが、これには弊害があります。

SKAN計測とMMP計測のネットワークを併用している場合、アプリインストールまでに両方のネットワークの広告を経由すると、成果がどちらの計測ツールにも上がりますが、このとき各計測ツールで成果の定義の違いが出てきてしまいます。

MMP計測は各プラットフォーム(SRN媒体と呼ばれるようなbigtech系の媒体)が成果の定義を定めることができます。
そのため、ある媒体は動画の完全視聴でのみビューとみなしたり、ある媒体からは2秒の動画視聴でビューではなく、クリックで成果が送られるなど成果の定義が異なることで同一の指標で広告の評価を行うことが困難でした。

3. LTVの計測が難しかった

SKAN計測ではアクティビティ計測期間を24時間にしていた場合、24時間ユーザーがアプリでアクションを起こさなかったタイミングで成果が一度だけポストバックされ、その後の成果を追うことができませんでした。
これではユーザーのLTVを正確に把握することが難しかったのです。

MMP計測ではユーザーがアプリをインストールしたあと課金等のアクティビティを都度ほぼリアルタイムに計測することができるため、広告の判断基準としてそちらを選択する広告主が多くSKAN計測があまり広まらなかった要因の1つになっていました。

4. 成果が送られてくるまでにタイムラグがある

ユーザーのアクションが24時間なくなったあとSKANからすぐに成果がポストバックされるわけではなく、0-24時間のランダムなタイミングで成果がポストバックされます。
これはプライバシー保護のためにユーザーを特定しにくくするための機能ですが、このポストバックまでのタイムラグにより広告効果の判断がどうしても遅くなってしまいます。
これもまた、アプリプロモーションの効果計測を難しくする要因にもなっていました。

キンジョー作成


このような課題を解決するために、先日発表されたSKAN4.0ではいくつかの新機能が追加されていますので、ご紹介いたします。

SKAdNetwork4.0で追加された機能

1. ポストバックされるまでのアクション計測可能時間が伸びた

これまではユーザーがアクションを起こさなくなってから、24時間が経過した際に一度だけポストバックが送られていましたが、
SKAN4.0からは三度固定のアトリビューションウィンドウで24時間以上のアクションに関するポストバックが行われるようになります。

2. 単一のポストバックから3つのポストバックに

これまで一度きりだったポストバックがSKAN4.0からは三度送られてくることが発表されました。
その説明を少ししたいと思います。
一度目のポストバックは、これまで24時で切れていたタイマーが48時間まで計測出来るようになりました。

Apple Developer

また、これまで0-63の範囲で送られていた細かい粒度のコンバージョン値に加え、低 (low)、中 (medium)、高 (high)の値しかもたない粗い粒度のコンバージョン値のポストバックを送信できるようになっています。
これまではコンバージョンしきい値を満たさない(インストール数が少ないく、ユーザーを特定出来てしまう)と判断されると、データはポストバックされなかったのですが(正確にはnullでポストバックされる)、これまではコンバージョンしきい値満たさないとされていたデータでもユーザーを特定しにくい粗い粒度のポストバックを受け取ることが出来るようになりました。

粗い粒度のコンバージョン値を受け取れるようになると、より多くの情報が得られるようになりますね。

そしてその後、2回目のポストバックでインストールから3日から7日後のユーザーの行動をポストバック、3回目のポストバックで8日から35日後のユーザーの行動をポストバックします。
細かいポストバックは最初の1回のみで、2回目以降のポストバックは粗い粒度の成果またはnullのコンバージョン値のみポストバックされることや、ポストバックの送信準備が整ってからポストバックが送信されるまで24時間から144時間かかり、かつその時間にユーザーがアクティブだった場合にのみポストバックが送信されることに注意が必要です。

ちなみにLockWindowというコンセプトも導入され、上記のタイミングを待たずにロックしたタイミングでより早くポストバックを受け取る設定も可能になっています。
意思決定を早めたい広告主は、48時間よりも前にロックをかけ、ポストバックを受け取るようにするなどの対応ができます。

