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8月15日 戦いの終わりに【今日のものがたり】

 学校の図書室にはいろんなジャンルの本がある。私は毎日ではないのだけど、ときどきここへ来て読書をしている。ふと、本を読みたいなと思うときがあるのだ。

「お姉ちゃん、ここに載っている伝説の勇者って本当にいたの?」

 今日は、ロビンも一緒だ。隣家に住んでいて、ロビンのご両親と私の両親が仲良いこともあって、小さい頃からよく遊んでいる。私のことをお姉ちゃんと言ってくれるかわいい“弟”だ。

「これは本当にあったとされる勇者の伝記だね。私たちが生まれるずーっとずーっと前のお話だから、絶対本当にあった! とは言い切れないかもしれないけど、少なくとも私はいたと思っているよ」
「そうだよね。勇者さんがいたからぼくたちが今こうしてここにいられるんだもんね」
「ロビン……」

 そういえばこの間も、勇者が使っていた剣とか防具とかの本を読んでいたっけ。私もロビンくらいのころ、勇者とともに悪者に立ち向かっていった魔法使いの物語を夢中で読んでいたことを思い出した。

 今は冒険したり、旅をしたりすることが珍しいことになっているけれど、私たちが今もこうして生まれながらに持っている魔力というものを学校で確かなものにしようとしている。それは、なにが起こるかわからない未来のためだ。そこにはもしかしたら勇者たちの伝説のような戦いがあるのかもしれない。

「お姉ちゃん、この勇者さんは戦いが終わったあと、『おはよう』って言えたのかな?」
「おはよう?」
「うん。だって、勇者さんもぼくたちみたいに寝て起きるでしょ。戦いが終わって朝が来たときに『おはよう』って言えていたら良いなって思ったんだ」
「そうだね。誰かにおはようって言えていたらホッとするね。私たちが毎日、そう言えているように」

 目を閉じて想像する。穏やかであってほしいと願いながら。 

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