週刊牛乳屋新聞#68(僕が見てきた新疆③新疆に住む人々)
ウルムチ到着三日目、僕はウルムチで募集していた2泊3日のツアーに参加してカザフスタンとの国境付近である「カナス湖」に行くことを決めた。ツアーは好きではないし、絶対に良いことは起きないと思っていたので気が乗らない。しかし、交通の手段が限られている辺境の地に格安料金で行くためにはツアーに頼らざるを得ない。仕方ない。
ウルムチからカナス湖までの距離は800kmちょっとなので東京から広島に行くのとほぼ同じ距離である。
カナス湖に行こうと決めたのは、クラスメートにいた新疆人の友人が勧めていたからである。友人は〇〇スタン系の民族の出自であり、顔の堀が深く、名字が漢字四文字である。新疆の話や家族の話をよく紹介してもらった。また、新疆に関しても中国大多数の世論とは異なる見方で語ってくれたのが印象的だった。周囲が認知している「新疆」と友人が語る「新疆」のギャップを確かめたいという思いがあって、新疆に、いやもっと辺境の地へ行こうと決意した。
車は走っても走っても同じ景色が続く。
やっと小高い丘が見えるようになった!と喜んでいたけれど、その喜びもつかの間のことで、小高い丘がいつまでも続く景色になる。つまらないけど、仕方ない。これが大陸というものなのだから。
ただ、同じような景色が続く中にも、モンゴル人の移動式住居(ゲル)を見かけると新しい発見をしたような気持ちになる。「新疆なのにモンゴル民族もいるんだ!」と思うが、それは当然のことか。新疆の版図を決めたのは別の場所にいる別の人であって、移動しながら生活していた彼らにとってはあまり大きな意味を持たないのだろう。
チベット仏教の仏塔(パゴダ)も見かけた。チベット族も様々な場所に移動しながら現地で生活を営んでいる。高原にいる人だけがチベット族ではない。こんな当たり前のことを感じ取れるのも旅の醍醐味。
観光地のお土産屋には金髪のアニキがいた。僕の中国語が漢族の発音ではないことに気付いて、「你是不是韩国人?(韓国人か?)」と言われた。いろいろと話している中で、彼はロシア族だと分かった。「ロシア語話せるの?」と聞いたら、彼はすぐさま話せないと返した。家でも普通語を使って話しているらしい。なぜロシア族なのに家族全員ロシア語を話せず(或いは話さず)、普通語なのだろうか?すごく気になったけど、「あれは〇〇元、これも買えば割り引く」と押し売りがうっとおしくなってきたので、土産屋を立ち去った。
長旅の末にようやくカナス湖にたどり着いた。普段は泥で濁った大河かゴミが寄せ集められたドブ川しか見ていないので水質が透明な水を見ると非常に感慨深い!そして、針葉樹林の森がどこまでも広がり、空気が美味しい!
後ろを振り向いたら、赤い横断幕を掲げて記念撮影をしている集団や自撮りをしている人々が騒がしい。下を見下ろしたら、観光客が捨てたタバコの吸い殻やペットボトルのゴミが散らばる。
中国で心が洗われる場所は人がいないような雄大な自然しかない。
(続く)
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