Apple Developer

3. より詳細なキャンペーンIDのポストバックが送信可能に

上記で細かいコンバージョン値のポストバックと粗いコンバージョン値のポストバックの話をしましたが、
さらにポストバックされるキャンペーンIDについても変更がありました。
これまでは2桁で送られて来ていたキャンペーンIDが4桁で送られてくるようになりました。
これにより詳細な情報を手に入れることができます。
例えば2桁の数字は広告キャンペーンIDを表し、3桁目は場所、4桁目は広告のサイズを表すなど、より詳細なデータを活用した分析が可能になります。

逆にこれまでは2桁のキャンペーンIDに知りたいすべての情報と詰め込まなければならず、どんな情報をキャンペーンIDするべきか、かなり設定の難易度が高かったのです、、

(キャンペーン以外も計測出来るという意味も込めて名称はキャンペーン識別子フィールドからソース識別子に変更になっています)

Apple Developer

4. web面の計測が可能に(Safariのみ)

課題としてお話したように、計測出来る配信先がアプリ面のみだったのですが、今後SKAN4.0でweb面からのインストールも出来るようになる予定です。
web面の計測が出来るようになれば、MMPとの計測ツールの併用が不要になりiOSに限ってはすべての広告媒体の計測をSKANに統一出来るようになるかもしれません。

アプリ配信面のみに広告配信をしたいという広告主はほとんどいないと思いますので、個人的にはこれがかなり大きな機能追加だと思っています。

アプリマーケ担当者としてどう活用するべきか

上記SKAN4.0で出来るようになったことを踏まえて、私達アプリマーケ担当者はどのようにSKANを活用していくべきでしょうか。

ここからは完全に私の意見になります。
まず、現時点でSKAN計測のみでの計測を行うべきかというとそうではないと考えています。
理由は先にお話したような課題を完全に解決した訳ではなく、正確な意思決定を行うには計測出来るデータが不十分だからです。

例えば、SKANでは現状ユーザーがアプリをインストールしてから、最初のポストバックを受け取るまでにロックしていなければ早くても3日かかってしまいます。これでは迅速なマーケティングの意思決定が出来ず特にアプリのリリース直後のタイミングなどでは重大な判断ミスを引き起こしかねません。
また、コンバージョンしきい値を超えなければ、ポストバックがなされなかったり、粗い粒度のデータしか送信されないため正確なユーザーアクションを知ることは出来ない状況です。

アプリマーケ担当者としてプロモーションを成功させるためには、
しばらくは従来どおりのMMP計測を用いながら迅速かつより正確な意思決定を行っていく必要があると思います。
ただ今後ますますユーザー情報は取りにくくなり、SKAN計測を活用しなければならないタイミングがくるのは間違いないと思いますので、きたるタイミングに備えてこれから準備しておく必要があるでしょう。

例えば今から出来ることとして、広告評価はMMPで行いながらも、SKANも併用して計測の精度を把握したりコンバージョン値の設定の最適化などの戦略を立てることができるかと思います。
またSKANから送られてくるコンバージョン値で短期的なLTVから、長期的なLTVを予測する方法などを検証することも有効だと思います。

SKAN計測における戦略を立ててMMPの数値と比べて検証を進めておくことで、各社がSKAN計測を使いはじめたタイミングでスタートダッシュを切れると思います。

また弊社含めweb-to-app計測が出来るようになるタイミングでSKAN計測に対応するネットワークも多いかと思いますので、
そのタイミングで連携が出来るようにするなど、最新の情報を常にキャッチアップし続けることが必要です。

迅速に正しい意思決定をするにはどうするのが最適か常に考え続けたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!
もし何かこのnoteで間違っているところなどあれば、教えていただけると嬉しいです!

それではまた!


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