第19球 プロ野球選手の少年時代 内野手編2

 皆さま、こんにちは。東北ゴールデンディアーズの奥野 爽大(おくの そうた)です。岩川からの指名で、今回のエッセイは僕が担当します。
 岩川はオフにトレーニングしている施設が一緒なんですよ。体型が全然違うから(もちろんそれだけじゃないけど)、同じメニューを一緒にする、ということはほとんどなく、でもたまにご飯食べに行ったりします。あいつ結構いろいろ質問してくるので、こちらも答えられる範囲で話はするようにしています。でも、ライバルチームの選手だから、一から十のすべてをさらけ出すのはさすがに控えてます。

 それでは、僕の少年時代のお話をしていきたいと思います。
 僕は小学校3年生のときに野球を始めました。きっかけは太っていたからです。運動をやらせれば、引き締まるだろうという両親の目論見があったことは確かです。でも、両親は気づいていなかったのです。僕は運動が嫌いで太っていたのではなく、もともとぽっちゃりだったのです。走ることも別に嫌いじゃなかったし、体育も好きか嫌いかで言えば好きだったし、体を動かすことが苦痛だったことは……たまにはありましたけど、毎回嫌だと思っていたわけではありません。だから昔からたびたび言われていたんですよね、「奥野くんって意外と足速いよね」って。速いって言われてうれしくないなんてことはないので、試合では盗塁だって決めてました。

 それとは逆に、このぽっちゃりな体型で打球が飛ばないと「意外と飛ばせないんだね」なんて言われたりして、そうなると今度はこんちくしょーって思うわけです。なので、この体型に見合ったパワーつけてやんよ、という思いがわくわけです。そうして気づいたら、北のほうにめっちゃ飛ばすやつがいるらしいという噂が出始めたのです。僕のことかな、でも、飛ばすやつっていうのはきっと、他にもいるよなぁ、それだけじゃあインパクトないよなぁ、と、バッティングだけじゃなくて、守備も走塁もないがしろにはしないよう努めました。
 なので、プロに入ってからも僕、毎年こっそり盗塁決めてるんですよ。いかにも走りそうな奴に比べて、僕には警戒が緩いし、まぁ、走っていいよというサインもそんなに出ないんですけど、僕が走るとみんなビックリするでしょ。まぁ、年に1つか2つとかですけど。でも、失敗もしていないんですよ、これまで一度も。

 この体型のおかげで得したこと、損したこと、どちらもありますが、何でも武器にしていくしかないなというのが結論です。それはぽっちゃりじゃなくても同じです。人から見たらハンデに思われそうな部分も、それを不利に思わず、何かしらに生かしていく。自分の体のことを自分が一番わかってあげる。そうすることで自分のすべきことも見えてくると思います。

 僕、普段あまり表情が変わらないので、なに考えているかわからないって言われるんですが、めっちゃいろんなこと考えてます。昨日は上手く打てなかったから、今日はここをこう修正して……とか、あの打球に追いつけなかったことを体型のせいにされたくないから今度は気持ち早めに始動しようとか、まぁこれは、選手ならみんな考えることだと思いますが、僕も考えていますからね。無表情だからって、思考まで無ってことはないです。ヒーローインタビューのとき、僕結構話長いでしょ。そういうことです。

 あと、僕の名前、漢字では“爽大”って書くんですが、結構“爽太”と間違う人が多いんですよね。これ、プロになってからじゃなくて、子供の頃からなんですが……見た目で“太”だと思っちゃうんだろうなぁ。気持ちは分かりますけどね。でも、名前を間違えられるのってやっぱりちょっとショックなんです。ちゃんと見てくれてないのかなぁって思っちゃって。僕も人並みに落ち込んだりします。寝たら忘れますけども。

 プロに入ってからも僕は昔からの体型を維持してプレーしています。体型が体型なので、やはり足には本当に気をつけています。これまで大きなケガをしていないことは僕の強みの一つです。この部分は本当に自分だけの力では無理なことで、スタッフさん、トレーナーさん、家族の支えあってこそです。感謝の気持ちは僕が元気にフィールドに立ってプレーし続けることだと思うので、これからも一年でも長く現役であり続けたいですね。

 ここまで書いてきましたが、岩川と同じように、内野手としての少年時代、というエッセイになっていないような気がします……すみません。
 内野手としてのアドバイスをするとしたら……正直、どのポジションも守れるくらいの器用さがあったほうがチャンスは広がると思います。ファースト、セカンド、サード、ショート。どの守備位置も大事ですし、それぞれの守備位置特有の難しさや面白さがあると思います。チーム事情的に難しいこともあるかもしれませんが、すべてのポジションをこなすことで自分の癖もわかるだろうし、これだけは負けないというものも見つかるかもしれません。

 それでは、次回のエッセイもお楽しみに。
 東北ゴールデンディアーズの奥野爽大でした。


◇奥野爽大プロフィール◇
東北ゴールデンディアーズの内野手として今季140試合に出場。3年連続で規定打席到達し、打率.279、本塁打39本、99打点、盗塁2(失敗0)を記録。頼れるアニキは来季もその大きな背中でチームを引っ張っていく。

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