
4月22日 清掃をしてみたのは……【今日のものがたり】
「魔王様、何をしていらっしゃるのですか……!」
ジョセフが素っ頓狂な声を上げながら駆け寄ってくる。
「何って、見てわからぬか? 雑巾で床を拭いているのだ」
そんなに驚くほどのことでもなかろうに。今日はいつになく書類の数が少なかったからな、なんともう仕事を終えてしまったのだ。となれば、気になっていたことを試してみたくもなろう。
「魔王様は掃除などせずとも良いのですよ」
掃除……清掃……そうだな。確かにここはいつも綺麗だものな。今も床を拭いてはみたものの、汚れてはいなかったから、拭く前と後との違いはほとんどわからない。ここを担当している清掃員は優秀なのだな。人材の管理はジョセフに任せてあるが……今度こっそり作業を覗いてみるか。
それにしてもジョセフの私への視線が解せぬ。何かを疑っているような不安を抱いているような、何かを待っているような……。
なるほど、いつものあれか。
「アスターの花言葉を知っているかい?」
「考えてはおいでだったのですね」
「ふん。花言葉のことはいつも考えている」
仕事をしたくないときの現実逃避のひとつとして花言葉を聞いているわけではないのだ。
花を思うことは美しい。毎日考えているのはそういう理由からだ。
「魔王様も変化していかれるのでしょうか」
ジョセフがそうやって花言葉を織り交ぜることを私が気に入っていると、ジョセフは気づいているのだろうか。
まぁ、よい。花言葉はありがたいことに毎日存在している。私はいつでもジョセフの返答を楽しめるということだ。