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12月3日 ポスターカレンダー【今日のものがたり】
森島がカレンダーを食い入るように見つめている。厳密には、カレンダーの日付ではなく、その上にある絵を見ている。
「そんなガン見しなくても……」
「いやいや、すごいよ、すごい。飯森くん、本当に素敵な絵だよ」
「……さんきゅ」
一枚の紙に12ヶ月が印字されているポスターカレンダー。その絵を描いたのが俺なのである。図書室に貼られるこのカレンダーは毎年、図書委員の誰かが製作担当になり手作りするのが伝統になっている。くじ引きで見事(?)当たりを引きあてた俺は、どんなものにするかそこそこの時間をかけて考え、昨日試作品が出来上がったところなのである。
なぜそれを図書委員のメンバーではなく、クラスメイトの森島に見せているかというと……俺が一番に見てほしかったのが森島だからだ。
「一色だけとは思い切ったねー。でも、暗い感じはまったくないし、この図書室にも合ってると思う」
俺は描くことは好きなのだが、カラフルな色を使って彩色するというのが実は苦手で、だからといってモノクロが得意なのかというとそれもまた疑問符が付くのだが、少ない色数で描くほうが俺としてはしっくりくる。しかもこうして森島にほめられると正直……すごくうれしい。なんだか自信までわいてくる。
「来年は一年間、この図書室は飯森くんのカレンダーとともにあるんだね。来るのがもっと楽しみになるな」
「何度も見ているうちに飽きないかな」
「窓の外の景色が季節で変わっていくから、そのときどきで絵を見て抱く感情も変わるんじゃない?」
「……なるほど」
やっぱり、一番に森島に見せて良かった。このカレンダーを森島にあげたいな……いや、試作品をあげるっていうのもあれか……。
「ねぇ、飯森くん。このポスターカレンダーって試作品なんだよね? ということはもらっちゃっても大丈夫?」
「えっ……も、森島が試作品でも良いなら喜んで……」
「ほんと? やったぁ! 私、喜んでもらう!」
森島はどこまでも俺を喜ばせてくれる。なんだ俺、前世で徳かなんか詰んだのかな。