サイフが ない1
その数日、私には金がなかった。サイフはある。
現金:70円弱、パスモ:70円弱、ナナコ:346円
いや、口座にはあるのだが、クレカや家賃の引き落としが目前だったのであまり手をつけたくなかった。怖いからね。まあ、所用で実家に戻るし、それまで堪えれば食事の心配はなかった。
実際、堪えられた。職場の昼は備蓄のカップ麺にすれば良かったし、夜は卵かけご飯が作れる。朝はなんとかなる。実家に戻る前夜までなんとかやっていたのだ。
が、致命的なことを忘れていた。
実家へ帰る分のパスモのチャージが無いのだ。
???
しばらく自宅と職場の往復しかしていなかったから、実家に帰る=定期券外へ行く=その分の電車賃が必要、の構図を完全に忘れていた。まあチャージすれば問題ないか…。
現金:70円
???
無理だが…?
帰るのは土曜(仕事終わり)だったため、コンビニで下ろすのはなんか嫌〜(たかだか1000円下ろすのに200円くらい手数料取られるのはなんか嫌〜。金がねえのよ)なので、銀行のATMか?え、出勤前にいけるか?朝ちょっと早く起きられるか?賭けか?無理だったら??
つってたら、側にいた友人(パスモにチャージしないと帰れないのでは?と教えてくれたすごい人)が1000円を貸してくれた。ありがたく受け取ったが、カツカツで生活してた自分があまりにも情けなかった。知能がカスかよ。
友人が帰ってしばらくした後に、ありがてぇありがてぇ1000円札をありがたく入れるため、パスケース代わりにしてるサイフを探した。
まず上着を探した。いつも上着に入れているから。
次にリュックを探した。リュックにも入れたりするから。
そしてズボンのポッケを探した。ズボンにはポッケがあるから。
さらにベッドの上を探した。間違えた場所に置きがちだから。
加えて冷蔵庫を探した。狂ったかもしれないから。
浴槽を探した。洗濯機を探した。
電子レンジも探した。
サイフが
ないよ〜
つづく。