下垂体神経内分泌腫瘍 PitNET (下垂体腺腫)の分類

病理学的分類の変遷

下垂体腺腫はかつて好酸性、好塩基性、嫌色素性の3つに分類され、それぞれが成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチンの産生細胞として区別された。
その後免疫染色が使用できることになり、その分類は下記の7つに細分化された。

  • somatotroph

  • lactotroph

  • thyrotroph

  • corticotroph

  • gonadotroph

  • null cell

  • plurihormonal and double

さらに細分化したものとしてはこれらを電子顕微鏡的に観察し、densely granulated/ sparsely granulated かに形態学的に分類したものが存在する。

発生学の解析が進歩することで下垂体前葉細胞の発生に関わる転写因子が同定され、これが下垂体神経内分泌腫瘍の分化にも関連することが分かってきた。その転写因子として代表的なものが次の3つである。

  • PIT1 ・・・GH, PRL, TSH系統

  • Tpit ・・・ACTH系統

  • SF1 ・・・LH/ FSH系統

さらにその他の転写因子が関連することにより分化が進んでいく
たとえば・・・

PIT1+ ER ・・・lactotroph PitNET
PIT1+GATA2 ・・・thyrotroph PitNET

こうした分類から WHO2022分類ではPitNETsは下記のように分類された

  • PIT1 lineage

Somatotroph PitNET・・・先端巨大症を呈するPitNETの70%
Mammosomatotroph PitNET・・・PRLとGHの両方を分泌
Lactotroph PitNET・・・PRL
Thyrotroph PitNET・・・TSH
Mature plurihormonal PIT1 lineage PitNET・・・GH, PRL, TSH
Immature PIT-1 lineage PitNET・・・GH, PRL, TSH
Acidphill stem cell PitNET
Mixed somatotroph lactotroph PitNET

  • TPIT lineage

Corticotroph PitNET

  • SF-1 lineage

Gonadotroph PitNET

  • without distinct lineage

Null cell PitNET
Plurihormonal PitNET

  • multiple 

Multiple synchronous PitNET

  • metastatic

Metastatic PitNET

ここまで分類を羅列してみて思うことは、そもそもこの転写因子に基づいた分類は個々の病院の病理診断科において再現できるのか?という問題。
免疫染色までは可能だろうが、もともと電子顕微鏡がどこにでもあるわけではないし、分子遺伝学的診断についても外注でどこまでできるものか。
また、コストの問題もあるので、外注してまで2022分類に基づいた診断に落とし込む必要性がどこまであるのか。こういったことが問題になる。


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