10月19日　洗濯はどっちが好き？【今日のものがたり】

　放課後、図書室で読書をすることが日課になりつつある。これまで本は特別好きでも嫌いでもなかったのだけど、趣味は読書と言えるくらいの位置にまで来ている。

　それは、図書委員の飯森いいもりくんと話すようになったのがきっかけなんだけど。
　カウンターにいる飯森くんを本で顔を少し隠しつつ眺める。別にそんなふうに見なくてもいいのだけど、なんか、堂々とは見つめられない。

「……え」

　読書に戻ろうとしたところで、ぶるぶると携帯電話スマートフォンがふるえた。母からのメッセージだった。

「どうかした？　森島もりしま」
「あ、ごめん。お母さんから洗濯物しまっといてって」
「そうなの？　あーなんか雨降りそうだもんな」

　窓の外を見る。確かに雲行きがあやしかった。これは、読書を切り上げて急ぎ帰らねばならないようだ。でもなぁ……

「私、洗濯物たたむのあんまり好きじゃないんだよね」
「そうなんだ。なんか理由あるの？」
「たたむのが得意じゃなくて……。でも、干すのは好きなんだ。きれいに干し終えたときの達成感が爽快で」

　こう、服の種類とか色とかできちんと並べて干すのが楽しいんだよね。

「へぇ～。俺はたたむほうが好きだな。たたまれたものを見ると、よしよしってなんか満足感がある」
「そうなの？　じゃあ今度うちに──」
「うち？」
「う、ううん、なんでもない！」

　危ない、危ない。
“今度うちにたたみに来てよ”って言いそうになっちゃった。
　危ない、危ない。

　変にドキドキしてしまったので、干してある洗濯物をイメージして、気持ちを落ち着かせる。
　私の家の洗濯物はちゃんと私がたたみます。
　
　お母さんにもちゃんと返信しよう。