週刊牛乳屋新聞#71(日本はオワコンか?【前編】Japan is shit)
Job is shit!!!(仕事なんてクソだ)という過激な言葉がなぜか人を虜にするブログがかつて存在していました。その名も「ニートの海外就職日記」。
ニート&パチプロ(職歴なし男28歳)から豪州留学、海外就職、シンガポールにて日系から外資系に転職、そんなキャリアを歩んできた人が運営者でした。実際に海外の会社で働いた経験から、日本の労働環境が如何に歪んでいるのかを鋭い切り口で語っていた、大変面白いブログでした。
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当時、留学を控えていた僕は、留学への高揚感と帰国後の未来への不安を抱えており、「日本の労働環境はクソ」というブログの鋭い表現に魅了されていました。そして、それは自分の中で「やっぱりそうだ」と思うことがありました。
実際に上海に行ってから、Job is shitを何度も感じる場面がありました。代表的なのは日本人との飲み会かもしれません。当時、日本人の常住人口がロサンゼルス市(約7万人)を抜いて、上海市は世界最大の約10万人と言われていました。石川県小松市の人口と匹敵します。
日本人社会では、同じ出身地で集まる〇〇県人会、同じ大学のOBOG会や趣味のサークルが数多くあり、飲み会に誘われる何度か機会がありました。現地のクラスメートに行くべきか相談したところ、「在外邦人とは将来のインターンやビジネスに繋がる出会いもあるので行くべきだ」と言われました。実際に中国の人は同郷者や大学のネットワークで自身のキャリアや研究を発展させる文化があります。簡潔に言うと、コネ作りですかね。せっかく留学しているのだから、食わず嫌いは良くないなと思いました。また、「駐在員」に対して、社内の狭き門をくぐった精鋭というイメージがあったので、どんな精鋭と会えるか楽しみになってきました。
しかし、いくつかの飲み会を通してJob is shitが確信に変わりました。全てではありませんが、飲み会は金を払って拷問を受けに行くようなものもありました。男は面白い自己紹介や芸を求められ、女はオッサンの隣でお酌。若い男はオッサンの武勇伝をひたすら聞かされていました。隙あらば若い女子学生をひっかけようとする20代半ば~後半の語学留学サラリーマンがいました。なぜ意気揚々と上海に行ったのに、場末の居酒屋へ迷い込んだのだろう・・・。しかも、「選抜された」駐在員は貧乏学生からも容赦なく参加費を徴収してくる・・・。
次第に、僕の付き合う日本人は路上で烧烤を夜4時くらいまで一緒に食べれるような「世捨て人」になっていきました。現地で働く日本人弁護士、歌手を目指している人、元風俗の黒服等々、個性的な友人と心置きなく楽しめました。ほとんどは今でも連絡を取っているような仲です。
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Job is shitと言っていた僕も大学卒業後は日系企業に就職し、同じ穴のムジナになりました。
基本的に毎日が同じです。日報や会議で報告することが無いので頭を絞って報告事項を考え、誰からもニーズの無い会社本位の商品を無理やり売り込み、売れなかったら上司(課長)に怒られる・・・。課長も部長に怒られ、部長も役員に怒られ、たぶん役員も取締役に怒られ・・・。ストレス発散は金曜と土曜の飲み会、日曜の午後には憂鬱になる。そんな自分の姿を振り返ると、こんな日々が40年以上も続くのは恐怖だなと思うようになりました。
働いてから3年くらい経ち、面白いブログと出会いました。
この記事に対して賛否両論ありますが、中国の社会変化を目の当たりにして何も変わらない日本社会への怒りが多くの共感を呼んだのだと思います。
また、2010年代中葉から訪日観光客数が増加しました。円安傾向や日本好きが理由というよりも、長期的な停滞による物価の相対的下落が要因だと考えています。(比較的経済水準の高い)母国で稼いで、物価の安い国で遊びほうけるのが万国共通の考えだと思います。かつて東南アジアや南アジアへバックパック旅行する日本人もそうでしょう。しかし、今では東南アジアも物価が高くなっており、バンコクのカオサン通りで沈没するためには相応の資金を貯める必要がありそうです。
また、東京、京都、大阪にホステルが多く建設されている様子を見ると、日本こそが安い旅先になっているのかと何度も実感しました。
豊かになっているように見える近隣諸国の人が日本で消費力を発揮する一方、何も変わらない中で日々我慢しながら生きている日本社会に生きる我々。
かつてはプライドを捨て、ギブミーチョコレートと言って明日の活力を貰うような時代もありました。他方で、自分たちよりも貧しいような人々が札束を持って様々なものを買いたたく様子を見ているとプライドを捨ててまでもギブミーとは言えないが、彼ら・彼女らの財布に頼らざるを得ない。そんな気持ちがあるからこそ、「爆買い」という少し蔑んだ表現で自分たちの置かれた状況をごまかそうとしているのかもしれません。
Job is shit!!!は我慢しても経済的な見返りがあれば成立します。一方で、我慢しても我慢しても報われる未来が見えなくなると、Japan is shit!!!になっているような感じがしてきました。そして、気付けば僕も本当にJapan is shit!!!なのではないか?と思うようになっていました。
(続く)
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