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3月15日 さあ行こう、眉を整えて【今日のものがたり】

 人……いや、吸血鬼(おれ)の身体というものは本当にやっかいだ。主食が好きな吸血鬼であれば何の問題もないのだろうが、苦手だった暁にはこうして苦労を強いられる。

 手は打ったものの朗報と呼べるものは入ってきてはいない。音沙汰なしと言っても過言ではない。ただ俺の体力気力だけが日々消耗してきているという現実があるだけだ。
 血を飲むしかないのはわかっている。ストックがないわけでもない。飲めば済むだけの話だ。そう、飲めば済むだけの話。
 しかし、こうして血のことを考えるだけでも気分がぐっと落ちてくるのがわかる。なぜだ、なぜ俺は主食が苦手な吸血鬼としてこの世に生を受けたのだろうか。

 そばにある鏡を見て俺はぎょっとした。写っているのは紛れもなく俺なのだろう。しかし、どうだ。目は落ちくぼみ、肌はあれ、唇も割れている。もう、限界が近い。そろそろ飲むしかなさそうだ。
 飲めないわけではない。あの一瞬(ではないが)の苦みを我慢すれば、またしばらくは普通に生活ができるのだから。
 思い出せ。俺は決めたはずだ。探し出すと。あの素晴らしき魔法のアイテムをお作り下さった方を見つけて、頭を下げるのだ。そうすればこの苦しみの日々からは解放される。

 顔を洗おう。至るところの毛が伸びてしまっているな……。そうだ、眉のかたちは人の人相に大いに影響を及ぼすと聞いている。せめてここぐらいはまともな形に整えて……髭も、だな……なんとか、ごまかせるだろうか。

 想像しよう。満ち足りた日々を送っているはずの未来の俺を。
 そうだ、心は求めている。幸せの在処へと、会いに、走れと求めている。飲むのだ。これは、未来への通行手形なのだから。さあ、行こう。俺は必ず見つけだす。

ようし、力が戻ってくるのを感じるぞ。今ならなんだってできる。そんな気さえしてきている。

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